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出来事のために

詩誌「潮流詩派」202号掲載作品(タイトル改変)


誰もいない街路で
半透明の貝殻を握りしめる
音も光もない部屋で
玩具を捨てる
テレビが点いて
消えた
夢の中で
子どもが叩かれている

砂浜から鳥が飛び立つ
これら言葉たちに
私は再び出会った
あたかもデ・キリコの描く 
予感に満ちた街角で
自転車に乗った物言わぬ少女に
偶然出会ったかの様に
これら言葉たちに
私は暫くぶりの挨拶を交わす
もしこの挨拶が
私だけの思い過ごしだったとしても
それは誰かの心の奥底から
確かに生まれてきたものに違いない
もし窓辺から
何も見えない時があったとしても
そこには
彼方から到来する言葉が待っている


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