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暴走族の前世は戦国武将

真夜中になるとよく、バイクの大きなエンジン音が聞こえてくる。もちろん大きいとはいえ、それは遠くの幹線道路から来るものなので、実際には虻の羽音ぐらいの音量ではある。しかしとにかく、真夜中でもあるし迷惑な音だ。

これらの音は、自分とは一切関係のない世界からやって来るような感じがする。なぜなら、僕はバイクで暴走どころかバイクに乗ったことすらないし、そういうことをするガラの悪い友達もいない。彼らはどんな日常を送って、どんな社会を築いて、どんな価値観で生きているのか。僕にはぼんやりと想像することしかできない。

僕は、暴走族の前世は戦国武将だったのではないかと思う。なぜなら、彼らの社会は強烈な縦社会だというし、建前をものすごく重視するらしいし、度胸といったものを大切にするらしいし、何よりもバイクに跨って暴走することがその証拠だ。バイクというのは、戦国武将にとっての馬だ。エンジン音は嘶きだ。彼らはきっと、前世では勇ましく敵の首を取ったりして活躍していたのだろう。

残念ながら(残念ではないが)今の世の中は乱世ではないので、彼らのような人種に居場所はない。闘争本能をぶつける相手もおらず、行き場のないそれらを溜め込んでは、夜の道路をひたすら駆けるしかない。

彼らは夜に追いやられている。追いやったのは今の社会だ。だから彼らだって、好き好んで僕らの睡眠を邪魔しているわけではないのだ。

まあ、普通にうるさいのでやめて欲しいが。

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