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「三人称単数点」を開催したクリエイター集団"HAT."。ゆるい連帯感でつながる、その関係性とは。

私以外、あなた以外は、また誰かの誰以外である。
誰以外であるからこそ、誰かの新しい”目”になれる。
(三人称単数点・メインコピーより)

デジタルハリウッド大学(以下、DHU)のクリエイター集団・HAT.(ハット)は、2020年10月8日から20日の12日間、横浜・ハウスクエア美術館にて「三人称単数点」を開催しました。

このnoteでは、HAT.に所属するDHU在学生の藤田モネ、Fumikaと、同じくHAT.に所属し、DHUでは特任教授をつとめるアーティスト・HAL_(ハル)に、今回の展示会のお話や、そもそもHAT.とはどんな集まりなのか?というお話を聞いていきます。

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▲Fumika(左)藤田モネ(中)HAL_(右)

「作品は、飾ると見え方が変わる」というところに立ち返る、三人称単数点

ーーこのたびは「三人称単数点」開催おめでとうございます。本日はよろしくお願いします。それでは簡単に、HAT.について教えてください。

モネ:HAT.というのは、デジタルハリウッド大学のアート作品の制作・展示を行う集まりです。

HAL_:デジタルハリウッド大学では「Photoshop」や「Illustrator」といった、グラフィック系のアプリケーションを使う機会が頻繁に訪れます。ですが、必修授業としてPhotoshopに触れる機会は1年生の最初の頃に限られます(編集部注:グラフィック系の授業では2年生以降も使用します)。その結果、授業や現場でいざ使おうとしても使いこなせないという声が多かったのです。そんな学生たちにスキル習得のケアをしたいと思い、個人的な取り組みとしてクラスを開いていたんです。

実際に作品を作りながらアプリケーションを使いこなしていくのですが、せっかくアウトプットができたんだから学祭で展示しようよ、というのがHAT.の走りですね。そこからメンバーが増え、本格的にクリエイターとして制作・展示を行う集団になっていきました。

ーーもともとは勉強会のような集まりから始まったんですね。ちなみに、今回の「三人称単数点」という名前の由来は何でしょう?

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モネ:きっかけは、HAT.のメンバーがミーティングの中で発言した「最近は家庭教師のバイトで三人称単数とか教えてて〜」という言葉がなんとなく響きのいいフレーズとして残っていたこと。

わたしたちは作品を作っている最中はそれと向き合い、二人称のように関わります。ですが、展示した瞬間からは「展示物」として、作り手にとって三人称の視点で関わる存在になっていくんですね。

今回の会場は一軒家。そういった場所に展示することってなかなか無いので、普段デスクトップやアトリエで作っているときの感覚と、そこに飾られたときの感覚の違いをより楽しめるのではないかと思って、このような展示名にしてみました。

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▲会場での視点を得て、さらに描き込みを行うモネ

ーーたしかにモネさんの作品は巨大なものが多く、作っているときとどこかに飾ったときでは作り手としての印象は大きく違いそうですね。

モネ:はい。普段は自宅の作業部屋で制作しているので、描いている最中は、私の視野に入る部分しか見えていないんですよね。やはりこうやって飾ってみると自分の作品であるにもかかわらずまた違った印象を受けますね。たとえば、「描いてるときはここ好きだったけど、飾ってみるとここも意外な見え方をしていていいな」とか、自分の作品でありながらも「誰か」の目線で捉えられるなと感じています。

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▲自分の身長よりも大きい作品も

「ゆるい連帯感」で、自然とバランスのとれていく組織

ーーところで、この展示はモネさんを含めどのようなメンバーが運営しているのですか?

モネ:ここにいるFumika、HAL_先生、他にも学外の人も含めて15人くらいでやっています。DHUだけではなく、ムサビ(武蔵野美術大学)や藝大(東京藝術大学)の人も参加しています。

ーーメンバー同士はどのような関係性なんでしょうか?

HAL_一言で言うと「なんとなく構築された、ゆるい連帯感」のようなものでつながっている集まりですね。誰がどういう役割を持っている、とかではなくて、自然とエネルギーのバランスを取りながら各自が動いているというか……誰がコアメンバーとか言う感じでもなくて。

Fumika:それぞれがやりたいことをやっていて、時折「やらないといけないこと」が出ても自然と誰かがそこに流れていくということが起こっています。それぞれが空気をつかんで動いているような。

モネ:変な縦っぽさがない関係性で、居心地がいいです。私は1年生のころからHAT.で活動していますが、当時からなんとなく展示を引っ張る人が必要そうだな〜というときにたまたま展示の知見をもっていた私がリーダーシップをとったり、その中で発生した「やらないといけないこと」は先輩後輩問わず手伝ったりというのが当たり前の関係性で。

ーー自然とバランスがとれていくってすごいですね。HAL_先生と学生も、先生と学生、という感じではないですもんね。

HAL_縦の関係性はないですね。私はアーティストとして年長者ではあるので、メンター的な立ち位置にはなりがちですが、まあそれも自然と見つかった私の役割でもありますし。

モネ:なんだろう……師匠……?仲間のおじさん?

HAL_:ダジャレも教えてるんだけどな。

モネ:「ああ、ダジャレだなぁ」と思っています(笑)。

HAL_:縦の関係性がないというのはこういう感じです(笑)。

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展示ができなくても、作品作りを止めない。Drawing Hat Homeのスタート

ーーちなみに、2020年はHAT.の活動にもいろいろ影響があったのではないかと思うのですが。

Fumika:そうですね。4月以降に予定していた展示会は全て取り止めになりました。でも展示会がなくても作品は作り続けたくて、そういう思いで始めたのがDrawing Hat Homeという企画です。

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▲展示会ではDrawing Hat Homeの作品も印刷されて展示された

Fumika:これは、メンバーが作品をリレー形式でSNSに投稿するという企画です。ルールは1つ、「作品のお題は、前の人の作品」。タイトルや画風、キャプションなどからインスピレーションを受けて作品を作るという形式の作品投稿企画です。

モネ:1日のうちにあげないといけないっていう。結構ハードな企画です。

Fumika:前の人があげないと作れないし、自分が作らないと次の人がつくれないので、責任がけっこう大きいですね。でも、1日限りの即興的な制作として色々試してみる人もいたりして、みんなそれぞれに楽しんでいます。

ーー展示の機会が減っても、活動は止まっていないんですね。新入生が入ってきたりもしているんですか?

Fumika:今年入ってってくれた人はすごくて……たとえばDrawing Hat Homeって、けっこうスピード感のあるリレー企画なので「今日誰だっけ」「明日誰だっけ」「担当者把握してる?忘れてない?」みたいなことが起こってしまうんですが、それらをスプレッドシートで管理しつつ、Slackでアナウンスしてくれるbotを組んでくれたり。

モネ:そういう風に、アーティストに限らず、アーティストを支えたい人も集まってきていて、いいチームになってきているなと思います。

友人でありながら「プロジェクトパートナー」という関係性

ーー上下関係があまりないのは承知の上ですが、あえてHAL_先生に年長者として、モネさんやFumikaさんがどのように見えているかお伺いしたいです。

HAL_:そうですね、まず、モネはみんなを引きつける存在ですね。作品を作って、背中を見せて、「ああこうならなければ」という思いがほかの学生の中に自然に芽生えていくような。ハチャメチャですけどね。

Fumikaは、モネの思いの部分を言語化して、はちゃめちゃなクリエイターとは対照的。そこがまたいい関係性ですね。モネが自然とリーダーシップをとっていくことが多いのですが、それを支えている存在のように見えます。

ーーお二人はもともと仲が良かったんですか?

モネ:はい、友達です!

Fumika:友達・・・?

モネ:友達でしょうが!!

Fumika:(笑)。もちろん友達という前提のもとで話しますが、関わりができたのはそれこそHAT.に参加したあたりからで。HAT.があって、HAT.のプロジェクトの中で関わることが多く、プロジェクトパートナーのような存在でもありますね。

モネ:本当に助かる。マネージャーみたいな役回りもしてくれて。

Fumika:やっぱりHAT.の中での立ち回りってそうかなというか、がむしゃらな人がいると、いい感じにしてあげたいなって。いつもはのんびり作品作ったり、お酒飲んだりしてます。

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▲プロジェクトパートナーのような関係性でもあるFumikaとモネ

ーーそれぞれがアーティストでありながら、風呂敷を広げる人と畳む人のような関係でもあるんですね。

アーティストとしての、それぞれのこれからの在り方

ーー今後は、どのような活動を考えていますか?

モネ:時流に乗ってといいますか。面白いことって移り変わっていくものだと思っているので、常に面白そうだと思ったことにはどんどん手を出して、作品作りはもちろん、誰かの手に取ってもらえるような形にもしていきたいなと考えています。

Fumika:私もグラフィックデザインは続けていきますが、HAT.を通してだったり、ビジネス系の講義を受けて企画や運営といった方面にも興味がわいてきています。やっぱり、こういう場にいると人と関わることの楽しさを感じることができるというのはありますね。

HAL_:私は元々クリエイター支援の活動をやってきていたので、その文脈で若者のために土壌を整えるような役割でいたいな、と思っています。もちろん、自分の作品も作り続けます。

ーークリエイターであることが前提にありながらも、それぞれの在り方が違っていて面白いなと思います。最後に、HAT.に興味を持った人にメッセージをお願いします。

モネ:たとえば作品作っても発表する場がない、自己満足で終わっちゃう、そういう人ってたくさんいると思います。そういう人が、一歩外に出るきっかけを作れる場だと思います。

制作において、孤独な作品づくりに終始していると、自分と世の中のクリエイターの比較をしてしまうこともあると思います。そんな自己評価に終始している人ほど、誰かの評価を得てみてほしい。誰かの評価を得て自分の作品のよさを認識できることってたくさんあります。HAT.の活動を通じて、そんな機会を得てもらえれば、と思っています。

Fumika:あとは、コロナ禍もあって人との関係が希薄になってはきていますが、コミュニティ活動を通して人とつながることの良さも伝えたいですね。ゆるい団体ではありますが、興味を持ってくださった方は是非、毎週ミーティングを開催しているので、飛び入り参加してみてください。私たちは皆さんを歓迎しています!

ーーありがとうございました!

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HAT.の活動に興味を持っていただけた方は、是非以下のフォームよりお申し込みください。学内外・専門分野によらず、オンラインでの見学を受け付けています!


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