マスメディアとその影
初稿2013年(一部改変)
彼女はみずからの身体を
数知れない他の者たちに惜しげもなくさらけ出し
切り売りしているように見える
だが
彼女はその身体を
みずからの手の届かないところに投げ与えることで
手離してしまうのではなく
むしろ数知れない他の者たちを介して
取り戻しているようにも見える
それこそが
若き日の彼女にはできなかったことなのだろう
それは
彼女が生身の身体を生きながら
それを見る者たちが
彼女にとって匿名であり続けるメディアを介してしか
彼女がなし得なかったことだ
それは彼女にとって
なにかの終わりなのか?
それとも──
なにかが終わったあとの静けさを包み込んだ喧噪のなかで
ひとり街を歩きながら
ひょっとして誰かに出会うのではないかと予感した
そのあとで
誰にも会わずに
誰も待つことのない部屋で
いま
彼女は
かつてないほどなにかを待ち受けている
いつか
遠い日に感じた薄明の大気の冷たさが
ゆっくりと街路を這いながら
部屋の窓を通りぬける
もう思い出されることはない幾つかの記憶が剥がれ落ち
かき消されながら
彼女の身体のどこかに
降り積もっていくそのなかで
実はこの詩はなぜかわからないが壇蜜のイメージが湧いてきて出来上がった作品である。
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