見出し画像

ゲーム屋人生へのレクイエム 11話

前回までのあらすじ。知人の子供にゲームクリエーターになるにはどうすればいいのか尋ねられた元ゲームクリエーターが自分の過去を語る。ついに入社したゲーム会社。新入社員研修の最中に勤務先のゲーセンでゲーム三昧。サボってるのが先輩にバレて後頭部をどつかれたころのおはなし


「最後の1カ月は工場研修だったよ。今週は生産課、来週は生産技術課、次はサービス課、そんで品質管理課って感じであっちこっちの部署で週替わり研修したよ。研修っていっても業務の手伝いみたいな感じだったね。

この頃に配属希望面接ってのがあってさ、どこに行きたいかって聞き取りがあるのよ。営業は嫌だったからさ、何もできないけど開発行きたいですって希望してね。そしたら案の定何ができるのって聞かれてさ。絵も描けません。プログラムも書けません。企画もできません。音楽もわかりません。ああ、こりゃ無理だわって」


「で、どうなったんですか?」


「うむ。一緒に寮に入ってた同期が一人また一人って感じで配属先が決まって引っ越ししていってさ。まっさきに異動になったのが営業職に配属された人で、俺もドキドキだったけど辞令は出なかった。セーフって。それで、残った人の半分が開発に異動した。また俺には辞令は出なかったよ。俺は工場に残ったのよ。

開発に行けるわけがないけど、営業に配属されなかっただけでもいいかって思ってさ。それで生産課に配属されてね、生産ラインで組み立ての仕事に就いた。その頃は専用筐体が多くてね、ドライブものやらフライトものやらあとガンものとか。昼めし食ったあとに生産ラインに行くとテスト中のゲームがズラリと並んでてね。これを休み時間いっぱい遊びまくってた」


「またゲーム王ですね」


「うむ。同じゲームしかないけどそれでも楽しかった。それでね、生産課に配属されて半年くらいしたら整備課に転属になったのよ。整備課というのは古いゲームの機械を修理してピカピカにするっていう仕事でね。整備の仕事は面白かったよ。だって見たこともないアンティークな古い機械をばらして直してさ。ジュークボックスとかピンボールとか。知ってる?」


「わかんないです」


「ジュークボックスはお金を入れるとレコードを再生する機械。ピンボールは盤面上で鉄球をはじいて遊ぶ機械。どっちもほぼ絶滅した機械だけど、ジュークボックスは今でもネットでつないでお店で曲を聴いたりできるのがあるんじゃないかな。ピンボールはアメリカで数社が細々と作っているはず。

それでさ、半年したらまた生産課に転属になってさ。1年に2回も転属するのって滅多にない事でね、俺に何か問題があるのかって考え始めてさ。いい社員とは言えない素行だったけど、ちゃんと仕事はしてたよ。何だか腹が立ってきてさ。だって異動の理由も説明してくれないからさ。それで再異動した生産課の上司に言ったのよ」


「なんて言ったんですか?」


「続く」


「え?」


「次回に続くの」


「言わなくても下に続くって書いてますよ」
続く
*この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体とは一切関係ありません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?