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ガイドラインとして「メルカリ・カルチャー・ドック」を策定する『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』【無料公開#21】

8月28日発売の『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』。マクドナルド・メルカリ・SHOWROOMで事業と組織の成長を加速させてきた著者が、カルチャーを言語化し共有化するための手法をご紹介いたします。組織運営に悩む経営者、人事担当者、マネージャー、すべてのはたらく人に向けて、「新しい組織論」を無料公開にて連載いたします。

(前回の記事はこちら)

ガイドラインとして「メルカリ・カルチャー・ドック」を策定する

次に策定したのが、「Mercari Culture Doc(メルカリ・カルチャー・ドック)」。

カルチャー・ドックとはつまり、メルカリの企業文化(カルチャー)や人物像、働く環境についてのガイドラインのこと。

グーグルにおける「re:Work」やネットフリックスの「カルチャー・デッキ」のように、カルチャーを適切に浸透させ、ピープルマネジメントを全社一貫して実行するためのガイドラインのようなものです。

メルカリ・カルチャー・ドックでは、メルカリが求める人材像や、採用基準、人事制度や情報共有の仕組みなど、メルカリで働くうえで必要となる、人や組織に関する考え方を網羅的に整理しています。

内容としては、フィロソフィーとして大方針を共有することを重視しつつ、ガイドラインの中では細かい部分まで言語化しているものも多くあります。

たとえば、社内コミュニケーションに関するパートでは、情報共有やミーティングなどコミュニケーション方法についてのガイドラインを示しています。

その中には、「Slack(スラック)利用ガイドライン」というものがあり、Slack利用に関する詳細のガイドラインを設定しています(Slack利用ガイドラインは、GitHub上で公開されています)(*2)。

オープンであることを意識する

・プライベートメッセージやプライベートチャンネルの利用は禁止しないが、人事・インサイダー情報以外は、コミュニケーションコストの低減と、風通しが良くオープンである社風を維持するために基本的にオープンにする
・チャンネルへのInvite/leaveは誰でも、いつでも可能であり、必要に応じて繰り返すことを厭わない

チャットコミュニケーションの限界を理解する

・テキストのみだとニュアンスや文脈が欠け落ちることがあるので、その際は他のコミュニケーション手段を利用する(対面での会話、Googleハングアウトの会議通話など)

紳士的であること

・オープンな議論のための発言に遠慮することはないが、十分に配慮し、All for Oneであることを意識する

引用部分は、「Slack利用ガイドライン」の「前提」と位置付けられている冒頭のパートです。


このガイドライン一つをとっても、情報をオープンにし、コミュニケーションを重視するメルカリのカルチャーが色濃く表れているのがわかると思います。

ガイドラインは、このようにして働くうえでの考え方を定義してゆくものですが、メルカリでは、こうした決めごとの理由はすべて、「Trust & Opennessだから」で説明がつくのです。

こういった業務上のやり取りやコミュニケーション、仕事の進め方などは暗黙知としてなんとなく共有されているか、その都度、先輩社員が気づいたときに説明されているものです。

けれども、メルカリではそのタイムロスすらも惜しんで、言語化による情報共有を行ったのです。

メルカリについては、実践編の第4章にて、より詳しく触れていきます。

(*2)


著者プロフィール

唐澤俊輔(からさわ・しゅんすけ)

Almoha LLC, Co-Founder

大学卒業後、2005年に日本マクドナルド株式会社に入社し、28歳にして史上最年少で部長に抜擢。経営再建中には社長室長やマーケティング部長として、社内の組織変革や、マーケティングによる売上獲得に貢献、全社のV字回復を果たす。
2017年より株式会社メルカリに身を移し、執行役員VP of People & Culture 兼 社長室長。採用・育成・制度設計・労務といった人事全般からカルチャーの浸透といった、人事・組織の責任者を務め、組織の急成長やグローバル化を推進。
2019年には、SHOWROOM株式会社でCOO(最高執行責任者)として、事業成長を牽引すると共に、コーポレート基盤を確立するなど、事業と組織の成長を推進。
2020年より、Almoha LLCを共同創業し、人・組織を支援するサービス・ツールの開発を進めつつ、スタートアップ企業を中心に組織開発やカルチャー醸成の支援に取り組む。
グロービス経営大学院 客員准教授。


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