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次世代が活躍できるまちづくりとは ~セミナー「山口ミライデザイン2023 共助型デジタル社会とまちづくり」レポート~

こんにちは、デジテック運営事務局のやまたんです。

最近よく耳にする作品の題名が「君たちはどう生きるか」。児童文学者でもある吉野源三郎さんが戦前に書いた小説で、2017年に羽賀翔一さんが手掛けた漫画版は累計200万部を超えるベストセラーになりました。

そして今話題になっているのは、スタジオジブリの宮崎駿監督の10年ぶりの新作となる同名の映画です。

漫画は小説を原作とする一方、宮崎監督の作品はオリジナルストーリーですが、共通するのは、題名が表すように、次世代に対する問いかけです。それは、「私たちは君たちに何を引き継げるのか」という、現代を生きる私たちへの問いかけなのかもしれません。


「山口ミライデザイン2023」開催!

7月27日にY-BASEでセミナー「山口ミライデザイン2023 共助型デジタル社会とまちづくり」が開催されました。

講師は、デジタルハリウッド大学大学院専任教授で、前橋市スマートシティアーキテクトや、官民共創会社めぶくグラウンド取締役等を務める谷川じゅんじさんです。

国内トップクラスのスマートシティ先進都市である前橋市などにおいて、最前線でまちづくりデザインに参画してきた谷川さんの示唆に富んだ講演をレポートします。

SDGsからGDWへ

まず最初に語られたのは、人々や社会の価値観の変化です。経済成長を最大の目標とする経済社会は限界を迎え、グローバル・アジェンダとして持続可能性を重視するSDGsが設定されました。その後、人々や社会の価値観をさらに変容させ、自らの生き方を振り返る機会にもなったのが、新型コロナウイルスの流行。

「ikigai」という一冊の本が海外でベストセラーになったように、人々は生きる意味や価値について深く考えるようになってきており、最近注目が高まっているWell-Beingという概念が重視され、GDW(gross domestic well-being)がSDGsに続くグローバル・アジェンダとなる可能性が示唆されました。

ちなみに、国が推進する「デジタル田園都市国家構想」の目標にも、Sustainability(持続可能な環境・社会・経済)と並び、Well-being(心ゆたかな暮らし)が掲げられています。

目指せ!ポートランド・メルボルン

こうした中、谷川さんがまちづくりに参画している前橋市では、スーパーシティ×スローシティーを構想に掲げた際、目指す姿として、世界を代表するスマートシティであるアメリカ・ポートランド、オーストラリア・メルボルンをターゲットとしたそうです。スケールが大きい!

また、前橋市の地域活性化の取組事例として、創業300年の旅館「白井屋」から生まれ変わった「白井屋ホテル」や、中心市街地に生まれた新たなアート拠点「まえばしガレリア」、商店街で開催された「前橋ブックフェス」の取組が紹介され、地方における活性化について数多くのヒントが示されました。

Digital Green City 前橋

前橋市のスマートシティの取組については、ビジョン「めぶく。」に沿って、リアルとデジタルが融合することで、技術が人に寄り添い、誰一人取り残されることなく、新たな価値を芽吹かせ続ける共助型未来都市「デジタルグリーンシティ」を目指しているとのこと。

その代表例が、2022年夏のDigi田甲子園アイデア部門で優勝した「めぶくEYE」。視覚障害者の歩行支援システムをスマホに実装するというもので、スマホのカメラの視界をクラウド上のAI技術で画像認識し、音声で利用者を誘導して安心してまち歩きすることをサポートするそう。

さらに、デジタルグリーンシティの基盤として整備されたのが、マイナンバーカードによる本人確認を実施したうえで、スマートフォン上に実装されるデジタルID「めぶくID」

例えば、めぶくEYEでは、めぶく IDの意思表示機能 (「手伝ってほしい」の発信・「役に立ちたい」の発信)とスマホの GPS機能により、効率的にリアルタイムのマッチングが可能になるとのこと。

現在各地で構築が進んでいるデータ連携基盤では市民IDが重要になるという話は時々聞いていましたが、こうした具体的な事例をお聞きすることで、非常にイメージがクリアになりました。

山口のミライをデザインする

最後には、山口県の今後のまちづくりに対する提言が。山口県が抱える最大の課題は人口減少であり、地域の活力を向上させるためにも、次世代が活躍できるまちづくりデザインが重要だと力説されました。

今回のセミナーをお聴きして、これからのまちづくりは共感や共創など、市民が積極的に参加し、社会とつながりを生み出しながら、持続できる暮らしをデザインすることが、これまで以上に求められてきていると感じました。

また、デジタル技術は、こうした人々の共感やつながりをサポートする役割を担うべきであり、技術が人に寄り添っていく姿勢が、山口県が目指す、ウェルビーイングにあふれる、人にやさしいデジタル社会にも欠かせないことを再認識する貴重な機会になりました。谷川さん、最新情報と刺激に富んだご講演、ありがとうございました!

今回のセミナーの様子は、8月16日まで期間限定でアーカイブ配信していますので、こちらも是非ご覧ください。

全国各地がデジタル実装に向けて大きく舵を切る中、山口県でもスマートシティをはじめ様々なデジタル実装やまちづくりの取組がはじまっています。私もそうした動きを今後レポートできればと思います。では、また!

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