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カルチャーが最も影響するのは採用『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』【無料公開#7】

8月28日発売の『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』。マクドナルド・メルカリ・SHOWROOMで事業と組織の成長を加速させてきた著者が、カルチャーを言語化し共有化するための手法をご紹介いたします。組織運営に悩む経営者、人事担当者、マネージャー、すべてのはたらく人に向けて、「新しい組織論」を無料公開にて連載いたします。

カルチャーが最も影響するのは採用

カルチャーが対外的に最も影響するのは、採用です。

どの企業も優秀な人材を自社に迎えたいと考えているでしょうが、採用活動は年々、困難を極めています。

それは何も少子化による労働人口の減少だけが理由ではありません。

かつては新卒一括採用でとにかく「高い学歴でコミュニケーション能力に長けた学生」を採用し、「自社のカルチャーに染めあげる」のが一般的なものでした。

入社年次ごとに「同期」という横のつながりがあり、先輩社員の横について「見て覚えろ」と仕事のやり方を習う。

「日本の上場一部企業なら一生安泰」というイメージがあるなか、入社する社員側も、少々理不尽なことや疑問に思うことがあっても、「仕事というのはこういうもの」「頑張っていればいつかは報われる」と、納得して仕事をしていました。

けれどもZ世代(1996~2012年生まれ)と呼ばれる若い世代は「自分らしさ」「個人」を尊重することが当たり前になっています。

かなりのコストをかけて新卒採用を行っても、「自社のカルチャーに染める」までもなく1、2年で退職してしまう若手社員も多く、そもそも「会社のカルチャーに染められる」ことに対する拒否反応もあります。

さらに日本の大企業に対する信頼は薄れ、「○千人の人員削減」「経営破綻」といったニュースが日々駆け巡ります。いったん就職したからといって、安泰ではありません。

社員は企業で働きながらも、「どの企業なら働きやすいだろうか」「どこが自分自身の成長につながるだろうか」と、企業の公式サイトや口コミサイト、求職者のコミュニティなどで情報収集して、大企業やスタートアップを同じ評価軸で見定めているのです。

そうなれば当然、企業側も「対外的な見え方」を意識するようになります。

昨今「採用ブランディング」「採用広報」といった言葉が取りざたされ、コーポレートブランディングを踏まえた採用活動が行われています。

企業としてビジョン・ミッション・バリューを世の中に提示し、ロールモデルとなる社員たちの想いや働きぶりをオウンドメディアやSNSで積極的に発信し、その価値観やカルチャーに共感してくれるような人を採用するのです。

これは採用の際、ある種のフィルタリングとして機能します。企業と求職者双方にとって、採用時点でのミスマッチを防ぐことにつながるのです。

一方で、ここでも期待値ギャップを減らす「期待値コントロール」が重要になってきます。

どんなに「私たちの会社はオープンかつフラットです」とカルチャーを対外的に発信し続けていても、実際に入社した社員が「思いついたアイデアを部長に提案してみたら、課長から『なんで俺を通さないんだ』と怒られてしまった」「トップの思いつきで重要事項が決定して、問答無用でそれに従わなければならなかった」という経験をしたらどうでしょうか。

当然、「オープンでもフラットでもないじゃん!」と社員の期待は裏切られます。

そういった積み重ねがエンゲージメントの低下を招き、退職理由となり、社員の口コミサイトなどにも書き込まれるのです。

そして、「実はあの会社、わりとトップダウンで社長がワンマンらしいよ」といった評判につながれば、せっかくのコーポレートブランディングも意味がありません。

会社に興味を持ってくれたはずの優秀な人は「どうも評判が良くなさそうだな」と警戒し、なかなか採用につながらなくなってしまう。

苦肉の策で引き入れた人は定着せず、組織が疲弊していってしまう。

素晴らしいビジョン、ミッションを掲げていたにもかかわらず、どんどん理想と現実が乖離していく―。そうやって、負のスパイラルに陥ってしまうのです。

いずれにせよここで重要なのは、会社のビジョン・ミッション・バリューを有名無実化させず、いかにリアルな「カルチャー」として根づかせるか。そしてそれを社内外に発信し、社員、社外パートナー、取引先、お客様、株主……あらゆるステークホルダーが「確かに、それってこの会社らしいよね」と思えるかどうかです。

目指すビジョン・ミッションやバリューを柱にカルチャーを醸成し、それを社内外に発信し、浸透させることで、事業の成功や成長につながる。

そして、人事採用や組織開発もうまくいき、それがさらに事業成長につながるというポジティブなスパイラルを生み出すのです。


著者プロフィール

唐澤俊輔(からさわ・しゅんすけ)

Almoha LLC, Co-Founder

大学卒業後、2005年に日本マクドナルド株式会社に入社し、28歳にして史上最年少で部長に抜擢。経営再建中には社長室長やマーケティング部長として、社内の組織変革や、マーケティングによる売上獲得に貢献、全社のV字回復を果たす。
2017年より株式会社メルカリに身を移し、執行役員VP of People & Culture 兼 社長室長。採用・育成・制度設計・労務といった人事全般からカルチャーの浸透といった、人事・組織の責任者を務め、組織の急成長やグローバル化を推進。
2019年には、SHOWROOM株式会社でCOO(最高執行責任者)として、事業成長を牽引すると共に、コーポレート基盤を確立するなど、事業と組織の成長を推進。
2020年より、Almoha LLCを共同創業し、人・組織を支援するサービス・ツールの開発を進めつつ、スタートアップ企業を中心に組織開発やカルチャー醸成の支援に取り組む。
グロービス経営大学院 客員准教授。


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