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詩: 6 BPM 94
BPM 94
堂々巡りの噂話に
あの子があくびをしている夜は
身のほど知らずの予言でいっぱい
危険も時計も見えなくなって
神さま気取りの誘惑者たちは
煙草とお酒を内臓に詰め
ライブハウスは楽園を真似て
朝焼けが来てもふるえ続ける
退屈な嫉妬
回復してきょうも
こころばかりが汗ばみだして
からだは夏でもいつも冷え冷え
エアコンの風はたぶんおそらく
毛細管にはよくな
詩: 5 手は待っている
時の道行きのどこかの岐路で
ぼくらと君らが逢うことがある
君らが来たのはじつにけわしい道だっただろう
ぼくらもおなじだ
それが、君たちのよりもけわしかったとは言えないが
ただぼくらには これからいっそう
けわしい道が待っているのだ
君らに会えたのは僥倖だった
なによりもいとおしい偶然だった
けれどわれわれは ことさらなれ合うこともせずに
ただ互いに礼節と敬意を贈り
なごやか
詩: 2 夜がはじまるとともに、全員が姿を消したのだ
夜がはじまるとともに、全員が姿を消したのだ
線香花火の吐き棄てる、あの
呪文のような
遺言のような
宣誓のような
熱くおさない赤 と同様
散り散りに走り
不可視の紙面に吸い取られていく
それが人であるならば
誰かが
わたしか
あなたか
それともまたべつのあなたでもいい
誰かがそれを取りもどさなくてはならないが
それがもし、言葉であったなら
一瞬だけ
ひそかに光って