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意思決定が統一され、無駄を省くことで生産性が高まる『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』【無料公開#5】

8月28日発売の『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』。マクドナルド・メルカリ・SHOWROOMで事業と組織の成長を加速させてきた著者が、カルチャーを言語化し共有化するための手法をご紹介いたします。組織運営に悩む経営者、人事担当者、マネージャー、すべてのはたらく人に向けて、「新しい組織論」を無料公開にて連載いたします。

意思決定が統一され、無駄を省くことで生産性が高まる

この数年で多くの企業は「働き方改革」に取り組んできました。

在宅勤務制度やフレックスタイム、ノー残業デーや長時間労働の削減。

「午後9時になるとフロアが一斉消灯される」「会議室は午後8時以降予約を取れない」など、物理的な制約をかけることで、社員の勤務時間を削減した企業もあります。

「部下の残業削減を評価指標に入れた」というマネージャーもいるでしょう。

その結果、何が起こったか。

オフィスから早く帰っても、家に仕事を持ち帰ったり、隠れて休日出勤したりする社員。

「とにかく早く帰れ」とばかり指示するマネージャー。

あげく肝心の売上目標が達成できなかったり、時間管理ばかりに業務時間を割かれ、肝心の仕事がなかなか進まなかったり……と、「名ばかり働き方改革」に疲弊する人が続出することになりました。無理もありません。

もともとあった仕事に加えて「働き方改革をするための仕事」が増えたのですから。

これもある意味、「制度やルールに縛られ、思考停止した」ことの弊害と言えます。時間を削減することが目的となり、本来の仕事の目的を見失ってしまったのです。

これがもし、カルチャーをすり合わせた企業であれば、「やらなくていい仕事」を捨てることができます。

企業のバリューに「カスタマーファースト」と示している企業であれば、お客様のためにならない仕事は、優先順位の低いものとなります。

「毎日上司に1日の業務報告と売上実績、翌日以降の予定と見込みの報告メールをする」のがルールとなっているのなら、それはお客様のためになっているだろうか? という考え方が働きます。

それなら、課内全員の予定一覧がカレンダーで共有され、数字だけ入力すればOKのスプレッドシートを共有し、週次のミーティングなどで見込みを報告したほうが、よっぽどお客様のために時間を使えるはずです。

あるいは、週次で各部門を集めて会議を行い、事業計画や目標の進捗状況を報告している企業が、バリューに「透明性」と掲げているなら、その会議に参加しなければ知り得ない情報があるのは問題です。

各部署のデータや施策、企画や議事録をすべてイントラネット上に公開し、いつでも共有できるようにする。

そうすれば、いちいち部長が部下に会議の内容を報告するだけの時間を取る必要はありませんし、現場レベルで経営陣がどんなことを検討し、どんなプロセスで意思決定しているか、わかるようになります。

会社としてのカルチャーが浸透し、意思決定の前提条件が揃うことで、無駄な仕事を減らすこともできるのです。

また、経営会議において、こんなことも起こります。

「人によって言っていることが違う」現象。

たとえば福利厚生制度を検討するにあたって、「住宅手当を支給してほしい」という要望が複数の社員から出ているとします。

人事部長は「新卒の内定辞退も増えていて、競合他社の給与水準と比べると確かに見劣りするところもある。ぜひ検討したい」と答えたものの、財務部長は「この時期に実質的な給与アップを検討する余裕はない」と言っている。

経営企画部長は「一律支給より、インセンティブとして設計したほうが社員のモチベーションにもつながる」と話す。

こうして議論は平行線をたどり、結果が先送りされてしまうのです。

これはそれぞれの立場で意見されているため、一見すると意味のある議論のように見えます。けれどもあくまで各領域の観点からの考えにすぎず、会社にとっては何が最善なのか、判断軸がブレてしまいかねません。

こういったとき、たとえば「自主性と自律性を尊重する」というバリューがあれば、一律手当でなくインセンティブとして支給したほうがいいでしょうし、「地域に貢献する」というバリューがあれば、「会社から3km圏内に居住していれば、月に2万円の住宅手当を支給する」ことに妥当性があるでしょう。

このように、企業のカルチャーが醸成されることで判断軸が定まり、一貫した意思決定をスピーディに行い、生産性を向上させることができるのです。


著者プロフィール

唐澤俊輔(からさわ・しゅんすけ)

Almoha LLC, Co-Founder

大学卒業後、2005年に日本マクドナルド株式会社に入社し、28歳にして史上最年少で部長に抜擢。経営再建中には社長室長やマーケティング部長として、社内の組織変革や、マーケティングによる売上獲得に貢献、全社のV字回復を果たす。
2017年より株式会社メルカリに身を移し、執行役員VP of People & Culture 兼 社長室長。採用・育成・制度設計・労務といった人事全般からカルチャーの浸透といった、人事・組織の責任者を務め、組織の急成長やグローバル化を推進。
2019年には、SHOWROOM株式会社でCOO(最高執行責任者)として、事業成長を牽引すると共に、コーポレート基盤を確立するなど、事業と組織の成長を推進。
2020年より、Almoha LLCを共同創業し、人・組織を支援するサービス・ツールの開発を進めつつ、スタートアップ企業を中心に組織開発やカルチャー醸成の支援に取り組む。
グロービス経営大学院 客員准教授。


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