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【イベントレポ】新刊は「10年越しのご縁」の結晶でした。5月新刊ブックバースデーイベントレポ(後編)

2021年5月28日に新刊の発売を祝う「ブックバースデー」をzoom開催しました。

「ディスカヴァー・ブックバースデー」は、本の発売をお祝いするイベント。新刊の著者が登壇し、新刊の企画意図や、読みどころ、本の執筆の過程で大切にしていたことなどをお話します。ここでしか聞けない裏話も盛りだくさん!

今回は5月に発売日を迎えた5冊について、著者や翻訳者の方々を招きながら、弊社社長や編集部メンバーが思いの丈を語りました。

後編では翻訳者や著者の方を中心に、書籍が生まれた背景について語ります「翻訳の難所」や「10年越しのご縁」など、ここでしか聞けないエピソードが次々登場!
司会は、電子書籍担当の庄司と、オンラインセールス担当の滝口でお送りします。

「ジャケ版権獲得」で生まれた可愛すぎる一冊

滝口:本日いらっしゃった著者のお二方にお話をお伺いしたいと思います。谷口さんからご紹介いただいても宜しいでしょうか?

ディスカヴァー社長 谷口 (以下谷口)では最初に『二分間セルフケア』の翻訳者である佐伯花子さんをご紹介いたします。担当編集は、元木さんです。

谷口:こちらの書籍は、私の大好きなセルフケアに関するものなんです!単純なスキルをまとめたものではなくて、根底にあるものをすごく丁寧にまとめた書籍だなと思っています。佐伯さんが原書を読まれて感じられたことがあれば、ぜひ教えて頂きたいです。

佐伯:自信というのは通常、努力して知識を身につけたり我慢してダイエットしたりということをイメージしがちです。しかしこの本に関しては「無理して自分を追い込まなくてもあなたはもう十分に頑張っているんだよ」と、肩の力がふっと抜ける本になっていると思います。

谷口:なるほど!おっしゃる通りですね。元木さんは本を編集してみてどうでしたか?

元木:実は、この本の原書がそもそもすごく可愛らしい書影なんです! これを見て、「この本やりたい!」と。中身もよくわかっていないのに……ジャケットに一目ぼれする感覚で惹かれました。
内容も「自信をつける」というより「自分を大好きになる」のが中心になっているのも素敵だなと。ただアファーメーションやメディテーション、リラックスをするということではなく、それが自信をつけることにつながる「セルフケア」として確立されていたので、この本を手がけました。

谷口:まさかの装丁買い

元木:そうなんです。まず装丁に一目ぼれして「是非中身も読んでみたいです!」という(笑)

滝口:「ジャケ版権獲得」ですね。

谷口:新しい(笑)

元木:この部分は今回の本づくりの装丁にも生かしたいというところで、本書も可愛らしいデザインになりました。

「翻訳家」の視点をのぞき見!本書に携わったきっかけとは?

滝口:この本の翻訳担当を決めるときはオーディションだったそうですが。佐伯さんがオーディションを受けられたきっかけや理由をお伺いしたいです。

佐伯:翻訳オーディション用のサイトというものがありまして、課題文として公開されている原書の一部を翻訳して提出する、というのがオーディションの流れです。

今回の課題文を見たときに、翻訳者として「ちょっと挑戦してみたいな」と感じたのがきっかけのひとつです。自分を鼓舞するような、前向きになるような言葉がたくさん登場しているのですが、それらは英語だとすんなり入ってきても、日本語だと大げさに聞こえてしまうようなことがあります。それをどうしたら、日本人の私たちが読んだときになるべく自然に、照れなく行える表現にできるか、ということに挑戦したいと思いました。

あとは、純粋に共感できて興味の持てる内容だったので、続きが読みたいと思って応募しました。この本では心と身体をケアして「自分をいたわる」ことが重要だとされていて。私自身、普段からヨガとか瞑想とかを生活に取り入れるのが好きなので、自分でも実践できるものがたくさんあるのではないかなと思って興味を持ちました。

滝口:その中で実際に実践されたセルフケアってありますか?

佐伯:結構やっています! 実は去年の夏に出産して、どうやって自分の時間をつくればいいんだろうと模索している時期だったので、時間を余分に割かないものがやりたかったんですね。毎日やっているようなことでも、そのなかで意識を変えて行うだけで、それがセルフケアになるんだと書いてあって。紅茶をいれたり、コーヒーを入れたり、そうした一つ一つの動作を意識して、丁寧に行うことで、セルフケアに繋がるので。それは結構毎日実践しています。あとはお風呂でできるヘッドマッサージとか呼吸のトレーニングも、やりやすいので毎日取り入れられるかなと。

滝口:まさに、最高の読者というか。こんなに実践していただけるとは。

元木:ちょうど子育てに関する実践を取り上げている章もあるんですよね。もうピッタリでじゃないですか。

庄司:参加者の方から質問を頂いています。「実際に和訳したときに大げさになってしまう表現とはどんなものですか? それをどう翻訳すると自然な日本語になるのでしょうか?」

佐伯:例えば英語だと “I am beautiful.” 「わたしは美しい」と鏡の前でいう場面があります。でも、なかなか鏡に向かって「美しい!」とか言えないじゃないですか(笑)それを「自分のことが大好き」とかに言い換える。このように少し柔らかく表現するのが大事かなと。

滝口:翻訳書って独特な読み応えがあるものがありますが、しかしこの本はあまりそれを感じさせない。すっと入ってくる文体だなと改めて思いました。

元木:五人の訳者さんの中から佐伯さんを選んだ決め手が、日本語として自然であることでした。他の方も翻訳として間違いはないし上手だったんですけれど、その中でも佐伯さんの日本語はすごく分かりやすかった。それが一番の決め手でした。

佐伯:嬉しいです!

庄司:ただ書店に並んでいる本を手に取るだけでは聞けない話が沢山聞けて、すごくワクワクしますね。私も改めて「そういうところを意識して訳されたんだ」というところを踏まえて読んでみたいと思いました。

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10年越しのご縁に、一同感激。

続いては阿部広太郎さんの『それ、勝手な決めつけかもよ?』です。編集担当は大竹さんと橋本さんと渡辺さん。では谷口さん、まず読んだ感想からお聞かせいただけますでしょうか。

谷口:私、阿部さんの言葉の紡ぎ方がすごく好きで、この本は特に一つ一つの言葉の解釈とか、紡ぎ方が本当に秀逸だなと感じました。企画の段階で考えていらっしゃったことが、しっかり本に反映されていて、読み終わった後に価値観が変わる感覚がありました。流石だなと思ったのと同時に、もう一度読みたいと思わせる素晴らしい言葉のチョイスをされているなと。まるで芸術書を読んだかのような読後感がありました。

庄司:この本が生まれたきっかけは、橋本さんが声を掛けたことだとお話を頂いたんですが、阿部さんに是非そのエピソードをお伺いしたいと思います。

阿部:実は橋本さんとの出会いに加えて、もう一つきっかけがあるので、そちらもお話ししてもよいですか? 実は10年前のお話になるんです。

庄司:是非お願い致します。

阿部:10年前、僕がまだ若手の頃で、コピーライターになってまだ二年くらいのときです。自分という存在を見つけてもらいたくて、広告賞だけでなくて、いろんなコンペに出そうと視野を広げていた時期がありました。その時に、ディスカヴァーさんが開催されていたTwitter小説大賞で審査員特別賞を頂いたんです。

一同:えー!!!

阿部:一般公募で、選ばれた方は本にしますという企画でした。しかもその時に広報担当だったのが大竹さんで。

一同:!!!

大竹:そうです、私です(笑)

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阿部:僕はその時、文章ではなくて単語を並べて情景を共有するという小説を企画して投稿したんです。審査員の方からの講評で「着想はいいから、言葉のチョイスをもっと頑張ったらいい」という言葉を頂いて。それがいまちょうど、10年越しに言葉の紡ぎ方について褒めて頂けて胸熱です!

そして一昨年、僕が主宰する講座に橋本さんが通ってくれていて。全ての講義が終わった後の懇親会で橋本さんから「一緒に本を作りましょう」という丁寧な手紙を頂いたんです。僕は講座でいつも「ラブレターのように企画書を書こう」と伝えているのですが、それがそのまま返ってきて。この気持ちには真剣に答えたい、答えなければと思い、企画がスタートしました。

一同:(拍手)

滝口:感動しました、まさか10年越しのストーリーがあったとは。

大竹:企画の冒頭では私も一緒に企画を考えていました。その時「この阿部さんは新進気鋭のコピーライターなんだ」と思っていたんですけど。お会いして、その小説大賞の話をして頂いたときに「はっ!」と思い出したんです。

阿部:賞状渡してくださいましたよね?

ブックバースデー記事

大竹:そうです! ご縁だなと思いながら企画を進めておりました。

営業時代に自分が抱えていた「勝手な決めつけ」。

滝口:橋本さんもこの本に対する熱い思いがあると思うんですけど、その辺についてお伺いしても宜しいですか?

橋本:阿部さんの主宰されている連続講座の「言葉の企画」に参加させていただいて。阿部さんが作り出す場の空気ですとか、自分自身や他の参加者の方々の心境の変化を目の当たりにして、阿部さんの言葉には人の心を動かすお力があると感じました。これを本の形にできたら、読みたい人がたくさんいるのではないかと思ったんです。

私は当時営業部に所属していたんですけれど、社内で大竹さんや渡辺さんの力を借りながら、最終的には編集担当として加わって、一冊の本にすることができました。手紙をお渡しするときも、とても緊張しましたね。

庄司:本文にも「手紙を渡しているとき、手が少し震えているようだった」ということが書いてありましたね。

橋本:あくまで当時阿部さんは講座の「先生」だったので、私みたいな一生徒がこんな直談判をしていいものかという不安もありました。普段は手紙とか書かないんですけど、気合を入れて東京駅で便箋を買って、高級カフェで精神集中して手紙を書いたという背景が(笑)

阿部さんからも「想いは受け取ったよ」というお返事を頂いて。最初の打合せは2020年の1月でコロナ流行がはじまる前だったんですが、そこからリモートに切り替えながら、何度も打合せをしていただき、今回の刊行に至るという。本当にありがとうございました!

渡辺:橋本さんから企画を頂いて、ぜひ自分も関わりたいと思い手を上げました。それから一年以上、毎月一回程度打合せをして頂いて。その期間のことはよく思い出に残っています。良い経験をさせて頂きました。

庄司:タイトルの『それ、勝手な決めつけかもよ?』もとても印象的ですよね。

古矢:これは誰が発案したんですか?

渡辺:このタイトル自体は阿部さんがお出しになったということで。

古矢:おお~

阿部:いや、ちょっと待ってください。このタイトルは、そこに至るまでの様々な議論が全てだったと思っておりまして。この企画は「解釈」を大きなテーマにしていて、自分が物事を受け取るときに鵜呑みにせずに、自分なりに捉え方を見つけましょうという。でもその一点張りだと難しさを感じてしまう人もいるかもしれないと議論にあがったんです。

その時に橋本さんがおっしゃったのが、「自分が営業の部署で働いていてやりがいを感じないわけではないが、本当は編集の仕事をしたいと思っていた。そこに踏み出そうと思ったときに、自分ができないかもとか、自分なんて、と決めつけてしまっていた」ということでした。それこそがまさに僕の伝えたい部分でした。やれば案外できるかもしれないということや、受け取り方を変えれば事態は好転していくかもしれない、すべては解釈次第なんじゃないかなという考えはずっと思っていたことなんです。

いまはあちこちから情報が降り注いできて、強い人の意見に流されちゃったりする。僕自身、身に覚えがあります。橋本さんのような思いはみんな抱えているんじゃないかな、ということで「それ、勝手な決めつけかもよ?」に辿り着きました。なので皆さんで決めていったという印象が残っています。

庄司:本当に胸が熱くなるエピソードですね。それを阿部さんの声で、言葉で聞くことができて、グッと来てしまいました。

滝口:じんわり来ちゃいましたね……自分はいまAmazonを担当させて頂いていて、この視点から一つお話しさせて頂きたいんですけれど。

阿部さんがご自身のTwitterで発売の告知をして下さったのですが、あの日以来Amazonでも予約が殺到しまして。この本が出ることを知っていても知らなくても、この本を待ちわびていた人はたくさんいたんだなと。僕は制作には全然携わっていないですが、そのことを本当に嬉しく思いました。

大竹:最初企画を通したときは「名前を付ける」っていう企画だったんですよね? 自分がこうだと思っているものを違う名前で読んでみようという、テクニックよりの内容だったんですけれど、だんだん本質に迫っていって。結局「解釈だ!」となってこの形になった。流石だなぁと思いました! 「これってどういうことだろう?」ってすごく掘り下げていかれるのがすごく印象的でした。

カバーの裏には…? デザインへ込められた想いに感動!

古矢:あと、この「かもよ?」のレイアウト、たまんないっすね! 
「かもよ?」についても誰か語ってくれませんか、この素敵な配置について!

一同:(笑)

阿部:装丁については渡辺さん是非!

渡辺:そうですね、井上新八さんというデザイナーさんがこの装丁を担当されまして。原稿をお読みいただいて、阿部さんの爽やかな感じを装丁でも表したいというお話をしました。そして「視点を変えたい」というお話をしたときに、このデザインが出てきました。最後の「かもよ?」で視点の動きを表していて。あと「かもよ?」から紙飛行機が飛んでいるんですが、これがこの本のキーワードである「解釈」につながっていくという。これは本当に井上さんがやってくださった、素晴らしい装丁だと思っています。

大竹:あと、まだ仕掛けがあるんですよね?

渡辺:紙飛行機の話を先ほどしました。これも井上さんの発案なのですが、実はカバーを外すと……青空が広がっていて。

古矢:おお!……でもお高いんでしょ、こんな加工しちゃって。

渡辺:税込み1650円です。

古矢:買った!!!

一同:(笑)

滝口:チャット欄でもいくつか質問が寄せられているので、お答えいただきたいと思います。
「阿部さんが聞く中で最も多い「私なんて……」というシチューエーションはなんですか?」という質問です。

阿部:僕の講座に学びに来てくれる主に20~30代の人と接する中での実感なんですけど、やはり自分自身を過小評価してしまう人が多い。本来こんなことをしたいという気持ちがあるにもかかわらず、自分がそれをやっていいのかな、やれるのかなとか。あるいは現状やらなければならないことに目を向けていて、「実はこんなことやりたいけど、でもどうしよう」という本音と建前の間で葛藤されている方が一番多いんじゃないでしょうか

滝口:確かにいまのお話聞いて、自分でも思い当たる節はなくもない、といった気持ちがあります。みなさん誰しもが思うのかもしれないですね。

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あっという間の一時間。ブックバースデー、閉幕!

滝口:まだまだ聞きたいことは目白押し!なんですけれども、残念ながら終わりの時間が近づいてきました。最後にゲストのお二人と谷口さんから一言ずつ伺いたいと思います。

佐伯:今日は本当にありがとうございました。書籍を翻訳させて頂くのは今回初めてだったので、とても良い経験をさせて頂きました。宝物のような一冊ができて嬉しいです。

阿部:十年越しにご縁を形にできたことがとても嬉しいです。僕が伝えたいのは、物事を解釈することによって、自分の進みたい先に進めたり、解放感や自由を得ることができるということで、これからも一人でも多くの人にこのメッセージを届けていきます。

谷口:佐伯さん、阿部さん、ご登壇して頂き本当にありがとうございました。書籍はもう発売となっておりますが、ディスカヴァーも社員一丸となってたくさんの方々にお届けできるように頑張りますので、ぜひ一緒に走って頂けたら嬉しいなと思っております。

庄司:ゲストの皆さん、谷口さん、改めてありがとうございました!本当にあっという間でしたね。

本日のブックバースデーは以上となります。皆さま、楽しめたでしょうか?
ではここにいる皆さんでゲストの皆さまをお見送りします。

一同:ありがとうございました!

庄司:一冊でも多くの書籍を届けられるように、我々も頑張りましょう!

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5月のブックバースデー後編、いかがでしたか?

今回は普段はなかなか接点を持ちづらい翻訳者の世界や、弊社と著者を10年越しにつないだ感動のエピソードをお伺いしました。この記事を通じて、皆さんが少しでも好奇心を揺り動かされたり、あるいは新たな気づきを得られていましたら幸いです!

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【オンラインイベント情報】6/25(金)18:00~19:00

 
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