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カルチャーとビジョン・ミッション・バリューの関係性の整理『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』【無料公開#13】

8月28日発売の『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』。マクドナルド・メルカリ・SHOWROOMで事業と組織の成長を加速させてきた著者が、カルチャーを言語化し共有化するための手法をご紹介いたします。組織運営に悩む経営者、人事担当者、マネージャー、すべてのはたらく人に向けて、「新しい組織論」を無料公開にて連載いたします。

カルチャーとビジョン・ミッション・バリューの関係性の整理

組織論において「ビジョン・ミッション・バリュー」の重要性は多くの人が知るところです。

ただ定義が曖昧で、会社ごとに扱われ方も違うため、カルチャーとの関係性を含めていったん整理しておきましょう。

これらの要素を図式化すると、2つのパターンが挙げられます。

コメント 2020-08-31 184030

[ビジョン型]
・ビジョン……実現したい社会
・ミッション……(ビジョンを実現するうえで)会社が果たすべき役割・使命
・バリュー……(ミッションを達成するうえで)社員が取るべき行動指針
  →結果としてカルチャーがつくられる

[ミッション型]
・ミッション……(目指す社会のために)会社が果たすべき役割・使命
・ビジョン……(ミッションを達成するうえで)目指す中期的な会社のゴール
・バリュー……(ビジョンを実現するうえで)社員が取るべき行動指針
  →結果としてカルチャーがつくられる

「ミッションが上か、ビジョンが上か」という議論がよくありますが、これはどちらかが正解というわけではなく、どちらのケースもあり得るため、ここで整理しておきましょう。

ミッションとバリューについては、それぞれ「会社の使命」と「社員の行動指針」であることに変わりありません。

違いは「ビジョン」の使い方です。

「ビジョン型」の場合は、ミッションよりも上位概念として、「実現したい理想の社会・世界」を設定し、ビジョンとミッションの双方によって、世界観をより明確に定義しています。

一方で「ミッション型」では、ミッションを実現するための中期的なゴールとしてビジョンをミッションの下位概念として定義付けています。

具体的なマイルストーンや当面の目標を明示したい場合に有効です。

いわゆる「2025ビジョン」のように、一定の時間軸の元、達成すべきゴールのことを「ビジョン」と呼んでいる形になります。

どちらの型に沿ってビジョン・ミッション・バリューを策定するかは、企業の意向によりますし、どちらが正しいというものではありません。

いずれにしても、ピラミッドの上位概念ほど不変的なもので、内部/外部環境に左右されないものであるのに対して、下位概念ほど、時代の流れや顧客ニーズの変化、あるいは組織のフェーズや構成メンバーによって、必要に応じて変わる可能性があります。

たとえば2017年、フェイスブックはそれまでの「世界をよりオープンでつながったものにする」というミッションから、「コミュニティづくりを応援し、人と人がより身近になる世界を実現する」へと変更しました(*1)。

この背景にはSNSの隆盛に従いエコーチェンバー現象(閉鎖的な関係でのコミュニケーションが繰り返され特定の価値観が強化されること)が問題となり、単に人をつなぐだけではより良い世界にはならないという課題意識があったといいます。

よりコミュニティづくりを促し、世界をより良くするための意志として、ミッション変更を行ったのです。

そして、これらビジョン・ミッション・バリューという企業や社員の存在意義とも言える極めて根源的なものこそが、カルチャーを形成する起点となるわけです。

ビジョン・ミッション・バリューは日々の意思決定や行動・言動に大きく影響し、それらが積み重なることによって、結果として組織に定着していくものがカルチャーになります。

そういう意味で、カルチャーとは、ビジョン・ミッション・バリューというインプットの影響を強く受け、企業としての日々の活動を通して、アウトプットとして存在するもの、と言えます。

*1


著者プロフィール

唐澤俊輔(からさわ・しゅんすけ)

Almoha LLC, Co-Founder

大学卒業後、2005年に日本マクドナルド株式会社に入社し、28歳にして史上最年少で部長に抜擢。経営再建中には社長室長やマーケティング部長として、社内の組織変革や、マーケティングによる売上獲得に貢献、全社のV字回復を果たす。
2017年より株式会社メルカリに身を移し、執行役員VP of People & Culture 兼 社長室長。採用・育成・制度設計・労務といった人事全般からカルチャーの浸透といった、人事・組織の責任者を務め、組織の急成長やグローバル化を推進。
2019年には、SHOWROOM株式会社でCOO(最高執行責任者)として、事業成長を牽引すると共に、コーポレート基盤を確立するなど、事業と組織の成長を推進。
2020年より、Almoha LLCを共同創業し、人・組織を支援するサービス・ツールの開発を進めつつ、スタートアップ企業を中心に組織開発やカルチャー醸成の支援に取り組む。
グロービス経営大学院 客員准教授。


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