音楽の限界と良さを描いた名作 『キラ☆キラ』 感想
今日はこの作品について語りたいと思う。
『キラ☆キラ』。2007年にOverdriveから発売されたエロゲ。
なんでこんな昔のエロゲのことを語り始めるかというと、今日このエロゲのイベントに行くから。
エロゲにハマることは滅多にない自分がそんなにぶっ刺さたこの作品、何が良かったのか語りたい。
キャラ語りとかルート語りとかは後日で。まずはこの作品のテーマのついて語ろうと思う。
超雑あらすじとキャラ紹介
あらすじは面倒なので公式サイトから。
まぁザックリ言うと、青春バンドもの。剣も魔法も存在しない世界のお話。
ヒロインは3人。一人だけ2ルートあって、合計4ルート。分岐フラグも分かりやすいので、攻略サイト無しでもクリアできるシンプルな構成。
メインヒロイン、ボーカリストのきらり。バカキャラかと思ったら、実は一番頭良い。サヴァンっぽさを出しつつ可愛く描けてるの何気に凄いかも。
ギタリスト。病弱お嬢様というテンプレ盛りまくりのキャラ。でもテンプレっていいよね。
ルートに入ると分かる3倍くらい可愛くなる。意外とグイグイ来ます。
ドラマー。イチオシ。年上幼馴染で、ちょっと依存体質とか、ドツボすぎる。
主人校。女装も似合うイケメン。普通に彼女いた、陽キャ寄りの人間なんだが、そんな主人公が彼女にフラれるところから物語は始まる。
このフラれる理由にもなった、闇な部分が多くあり…
以上、ざっくりあらすじと、各キャラ紹介でした。
キャラ絵がSDで申し訳ない…作りが懐かしい、公式サイトからいただいております。
音楽って、ロックって何さ
ロックってなんですか?
単純な、だけどめっちゃ難しい問いにエロゲでありながら、1つの答えを出したのが、この作品だと思う。
より正確に言えば、この平和な日本でのロックをやる意味ってなんですか、という話。別に戦争も起きてない。食うのに困っていない。温かい家があって、家族がいて、娯楽もいっぱいある。
そんな日本において、ロックな音楽って何なんだろう、何に怒れば、何を表現すればロックになるんだろうか。
自分がこの作品通して、感じたのは、ロックなんて所詮は「現実逃避」なんだなということ。
すごいガックリする回答かもしれない。音楽は世界を変える、なんてカッコ良い発言から真逆にある言葉だ。でも、これって1つの真実だと思う。
そして、現実逃避できるモノがあるものがあるだけで、人間は凄く豊かに生きていける。
作中のあるバンドマンがこんな台詞を言う。
凄まじく夢のない話だ。
でも、これがこの作品の土台にあるテーマな気がする。
少しだけクソッタレな環境にいる主人公たち
実は、この作品のヒロインたち、タイトル通りキラキラしているなんてことはない。美少女なんだけども、その環境は少しだけクソッタレと言いたくなる環境にいる。
家がど貧乏で、特待生になるくらい成績優秀だけど大学進学を諦めざるを得なかったり。
病弱で、まともに学校に通えないし、過保護な祖父のせいでまともな友人すらできていなかったり。
両親は最近離婚して、その家庭内トラブルのせいで1年留年することになっていたり。
主人公だって、少しだけ闇を抱えている。ありふれた家庭的な問題、それが原因で生じる一種の達観した感覚…
別に命に何かあるわけではないし、どこにでもある話といえばある話。もっと不幸な人がいくらでもいる。それ故に、悲劇のヒロインぶることもできず、そのまま学園を卒業していくことしかできない人たち。
そんな奴らと、廃部寸前の部活の最後の思い出作りとして、バンドをやることになる。家に戻れば、このどうしようもない、つらい現実と向き合う必要がある。でも、バンドをやっている間だけ、音楽をやっている間だけは、バカみたいファッキンファッキン言いながら、感情の赴くままに熱中できる。
彼女たちの現実は、音楽をやっていたところで、何一つ変わらない。世間に対して怒りを持っていても、変わらない。
現実逃避意外に何ものでもないことを承知のうえで、ロックをやり続ける。
音楽をやっている間だけは、彼女たちの人生は「キラ☆キラ」したものになるのだから。
ロードムービーでもある
そして、この作品を「バンドもの」という表現以外で表記するなら、「ロードムービー」だろう。
あらすじに書いてある通り、日本全国をオンボロ車で旅することになる。
プレイ時間の3分の2くらい旅している気がする。
個人的に、旅とは何かと聞かれれば、これも一種の「現実逃避」なんだと自分は思っている。
大体旅行先でできることって、地元でもできるはず。それなのに、高いお金をかけてまで、遠い土地に行き、宿泊し、飯を食べる楽しさってなんだろうか。非現実感を味わうためでないだろうか。
旅行が終わって、家に帰ってくると、明日から代わり映えしない日常がやってくることを嫌でも実感して、げんなりするだろう。つまるところ、旅しているときは、「非日常」で、「非現実感」を味わうために旅行するだと思う。逃げるって言い方にすると感じ悪いけど、それは事実だろう。
そう言った意味でも、この作品のテーマはやはり序盤は現実逃避なんだと思った。クソッタレな現実に逃げて最高な逃避行を仲間とともに味わう。
でも、旅は終わる。
現実に引き戻される。
ここから、各ヒロインの個別ルートに入っていく。クソッタレな現実な、ヒロインと一緒に向き合って攻略していくのがこのゲーム。
「大丈夫」になっていくしかない
でも、このゲーム。主人公はスーパーマンじゃないし、なんでも願いをかなえる聖杯が登場するわけでもない。普通の高校生の物語だ。
だから、ヒロインたちの問題の抜本的な解決は起きない。
どのルートでも主人公が時たま言う(ちょっと記憶あやふやなので微妙に違うかも)。
なんて救いのない言葉なんだろうか。
いや、こう書いてしまうと、救いのない物語みたいな書き方になってしまうな…でもそうなんです。
一応、全ルートハッピーエンドで終わります。自分はこれでもハッピーエンドだと思う。
でも、何も抜本的な解決はしていないのは事実(解決してもある傷跡があったり)。
でも、人生って、そんなもんじゃないだろうか。
どうしようもない、クソッタレな現実はある。大なり小なり、みんな不幸な事実がある。
それに対して、自暴自棄になったりせず、しっかりと向き合うしかないのだ。そこに、音楽だったり、一緒に支えてくれる人だったり、何か支えを見つけて乗り越えていくしかない。
平凡なメッセージだけど、愛と音楽で、「自分を」変えて乗り越えていくしかない。「大丈夫」になっていくしかないんじゃないかなと。
音楽の良さと限界を示した作品
この作品の監督は、バンドマンやバンドのローディなんかもしたことがあるらしい。
きっと、売れないバンドマンを腐るほど見たんだろう。世界を変えられずに、消えていったバンドマンと一緒に生きてきたんだろう。
だからこそ、音楽を美化せずに、現実的な解として示せたんだと思う。
音楽は素晴らしい。ロックは素晴らしい。でも、そこに現実はない。
どこかで現実としっかりと向き合わないといけない。みんなの逃げ場所でしかなくて、いつかはクソッタレな世界に飛び込んで、戦わないといけない。でもその世界で戦う最高の武器になる。
そんな音楽の限界と素晴らしさをしっかりと明示した、素晴らしい作品だと思う。
まぁこんな御託は置いておいて、皆さんぜひやって下さいな。
音楽がシンプルに良いので。
リンクは怖いので、貼らないのですが、FANZAで販売中です。ぜひ。
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