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短編

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思いついたこと。見た夢の書き起こし。あるいは習作。
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#短編小説

異能俯瞰演義-ヤタガラス、人魂を狩る-

異能俯瞰演義-ヤタガラス、人魂を狩る-

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 小島花菜実は、鬼の顔をしていた。

 夜空を炎が赤く染めている。アスファルト道路に改造バイクだったものが散乱し、熱と煙をふりまいていた。白いジャージ姿の男たちはまだ生きている。舗装の上に横たわり、震えながら呻いている。そのうちの一人が炎を睨んで悪態をつくのが聞こえた。

 炎がその男を踏みしめた。軽く、どこかいたわる様に恐る恐る。しかし、なにかで目にしたような仕草でしっかりと、呻く男の背

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汝は貴腐なりや?

 超 微 生 物 群 相 発 生 !(ゾンビ・ショウ・ビギン!)

 ある少女の嘔吐から発生した腸内フローラの暴走は、いまや首都圏を覆い尽くそうとしている!
 灰色の菌津波が町を、人を襲い腐敗させていくのだ!東南アジア特有の高温多湿気候がこれを助長し、もはや制御不能。そして菌類の本能か、苗床をさらに増やすべく菌感染死亡者が次々と立ち上がる。
 ゾンビ・ショウ・ビギン!
 もはや東京は壊滅、これ以上

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箱庭の幽霊

箱庭の幽霊

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 サナの細い体が仰け反って吹きとび、目の前に勢いよく転がり込んできた。照明のないこの狭い道では飛び散る血も見えなかったけど、確かにその濃い匂いを感じた。生の匂い。そして死の匂い。

 そのまま走り去り、すぐそばの曲がり角を曲がって逃げるべきだった。這いずってでもそうするべきだった。けどサナの血の匂いと、その体につまずいて転んだ時、私の体は全てを諦めてしまった。

 どぶの匂いと、薄汚い水た

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