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"普通”の大学生活を送れなかった、2020年度入学者20名がつくる20の物語。展示プロジェクト「20³展」に込められた思い

2020年。コロナと共に大学へ入学。そこに待ち受けていたのは、私たちが思い描いていたものとは遥か遠くかけ離れた学園生活でした。入学式は中止になり、新入生研修も授業も何から何まですべてがオンラインでスタート。作品をプレゼンしても、もらえるのは画面上の「いいね」だけ。そこから2年が経過し、ようやく対面授業が増え、やっとみんなと会うことができました。過酷な時期を乗り越えてきた20人の学生が、葛藤や情熱をこめた作品を今、お見せいたします。

https://camp-fire.jp/projects/view/632857?list=projects_popular

デジタルハリウッド大学(DHU)の在学生有志による展示プロジェクト「20³展」。20「20」年度に入学した「20」名の学生が、それぞれ「20」枚のキャンバスを自由に展示する展示会、それが20³展です。

集まった作品は実に401点。学園祭2022のnoteでもご紹介したように、壁一面に20名の作品が展示される光景は見ごたえがありました。

「私たちは、作品を見てもらう機会が少なかった世代。いろんなものを我慢して溜め込んできた世代なんです」

そう語るのは、20³展を企画した篭橋映水(一畳一間)さん、とっぷりさん、mndさん。2020年4月にデジタルハリウッド大学に入学した3年生で、入学当初からコロナ禍で大学生活を過ごしてきた世代です。

note取材班は、DHUの学園祭内での展示と、2022年12月に東京神田「高架画廊」で行われた外部展示に直撃取材。プロジェクトが生まれた経緯や展示に込めた想いを聞きました。


作品を発表しても、もらえるのは「いいね」だけ。20³展はそんな悔しさからはじまった。

——20³展を企画した背景は?

とっぷり:入学当初から2年間学校にほとんど通えず、同学年とのつながりもオンライン。作品を見てもらう機会も少なく、オンラインで見せても、周りからの反応は画面上の「いいね」だけだったんです。

一畳一間:いわゆる“普通”の大学生活は送れませんでした。授業後にだべる時間も、カフェテリアでご飯を一緒にする機会がなかった私たちは、Zoomで交流をとったり、SNSでつながったりして、ほかの学生と知り合っていきました。

そのなかで思ったことは、私たちの学年には、すごいものを作れる人が多いということ。歴代の先輩にも負けず劣らず、良いものを作っている人が多いと感じました。ただ、とっぷりも言ったように、私たちは作品を見せる機会に恵まれなかった。それって悔しいねってこのメンバーで話したことが20³展のはじまりでした。

▲20³展の企画者、左から一畳一間さん、とっぷりさん、mndさん。

——展示内容について教えてください。

一畳一間:グラフィック・写真・3DCG・企画など、得意分野が異なる20人が、「自分」「人間」「正義」「遠近法」など共通のテーマで20個ずつ作品を持ち寄りました。力が有り余ったメンバーが21個作っちゃったので、全部で401枚になったんですけど(笑)。

▲入口に飾られていたテーマとアーティスト一覧。作品テーマは出展アーティスト一人ひとりが考えた。「手」という体の具体的な部位から「正義」という抽象概念まで、さまざまなテーマが並ぶ。
一畳一間さんの作品。並び順は上のテーマ表と揃えられており、左上から「自分」「自分に勇気をくれるもの」「わたしのじかん」と作品が並んでいる。
▲「作るうちに、やってみたい表現が湧いてきた」と話すNikayanさんは、立体から抽象表現、人物まで、テーマにあわせて多種多様な作品を仕上げた

mnd:一つの同じテーマに対して20個作品が見られる、1人の作家の作品が20個同時に見られるという点で、ユニークな展示になったと思います。

作り手としても「このテーマ、こんなふうに解釈できるんだ!」とか「こんな表現もできるんだ!」とか、1人では絶対思いつかないような作品がたくさん見られて、いいインプットの機会になりました。

よしほさんの作品。テーマ=属性と解釈し、その属性を付与した「女の子」を描いている。よしほさん自身のお気に入りは「悪魔」の作品(左、下から2列目の作品)。
▲テーマにあった花言葉をもつ花を描いたというオキナさんの作品。淡いタッチで表現された20枚の作品には、統一感がある。
かねこ映像さんの作品。「絵は上手に描けないんです」と話すかねこさんは、キャンバスに映像を投影するプロジェクションマッピングの作品を展示した。

専門が異なる学生が集まるDHUだからこそ、自由で多様なアウトプットに。

——作品のフォーマットが10cm×10cmのキャンバスに統一されていたのが特徴的でした。その意図は?

とっぷり:たまたまなんです(笑)。そもそも、展示やろうよ!という話自体、私たち3人がお泊りしているときに勢いで言い出したことで。作品のフォーマットを指定するのも「じゃあどんな展示にする〜?」と妄想を膨らませているときに、私の家にあったこのキャンバスがたまたま目に入って。

このサイズの作品が、壁一面に展示されていたらおもしろくない!?」とアイデアが湧いて、それで1人20点、20人で400点の作品を作ろうという企画になりました。

とっぷりさんの作品。「色が好き」だと話すとっぷりさんは、テーマから受けた印象を素直に作品に落とし込んだという。
白鳥優季さんの作品。キャンパスを使うのがはじめてだったという白鳥優季さんは、「画材やテーマなど縛りがあったほうが、自分のいいところを出せると気付いた」と話す
▲湯。さんは「可愛いのなかにある混沌」をコンセプトに作品を仕上げた。可愛らしいタッチのなかにもにどこか不安を感じる

——20人のメンバーはどのように集めたのでしょうか?

一畳一間:SNSに作品を積極的に投稿している人に「展示、一緒にやらない?」と声をかけていきました。

とっぷり:普通だと声をかけるのって結構ビビるんですけど、同じ学校で、同じ学年だったから声をかけやすかったよね。ほとんど喋ったことがない人もいたんですけど、まぁなんとかなるだろうという気持ちで(笑)。

mnd:結局なんとかなったし、各々が自由に表現してくれてよかった。いろんな作品が集まって、DHUらしい展示になったように思います。

▲「絵も写真もできない自分が、なんでこの展示に誘われたか分からなかった」と笑うみやびさんは、その発想力で特異な作品を完成させた。みやびさんは一つひとつの作品背景を個人noteにまとめている。
▲「参加してから気づいたけど、20点作品作るってめっちゃ大変」と話すのは、抽象表現を得意とするぱうちゅるさん。「自分では絶対選ばないテーマで作品作りをできたのが楽しかった」と語った。
ととりさんの作品。写真とイラストを組み合わせてテーマを表現している。

——20人という大人数が集まって行う展示とあって、大変なこともあったのではと思います。

一畳一間:語りきれないくらい大変でした(笑)。企画発案から4ヶ月間準備を進めてきたのですが、そのなかで人に声をかけて、みんなの進捗を管理して、展示スペースを借りて、備品を購入して…みたいに自分たちだけで展示をやろうと思うと、これほど大変なんだなと実感しましたね。

買おうとしたキャンバスが売り切れになっている!というハプニングから始まって、展示初日なのに作品が集まってない!と、最後までトラブル続きでした。

とっぷり:私とmndは、DHU生が集まって展示を行う団体HAT.に所属しているので、展示には慣れていると思っていたのですが、団体のなかで行うのと、自分が主催者となってやるのとでは、難しさが段違いでした。

▲外部展示は、2階建ての展示スペースを貸し切って実施。企画から設営、広報まで学生のみで行った。
▲りんごょさんの作品。20³展がはじめて参加した展示になったというりんごょさんは、「展示をみんなで作り上げる機会に参加できて本当に嬉しかった」と話す。
mndさんの作品。すべて「手」をモチーフに作品を仕上げた。

mnd:そんななかでもやりきれたのは、やっぱり20³展に参加してくれたみんながいたからで。最初は結構怖かったんです。大丈夫かな、最後までみんな付き合ってくれるかなって。

一畳一間:そうだよね。一人20点の作品を作るとあって、1人にかかる負荷も大きいので、全員がちゃんと作品を仕上げられるかは正直不安でした。

でも、自分の作品を作るだけでなく、「何か手伝えることある?」と声をかけてくれる人がいたり、ロゴやコピーをお願いしたら快く引き受けてくれたりする人がいて。準備に追われるなかで辛いと思うことも多かったんですけど、みんなに救われていましたね。

作品も、展示当日ギリギリではありましたが、最終的には401点集まって、いろんな人が見に来てくださって。最後まで20人で駆け抜けられたことが本当に嬉しいです。

こむぎさんの作品。キャンバスをInstagramの投稿に見立て、フィルムカメラで撮影した作品を展示した。
▲作字を行った、髙山友輝さんの作品。テーマにあわせて、文字だけでなく、下地のテクスチャ感も変えている。
▲展示には、多くの人が訪れた。来場者に作品を説明することを通して感じることもあったと20³展に参加したメンバーは話す。

「言葉を形にする難しさを実感した時間だった」展示を終えて感じたこと。

——展示を終えたいまのお気持ちを教えてください。

一畳一間:代表として思うのは、みんな大好きだな、っていうことです。

短い準備期間で400点もの作品を作って展示するという、めちゃくちゃ無謀なことを言っているのは、自分自身もわかっていたんです。でも、そのなかでもみんなちゃんとやりきってくれたことが嬉しくて、みんなと展示が行えてよかったと思います。

mnd:私は最初、どんな展示になるのか想像つかなかったんです。400点の作品ってイメージできなくて。だから、学園祭で展示されたときには「あぁこうなるんだ!」と驚きましたね。自分では想像もできなかったものが、目の前に現れたことに感動しました。チームで展示する魅力を感じましたし、ほかの学生と仲良くなれたことも嬉しかったですね。

▲並んだ作品を見ると、1枚ずつ見るのとは異なる迫力がある。空間全体がひとつの作品になるような展示だった。

とっぷり:私は今日の朝、家をでたときから寂しかったです(笑)。うわー、もう終わるんだ!と思って。

とっぷり:「やりたいね」と話していたことを、本当に実現できたことが、人生において初めてだったんです。口からでた言葉を形にしていくのって、すごく大変なことなんだと実感できたこと。それでもやりきれたこと。そんな経験を今積めて、本当によかったなって。20人みんなに超感謝しているし、この20³展がみんなの自信にもつながればいいなとも思います。

▲人生3週目さんの作品。「HAT.」の毎日投稿コーナーに掲載していた作品に加え、20³展のために10点ほど制作したという。
▲豪運さんは「今までDHUで培ってきたものを絞り出して、自分の履歴になるように作った」と制作背景を語る。
▲「自分の集大成ともいえる作品になった」と話すのは、結城さんのA面さん。悔いが残らない表現を、と考えながら作品を作り上げたという。

一畳一間:うん、本当に。20³展には呼べなかった同学年のなかにも、すごい人はまだまだたくさんいるので。今後もDHUの人をみなさんに知ってもらう機会を作れたら嬉しいし、そういった企画のなかでもっといろんな人と知り合っていきたいし、何かを作りあげていきたいです。

▲20³展最終日の1枚。最初は緊張して口数も少なかったというメンバーだが、もうその様子は見られない。
▲DHU学園祭での内部展示、高架画廊での外部展示。計5日間の展示を行い、20³展は幕を閉じた。

20³展のように、DHUで知り合った仲間と、展示を行ったり、チームを作って活動したりする学生が多くいます。その関係は、大学を卒業しても続き、なかには、エンターテイメント・クリエイティブ集団として名をあげるチームも。

DHUには、人生をかけて表現に取り組む学生と先生が集まります。その人たちとのつながりは、きっとあなたの作品を、あなた自身を変えるはず。

「すべてをエンタテインメントにせよ!」というDHUの精神に共感される方は、ぜひ一度当校のオープンキャンパスや説明会にご参加ください。

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