初恋とおしっこ
※本件は実話につき下品な表現が伴いますのでご了承ください。
その日僕は、念願の日を迎えていた。
初恋の女の子との映画デートだった。
(以下、初子とする)
デニムジャケットにチノパンという
いかにも当時の高校生っぽい服を着た僕は、
いつもより丁寧に髪をセットして家を出た。
20分前に待ち合わせ場所に到着し初子を待つ。
本当に来てくれるだろうかと心配になりながら
携帯にメモった「会話に困った時の話題一覧」を確認した。
そうしてるうちに、初子がやって来た。
「それじゃあ、行こうか。」「うん。」
緊張しながら映画館へ向かう。
チケット売場に到着し
「学生を2枚でお願いします。」
と自分で言ったとき、本当にデートに来れたんだと嬉しくなった。
その日選んだ映画は
『THE LAST MESSAGE 海猿』だった。
当時とても流行っていて、恋愛要素もあったし
僕は漫画を全巻持っていたのでちょうどよかった。
チケットを買ってから、映画がはじまるまで
1時間くらいあったため準備した話題を一個ずつ使った。
準備の甲斐あって、ドキマギしながらも何とか1時間は会話を続かせることができた。
あとは映画の感想を言い合えば何とかなるかと思い、ここまで間がもったことに安心した。
そして映画がはじまった。
正直僕は隣に座る初子が気になりすぎて
ほとんど映画に集中できなかった。
「しっかりと見たいから」と普段かけていないメガネをかけ、集中して映画を見ている初子に目を奪われていた。
よそ見をしながらも、原作を読んでいたので内容にはついていけ、ラストシーンで僕は号泣した。初子も泣いていた。
そして、映画が終わった。
色々と感情が揺さぶられたのですごく疲労感があった。段々と緊張がほぐれてきたせいか、とてもトイレがしたくなり僕はトイレに向かった。
小便器の前に立つと、待ってましたと言わんばかりの大量のおしっこが出た。
おしっこの開放感で、僕の手元は疎かになった。
気づくとチノパンは温かく、右足の大部分におしっこがかかってしまっていた。
最悪だった。
ベージュのチノパンは濡れたことがとても目立つ。
どうやっても誤魔化せないと悟った。
左足に水をかけ両足を濡れさせることで
カモフラージュすることも考えたが、
両足が濡れていること自体キモいので断念。
逆に正直に言うことも考えたが、初恋の相手に
そんな恥ずかしいことを言うのは、思春期の僕には無理だった。
苦し紛れで、トイレットペーパーで
極力おしっこを吸収させるという案に決まった。
トイレットペーパーを丸め、必死に右足を叩いた。まるで自分を鼓舞しているようで勇気が出てきた。
そして、何とか暗いところであれば
ギリギリアウトくらいの濡れ具合になり
初子が待つベンチへ向かった。
「ほんとごめん。おまたせ。」
「ううん。そんな待ってないよ。笑」
よかった。
どうやら初子はおしっこに気付いてない。
そこからは、常に初子の右側に立ち
濡れた右足を隠すことに徹底した。
そして何とかバレずに乾かすことに成功した。
その後は、アクシデントがあったせいか
最初の緊張が嘘みたいにリラックスして会話ができ、夜ご飯を食べて家に帰ることになった。
僕の家と初子の家は近かったので
家まで送ることにした。
初子の家が近づくにつれ
なんだか別れ惜しくなってしまい
少し公園で話すことを提案した。
ベンチに腰掛け2人で話す。
今日一日楽しかったねと言いあった。
30分くらい話したあと
「少し眠くなって来た」と初子が言った。
なぜか、咄嗟に僕は「膝枕しようか?」と言った。
「じゃあ、お願いしようかな。」
そう言いながら初子の顔が僕の太ももに向かって来たとき、不思議とスローモーションに見えた。
そして僕は気づいた。
やばい。
今顔がつこうとしてる右足は
めちゃくちゃおしっこがかかったところ。
乾いたことを良いことに、この事実を忘れていた。
どうする?避ける?
いや、もう間に合わない。
そうして初子の頭が僕の膝の上に乗った。
俺の初恋が終わった音がした。
きっと次の初子の言葉が、僕に対する
「THE LAST MESSAGE 初子」になると思った。
そして初子は言った。
「ズボン DiceK君(僕)のにおいがする。」
予想外のコメントすぎて僕は吹き出した。
あ、俺って元々おしっこの匂いしてたんだと思った。
確かに小便くさい16歳ではあったが
普段から本当のおしっこの匂いがしていたとは気づかなかった。
そうして僕は、人生初デートを無事終了し、
事なきを得たのだった。
とは言え、16歳の女の子をおしっこの上に
寝かせたのは罪深い。
初子へはいつか再会した時、
心から謝罪したい。
皆さんもおしっこのコントロールには
くれぐれも気を付けてほしい。
初恋とおしっこ 完
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