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#341 うちのレシピ

先日この小説を買いました。

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タイトルに惹かれたのと、初めて読む作者の小説だったことで選びました。

面白すぎて1日で読破。

6人の主人公の視点から、ほっこりとするストーリーが展開されていくものでした。

ぼくの好きなオムニバス形式のもの。

あらすじ

美味しい食事──それは誰もが知っている魔法。
『オルゴール店』シリーズで話題の著者、もうひとつの感涙ストーリー!

舞台は、家族経営のレストラン「ファミーユ」。

働くこと。恋すること。
食べること=生きること。

チョコレートケーキ、すきやき、ミートソース。その味は、きっと生涯忘れない。小さなレストラン「ファミーユ」を営む両親のもとに生まれた真衣。サラリーマンを辞めて店に入った啓太。ふたりの結婚は、頑固一徹の料理人と仕事命の敏腕ビジネスウーマンをも結びつけた。当然そこには摩擦も起こって……。私たちは、恋や仕事や子育てに日々悩みながらも、あたたかな食事に癒される。美味しさという魔法に満ちた、6つの物語。解説・瀧井朝世

【主な登場人物】
正造 レストラン「ファミーユ」の生真面目なシェフ
芳江 正造の妻。穏やかに夫と娘を支えている
真衣 正造と芳江のひとり娘で「ファミーユ」のウェイトレス
 
美奈子 投資銀行のディレクター。啓太が料理人になることに反対だった
雪生 会社員。もと美奈子の後輩社員で激務の妻をサポートしてきた
啓太 雪生と美奈子のひとり息子。「ファミーユ」で正造に師事する


2つの家族の話です。

恋人である啓太と真衣が2つの家族を繋ぎ、この6人の視点でそれぞれの話が展開されていきます。

あとがきにも書かれていましたが、レシピとは「調理法」という意味以外にも「秘訣」、「処方箋」という意味があります。

料理が全てを解決するではありませんが、料理で紡がれる人間模様が描かれていて、結局立ちはだかる問題を解決するのはなんです。

だから「レシピ」というのが料理の調理法を示すだけでなく、対人の問題を解決する処方箋にもなり得るものとして、この小説では描かれています。

この小説で一番好きだった表現。


海外から帰ってきたある主人公の場面です。

アルミホイルをはがしたとたんに、ぷんと海苔のにおいが鼻先をくすぐった。うんと大きく口を開けて、かぶりつく。ほのかな塩気がじわじわと舌にしみわたる。

おかえり。

耳元で、やわらかい声が聞こえた気がした。疲れ果てて家に帰りついた私を、家族はいつもそう言って迎えてくれる。ただいま。私は心の中で応えて、ゆっくりとおにぎりを咀嚼する。


ここで思わずうるっときてしまいました。

おいしいとか、日本食が食べたい、ということを遠回しに表現をすることが小説の醍醐味なんじゃないでしょうか。

はまる一冊でした。

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