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ウォール街の吉良吉影

なんにもやる気が起きない日があった。遊ぶ気力も起きない日。ふて寝するしかないかなぁと思いつつ、怠惰な自分に嫌気がさしていたころ。ダラダラとYoutubeを見ていて、ニューヨークのウォール街を旅行するVlogを見ていたら、ある映画を見たくなった。

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』。レオナルド・ディカプリオ主演の、ウォール街でまさしく「成金」となっていく男の物語。


ドラックとセックスしかねぇ!

有名な「このペンを俺に売ってみろ」のシーンしか見たことなかったので、割と真面目なビジネス映画かと思っていた。
が、全然違っていた。もうドラッグとセックスでラリまくり、ヤリまくりな映画だった。そりゃR18にもなるわ。カップルとか家族で見るには全くおすすめできません。


綿密な事業計画とかそんなものがなく、ひたすら強引なセールストークにドラッグの売人を通したマネーロンダリングで会社を成長させていく話。そして儲けた金でまたドラッグパーティ。その繰り返し。

レオナルド・ディカプリオの怪演と、それによる狂気的なムードで一気に引き込む作品だった。本当に狂気しかない。だって登場人物がシラフでいる時間がほとんどないもの。


スタートアップ企業は狂気に包まれろ

この映画を見て思い出しのは、この本。『逆説のスタートアップ思考』

まぁ初めて知ったのはゆる言語学ラジオからなんだけど。


とにかく、スタートアップには、「信じられない/出来が悪そう」な事業をやってみるしかない、そしてそれを実行するためには、狂気が必要という話。
そりゃそうだろう。誰でも思いつく、良さげなアイデアは、大企業なんかが実践している。

一見すると、全然ダメそうなアイデアを何とか実現し、それで一発当てる、それこそがスタートアップだと。そして、それにはカルト的、狂信的な思いが必要ということ。このロジック、まさにこの映画が体現している。

全員、狂ったように人を騙し、株を売り、オフィスで薬と女をヤリまくる。これくらいの狂気がないと、スタートアップは成功しないという極端な実例映画とも言えるかも。


この映画見てなんで元気になったんだ…

何もやる気が起きない夜中だったけども、この映画を見たら少しやる気がでてきた。なんでなんだろう。

もっと『ロッキー』とか、『フォレスト・ガンプ』とか、名作ヒューマン・ドラマを見て元気になりたかった…
プラスに成長していく主人公を見て元気になるのが、普通だろう。

でも、この作品の主人公は金と薬におぼれて失敗する。彼の行ってきたことに正義はなく、悪しかない。そんな映画を見てなんで元気になったんだろう。


主人公はセールスを人に教え込み、事業を立ち上げ、そこから得た金で、盛大に失敗したのにも関わらず、最後は講演会で「このペンを俺に売ってみろ」と、またセールスを教えるシーンで映画は終わる。
性懲りもなく。

彼の、金を儲けたい、という欲望は、恐らく一生尽きることはないのではないだろうか。

とどのつまり、人間の本質や本性は醜いもので、その本質は簡単には変えられない。それでも、それに抗うことなく、その本性と向き合い、ある意味まっすぐに生きていく。それが例え最悪な生き方でも。

それがこの主人公を通して伝えたいメッセージなのかなとも思った。
そして、めちゃくちゃ吉良吉影じゃん…とも思った。
殺人鬼であるという自分の本性に向き合い、否定することなく、悪として生き抜こうとするその健気さ、真摯さ。そういったところは共通している。

そう考えると、すごい名作映画な気がするし、ある意味で「人間讃歌」なのかも知れない。以上、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の感想でした。


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