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1年でメンバーが600人から倍増したメルカリは、社内のカルチャーを言語化した『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』【無料公開#20】

8月28日発売の『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』。マクドナルド・メルカリ・SHOWROOMで事業と組織の成長を加速させてきた著者が、カルチャーを言語化し共有化するための手法をご紹介いたします。組織運営に悩む経営者、人事担当者、マネージャー、すべてのはたらく人に向けて、「新しい組織論」を無料公開にて連載いたします。

カルチャーを意図的につくる(メルカリの場合)

ここまでの内容についてより理解を深めるため、メルカリを例に話を進めましょう。

メルカリでは、ビジョン・ミッション・バリューの構造を簡略化し覚えやすくするため、ビジョン的な性質を内包したミッションのみを設定しています。

それが「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」です。

そしてそれを達成するためのバリューとして、「Go Bold(大胆にやろう)」「All for One(全ては成功のために)」「Be a Pro(プロフェッショナルであれ)」の3つを挙げています。

私がメルカリへ入社した当初、はっきりと言語化されていたのは、このミッションとバリューのみでした(※入社当時、「Be a Pro(プロフェッショナルであれ)」は「Be Professional」と表現)。

社員同士でも「それってGo Boldじゃないよね?」「All for Oneでやろうよ」など、普段の会話から自然と共有されているものでした。

そしてもう一つ、頻繁に交わされる言葉があったのです。

それは「性善説」。

「性善説で制度設計している」「性善説で社員のことを信頼しているから、マイクロマネジメントはしない」といった具合です。

メンバーの多様化によりカルチャーを言語化する必要性が高まる

メルカリは私が入社した2017年当時、メンバーは600名ほどで、ミッションとバリューを言語化することで、一貫したカルチャーが醸成されている、特徴的な会社でした。

それから1年で社員数はほぼ倍に急拡大しました。

さらに、エンジニアを中心に外国籍メンバーの採用を進めたため、人材の多様性が一気に増していきました。

その上、金融事業を担う子会社のメルペイが設立され、金融出身者などこれまでとはバックグラウンドの異なる人材も増えてきました。

このように、事業と組織が急速に成長し、メンバーの多様性も広がるなか、カルチャーを言語化し、暗黙知を形式知として共有する必要性が高まってきたのです。

そこでまず、メルカリのカルチャーを言語化することにしました。

ミッション、バリューは明文化され、社内外に発信されてきましたが、「性善説」は社内でのコミュニケーションでよく出てくるものの、明文化されておらず、なんとなくの雰囲気として伝わっていました。

「性善説」というと、「人は生まれながらに善の心を持っている」といった意味合いですが、もとは儒教の考え方で、英語圏で暮らしてきた人にとっては理解しにくい概念なのです。

英訳するにしても適切な単語が英語になく、「Humans are good」などとなってしまう問題もありました。

ダイバーシティに対応する必要が出てきたということです。

「スタイル」としての「Trust & Openness(トラスト&オープンネス)」

そこで考えたのが、「Trust & Openness(トラスト&オープンネス)」という言葉です。

これは7Sの中で定義される「スタイル(組織風土)」にあたります。

性善説だからこそ、お互いを信頼しているから、情報はすべてオープンにしていて風通しもいい。

ルールや制度でガチガチに縛ってしまうのではなく、社員一人ひとりを信頼し、必要な情報をもとに一人ひとりが考え判断する、ということです。

ちょうどメルペイがサービスをスタートするにあたり、2019年2月に開催したカンファレンスで「信用を創造して、なめらかな社会を創る」というミッションを掲げ、オープンなプラットフォームをつくる「Openness構想」を発表したのも、いい契機でした。

カルチャーを言語化するにあたって、ピープル&カルチャーのメンバーと議論したところ、「Trust & Openness」という言葉がすぐに挙がりました。

これは良さそうだと思い、すぐに経営会議でこの言葉を提案したところ、経営会議ではものの30秒で決まりました。

これほど早く決められるとは私自身も驚いたのですが、これはひとえに、経営陣の誰もが常日頃からミッションとバリューを深く理解し、ピープル&カルチャーや各組織のメンバーとカルチャーをすり合わせていたからこそ、迷うことなく瞬時に意思決定できたのだと思います。


著者プロフィール

唐澤俊輔(からさわ・しゅんすけ)

Almoha LLC, Co-Founder

大学卒業後、2005年に日本マクドナルド株式会社に入社し、28歳にして史上最年少で部長に抜擢。経営再建中には社長室長やマーケティング部長として、社内の組織変革や、マーケティングによる売上獲得に貢献、全社のV字回復を果たす。
2017年より株式会社メルカリに身を移し、執行役員VP of People & Culture 兼 社長室長。採用・育成・制度設計・労務といった人事全般からカルチャーの浸透といった、人事・組織の責任者を務め、組織の急成長やグローバル化を推進。
2019年には、SHOWROOM株式会社でCOO(最高執行責任者)として、事業成長を牽引すると共に、コーポレート基盤を確立するなど、事業と組織の成長を推進。
2020年より、Almoha LLCを共同創業し、人・組織を支援するサービス・ツールの開発を進めつつ、スタートアップ企業を中心に組織開発やカルチャー醸成の支援に取り組む。
グロービス経営大学院 客員准教授。


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