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素直になるのは怖くないよ。わたしが自分の「勝手な決めつけ」から脱却して本ができるまで

人気コピーライター・作詞家の阿部広太郎氏がやわらかくも強く熱く語る、 だれかの正解にしばられない生き方のヒント『それ、勝手な決めつけかもよ?』。その誕生秘話を企画から編集までを担当したディスカヴァーの新人編集者・橋本が語ります。

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『それ、勝手な決めつけかもよ?』

これは、1冊の本のタイトルです。

みなさんはこのタイトルを見て、どう思われましたか?
「勝手な決めつけ」とは、いったいなんのことなのでしょうか。

「やりたいことがあるけれど、だれかに否定されそうで怖い」
「どうせ自分なんかができるわけない」
「まわりの人たちが言うなら、きっとこういうものなんだ」

それは、勝手に自分のことを諦めて、しばりつけてしまっている心の声。

実はこの本が生まれたのは、担当編集者であるわたし自身の「勝手な決めつけ」がきっかけでした。

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話は2019年に遡ります。

新卒でディスカヴァーに入社し、すぐ希望通りの営業部に配属されて6年目。
後輩もたくさんいて、任せてもらえる業務範囲はどんどん広がっていたんです。決して楽な仕事ではなかったので時々愚痴りつつも、出版業界で働けることにおもしろさを感じていました。

自分に合う会社、仕事に出合えて本当にラッキーだな、と誇張なしに思っていました。

それでもなぜか自分の中にくすぶる思いがあって。
自分がこれからやりたいことがわからなくなってしまい、もやもやする気持ちを抱えていました。

いま思えば、少しずつ自分の中にふくらんでいった「本を1からつくる仕事に携わりたい。編集の仕事がしてみたい」という思いに目をつぶっていたんだと思います。
自分で、気づかないフリをしていた。
もっと言えば、自分ならできるという自信もまったくなかった。

営業のキャリアを何年も積んできて、周囲の人たちからも頼りにしてもらえているはず。役職だってついている。
いまも楽しく働けてるし、それでいいじゃん。
いまさら新しい挑戦なんか始めたって無理に決まってる。

自分の心の中を、こんな声でむりやり埋めていました。


そんな中、たまたまTwitterで見つけた「言葉の企画」という連続講座に興味を持ちました。
「行動、企画、発信」をテーマにした、半年間の学びの場。主宰、講師は電通のコピーライター、阿部広太郎さん。

正直なところ、コピーライティングに興味があったわけではなく、広告業界のこともほとんど知らない状態でした。

でも、「言葉」が好きなのは確かだし、広告とは違うけど、本だって企画だ。なにか行動を起こせば、自分の心にもやがかかっている状況から抜け出せるかも......
これは自分へのいい刺激になる、という直感があって、勢いで参加を決めました。

ただ、いざ参加してみるとまわりは「できる人」たちばかりだし、自分のよく知らない広告業界からきた華やかな人が多かったんです。
そのせいでしばらくは、自分がいかに凡庸でつまらない人間なのか、わたしなんかにやっぱり企画系の仕事は向いてないや、ということばかり考えていました(ネガティブですね......)。

でもひとつの転機が訪れます。
とある課題で、阿部さんが思う「よかった作品」に、自分のものが選ばれたんです。
たった1回分の提出物。でもそれがわたしにとっては大きいことで。
「自分にもできることってあるんだな」と思えて、背中を押していただいた感じがしました。

ほんのひとつのきっかけで、本当に心持ちって変わるんですね。
このときから、周りの目とか自分の能力とかどうでもいいから素直にやりたいことやろうよ、と思えるようになって、心の中にあった「本をつくりたい!」という気持ちがクリアになっていきました。

それと同時に、ネガティブに凝り固まっていた自分の気持ちをこんなふうに動かしてしまった阿部広太郎さんと「言葉の企画」ってすごいなと思うようになりました。

講座を受けてなんとなくインプットするだけの場だったら、こんなに影響を受けなかったはず。
阿部さんと阿部さんのつくる「場」に熱量があるから、人のこころを揺さぶる力があるのだと思いました。

この阿部さんの熱量や場の空気こそ、本にしたい。そしてそれをつくるのは、わたし自身でありたい。
具体的にこういう中身にしよう、とまでは考えられていませんでしたが、熱々の意志だけは生まれていました。

そこからは半ば勢いで阿部さんに手紙を書いたり、編集部の先輩に編集の仕事がやりたいと相談したり、とにかく行動を心がけました。

自分を諦めてしまういつもの弱気なわたしだったら、阿部さんを著者候補として、編集部に紹介するだけで終わってしまっていたかもしれません。
でも「わたしが阿部さんの本をつくるんだ!」という強い気持ちがあったので、営業部にいながら企画書を書いたり、阿部さんとの企画の打ち合わせに毎回出席したりしていました。

部署の垣根が低いカルチャーがあるとはいえ、打ち合わせまで参加させてくれた当時の営業部の上司と、現在の編集部の上司にはほんとうに感謝です。
運よく発売の前月に編集部への異動が決まり、担当編集者のひとりとして携わることができました。

そしてたくさんの方のお力をお借りしながら、2021年5月、阿部広太郎さんの本『それ、勝手な決めつけかもよ?』が発売されました。

サブタイトルは、だれかの正解にしばられない「解釈」の練習

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ものごとの捉え方、つまり「解釈」次第で自分なりの生き方ができるということを、阿部さんの優しく芯のある文章で、全力で伝えている本です。

だれかが言う正解に、無理に自分をあてはめないこと。
なかなかすぐにはやめられないかもしれない。
だからこその「練習」。少しずつ、自分なりの解釈を育てていけばいい。

わたしにとってはこの本をつくってきた過程が、「勝手な決めつけ」からの脱却そのものです。自分の人生を自分で解釈できたから、1冊の本が形になった。
実際に本を書いてくださった阿部さんや、社内で力を貸してくれた人たち、連続講座の参加者である「企画生」のみんなのおかげで本ができたので、わたしが偉そうにいうのもなんか違うよな、と思うのですが......わたしから、この本に興味を持ってくださった方に伝えたいのは、「素直になるのは怖くないよ」ということです。


阿部さんの文章は無理に人を焚きつけたり、頬を平手打ちして目を覚ましたりするようなことはしません。
心のやわらかいところに踏み込むテーマであるからこそ、押しつけず、それこそ決めつけず、わたしたちに考える余地を与えてくれる。だから、安心して読んでください。

そして読み終わったら、ぜひ感想を教えてほしいです。
そこからみなさんと一緒に「解釈」の練習をはじめることができたら、編集者としてこんなにうれしいことはありません。

(ディスカヴァー・トゥエンティワン編集部 橋本)

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おかげさまで、4刷、2万部を突破しました!
糸井重里さん、田中泰延さん、水野良樹さんからご推薦をいただいた「新帯」バージョンも、書店さんに並び始めているところです。
ぜひ、見かけたらお手に取ってみてくださいね。

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