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ティール組織を考える(後編)


前回は、「成熟度による5つの組織ステージ」について書かさせていただきましたが、

今回はティール組織そのものを解説していこうと思います。


ティール組織を理解する上で欠かせない3つの要素が

(1)自主経営(セルフマネジメント)
(2)全体性(ホールネス)
(3)存在目的(パーパス)

です。

ラルー氏は、これらを「3つの突破口(ブレイクスルー)」と読んでおり
上記を満たしていくことで、「多元型組織(グリーン)→進化型組織(ティール)」に組織が変革していくと述べています。


では1つずつ解説していきましょう。


①自主経営(セルフマネジメント)


「自主経営」と聞くと、個人事業主のようなイメージを持つと思いますが、
ティール組織における自主経営とは、個人ではなくあくまでも自主経営を推進させるような組織構造、という観点です。

つまり、個人のスキルや自立心に委ねるといった意味ではなく、組織の仕組みそのものが個人の自主性を促すようになっているということです。

まず、ティール組織には旧来組織のようなヒエラルキーは存在しません。
ヒエラルキーがないので、上司・部下という概念はそもそもないですし、指示命令系統もありません。

ですので、基本的に意思決定は本人の裁量に一任されており、故にスピーディな決断や実行を可能にします。


では、どうすればこのような形にもっていけるのでしょうか?

何度も書きますが、これは
「社員の自主性を促しましょう!」とか
「社員の自立レベルを上げましょう!」といった「個」にフォーカスを当てる話ではありません。
あくまでも、「仕組み」としてどう構築していくかが大切なのです。


ひとつは、「情報開示」です。

経営情報や日々のやりとり、顧客とのコミュニーケーションなどを原則開示しながら透明性の高い組織運営を行うということです。

これによって、「報・連・相」の必要はなくなります。
基本的にすべてのメンバーが、すべての情報にアクセスできる環境なので

「聞いていない!」とか
「知らなかった!」とか

そのような話は劇的に減るわけです。
そして、開示されている情報をもとに、本人たちが最適な意思決定を下せばいいので、
誰かに聞かないと(許可を得ないと)意思決定ができない状態が生まれにくくなります。

ふたつめは、「相互助言プロセス」です。

たとえ、情報が開示されている環境で自己裁量で意思決定ができると言われても
もちろん、適切ではない判断をしそうになることがあったり、判断に迷うことも出てきます。

そのために、互いに助言をし合えるようなプロセスを組織内に構築し、結果的に意思決定をサポートできる環境ができあがるわけです。

しかし、ここで気をつけておかないといけないのは、あくまでも周りは「助言(アドバイス)」をする役割であって、意思決定の権限は本人に委ねられているという点です。
ここがブレると本末転倒ですからね。



②全体性(ホールネス)


「全体性(ホールネス)」という言葉は、みなさんにとってあまり馴染みのない言葉かと思います。

ティール組織における全体性とは、

偽りの仮面を被る必要がなく、ありのままの自分で仕事に出かけることができるようになる状態

という意味です。
もっと分かりやすくいえば「自分らしく働く」ということです。

「自分らしく」と聞くとすごく魅力的な一方で、「理想論かよ」と感じる方もいるかと思います。
これは、現代の組織構造によって「そもそも、自分らしく働くことは不可能だから諦めなければならない」と潜在的に植え付けられているのではないかと推測しています。


しかし、ラルー氏は私たちが全体性(ホールネス)を取り戻すための組織慣行は、その大半が驚くほど単純だ、と述べています。

では、どのような要素が自分らしく働ける組織には必要なのでしょうか。


それは、「安心できる(心理的安全性の高い)環境」です。

「安心」というなんとも抽象性の高い言葉が出てきましたが、実は「自分らしさ」と「安心」は密接に関わり合っているのです。


いきなりですが

「自分が自分らしい時はどんな時か?」

という問いを考えてみてください。


家族といる時
親友といる時
ペットといる時
一人で家でいる時

などなど、様々なケースをイメージされると思います。

では、その時の心理状況を言語化してみてください。
そこにはかならず「安心する」という心理状況が生まれていることでしょう。

ちなみに、「安心する」ことをもう少し深掘りするとそれは「自分の人間性や価値観が脅かされない状態」と言い換えることができます。

つまり、気心の知れた人と一緒にいるときは、


自分のことをよく理解してくれている
     ↓
自分の人間性を否定されない or 矯正しなくてもいい
     ↓
安心という心理状況になる
     ↓
結果、自分らしくいることができる



と繋がっていくわけですね。

だからこそ組織運営においても「安心」というキーワードは、非常に重要性が高いと言えます。


では、安心できる組織はどのようにして出来上がっていくのでしょうか。


ひとつめは、「相互理解のための物語(ストーリーテリング)」です。

前述にある通り、「安心」を生み出すためには
「理解してもらっている」と思えることが大切です。

つまり、いかに効果的に相互理解をすることができるのかが重要なわけです。

そのためには、物語(ストーリーテリング)的なアプローチが効果的になってきます。

たとえば、自分の人生を物語的に話してみるのもいいでしょう。
その人の人間性は、その人が過ごしてきた人生によって形成されています。
ですので、「今までどんな人生を送ってきたのか」を語ってもらうのが一番手っ取り早いのです。


ふたつめは、「価値観の明確化、行動化」です。

前述にも、「安心とは自分の人間性や価値観を脅かさない状態である」とありましたが

個人の人間性や価値観を脅かすことのない組織を作ろうと思うと

そもそもその組織における価値観が明確になっていないと、マッチしているかどうかの判断がつきません。

「安心」の対義語は「不安」ですが、人は「分からない状態=不安な状態」となるのが一般的ですから
価値観が明確化させていないことこそが、不安な組織になってしまっている一番の原因なのです。

そして、その価値観に基づく行動指針(コアバリュー)がきちんと設定されていると
大前提、その価値観に共鳴している人が入ってくる。入ってからも明確な基準があるので、不毛な憶測をすることなく働くことができる。

このような状況を作り出すことができるので、結果的に「安心」を担保することができます。

注:この要素は、同質性を助長させるものではない、ことだけご理解いただければと思います。



③存在目的(パーパス)


ここまで、「自主経営(セルフマネジメント)」と「全体性(ホールネス)」について解説してきました。

最後に、組織が組織として機能しているための最も大切な「存在目的(パーパス)」について書いていきたいと思います。

まず、ラルー氏は存在目的という言葉を、「Evolutionary Purpose」と表現しています。
これは「進化する目的」と訳することができます。


ティール組織は

時代によって状況によって環境によって、目的すらも変化(進化)させながら適応していく、

というラルー氏の定義があるからこそ
ティール組織における存在目的=進化する目的 となるのです。

そして、「個人の目的と組織の目的がいかに共鳴するのか」を組織サイド、個人サイドともに考えていく必要があります。

ちなみに、この「共鳴」というキーワードが非常に大切でして、、
似ているキーワードに「共感」があると思います。

「共感」は、他人と自分とが同じ感覚を共有している感じをもつこと
「共鳴」は、他人の考えや感情をよいものと感じて、同じ考えを持つようになること

と定義することができるのですが、こう見ると意味合いが異なっていることが分かります。

つまり、現時点での目的を基準にマッチしているか否かという視点ではなく
組織サイドも個人サイドも、よい考えがあればどんどん吸収してさらによりよいものに昇華していきましょう。
それこそが進化そのものであり、ティール組織における存在目的だ。

ということです。

そのためには、リーダー(※組織階層における役職名ではない)は常にメンバーが持っている目的や使命に耳を傾け、共鳴していく必要があるのです。




このように


(1)自主経営(セルフマネジメント)
(2)全体性(ホールネス)
(3)存在目的(パーパス)


の3要素を兼ね備えていくことでティール組織(進化型組織)へステージアップできるようになっていきます。


では、次回は上記の要素を有しながら組織運営をされている企業事例を紹介することにしましょう。

それでは、また。

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