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【退院】うつ病入院生活 70日目〜ふりかえり〜


【6:00 起床】

眠れたな。
中途覚醒せずにこの時間なんていつぶりだろう。

いや、した気もするな。

トイレに行かなければ寝続けられるのか。

今更そんなことを知るのか。


前日に決めていた服装に着替える。

タイダイのTシャツにデニム。

誰もわたしがうつ病だとは思うまい。  


部屋の片付け、最後の仕上げ。

ベッドのシーツを取って畳む。

下着類をバッグにしまう。


顔を洗ってスキンケアを終わらせる。

スキンケア用品をしまう。

化粧までやろうかとも思ったけど
眠気が襲ってきた。


シーツがないベッドで
足は下ろしたまま上半身だけ乗せて寝る。



【8:00 朝食】


最後のごはん。


オクラのみそ汁、ごはん、レンコンと豆のサラダ。


16歳の子が起きてこない。

20歳の子は最近しんどすぎて食欲がないらしい。


不安がよぎるけど
私は心の中で応援することしかできない。

無力だ。


16歳が起きてきた。


部屋にごはんは運ばれているはずなのに
持ってない。

理由を聞くと
とりあえず私が共有フロアで食べているか
気になって見に来たらしい。


大丈夫かな。
これからやっていけるかな。


【8:30 歯磨き】


16歳の子が食べ終わるまで
近くにいてほしいと言われたので
歯磨きは共有フロアにある洗面台を
使うことにした。

ただ歯磨きをしてるので話はしない。

近くにいるだけ。


食べ終わった。

一緒に部屋に戻る。


【9:00 朝身支度】


最終日に気合いが入ってると思われるのは
恥ずかしいから化粧は薄め。

2カ月以上入院したくせに
そんな小さいことを気にしてる自分にハッとする。


髪はいつもより上の位置で少なめの量をお団子に。

ちょっと若く見える。気がする。


【9:20 手紙を渡す】


20歳の子に手紙を渡す。

思ってたよりすごく驚いていて
表情がパッと明るくなった。


『うれしい!ありがとうございます!!』


彼女はこの2週間くらい隔離室に入っている。

日中は共有フロアに出てこられる決まりに
なっているものの

明らかに前より表情が暗くて
しんどそうにしている時間や頻度も増えている。


前に比べると
自分がしんどくなってくるのが分かるそうで
自ら看護師さんに申告して
隔離室に戻ることもある。


前に見かけた時は涙が頬をつたっていた。


そんな彼女の笑顔を見たのは
本当に久しぶりだった。


素直にとてもうれしかった。

一瞬だけでも彼女の心に幸せが生まれたなら
手紙を書いた価値がある。

またどこかで会えるかな。

心が優しい彼女があたたかい人と環境に囲まれて
健やかな人生を送ることができますように。


この病院に来てこんなに人の幸せを願うことに
なるとは思ってもみなかった。

でもこれも私の性格なんだと思う。


人のこと気にしとる場合じゃないやろ。

というセルフツッコミは何度かやったけど
やっぱり気持ちはそう変わらないもんで。


自分で選べない環境で苦しむ
若者や子どもたちを見るのは辛い。

もっとそういう子たちに光があたる時代が
早めに来ればいいな。


【9:40 看護師さんに挨拶】


あんまりこの病院で退院する人が
挨拶とかしているのを見たことがない。


だからどう思われるか分かんないし
やめとこうかな。

という気持ちも湧いたけど
あとで「あの時ああしておけば…」は
あまりにもせのび山あるあるなので
勇気を振り絞って。


やはりやってみると
皆さん快く対応してくれる。(そりゃそう)


本当にお世話になりました。


【9:45 !!!】


『せのび山さんきょう何時退院ですか?』


まさか部屋に訪れたのは…推し!


「10時です」


『じゃあグループセラピーは来れませんね
 わっかりました〜』


部屋を去ろうとする推し。。。


「あ、あの…!!!」

『ん?』


「お、お、お世話になりました!!!」


『あ、こちらこそ。
 お大事にしてください』





ウォオッオッオー

イェーイイェイイェー

ウォオッオッオー

イェイイェッエー

(love so sweet/嵐)


伝えきれぬ愛しさは
花になって病院に降りました。


もう悔いはないね。

うん。間違いない。

生きていけるね。

人生100年時代かかってこい。


【10:10 夫到着】


9:40に起きたと連絡をしてきた夫。

頼むから急いで来てくれ。


さっき悔いはないと言ったが
1人退院後の生活に目を向ける
きっかけを与えてくれた看護師さんに
挨拶をしていない。


ここでまた勇気を振り絞って
荷物を一緒に下ろしてくれていた看護師さんに
「〇〇さんに挨拶がしたいんです!」と
思い切って伝えると走って来てくれた。


その看護師さんのおかげで
退院後の準備をしようと思って
髪も切って、化粧もするようにした。

復職のイメージもわずかだけどトライした。

本当に感謝している。


『ぼちぼちですよ。
 お大事になさってください』


「おめでとう」とか「頑張って」と
言わないところがこの看護師さんらしい。


ありがとうございました。



【23:44 今の気持ち】


70日。

短いような長いような時間。

ただ私にとって本当に本当に必要な時間だった。


入院したての時はとにかくしんどくて
人の心配なんてしてられない、
黙々と自分のことだけをこなして
他の人とは極力関わらないようにしていた。


作業療法はほとんど参加した。

最初は一つのものに手を出したら
時間内に終わらせようと必死になって
疲れていたけど

途中から自分の体調を優先できるようになった。

集団の散歩は可愛い馬に元気をもらった。

ある時から急に撫でさせてくれるようになって
みんなから『慣れてますね』なんて言われて
うれしかった。

大好きなOTさんと話せる貴重な時間でもあった。

他の看護師さんや患者さんとはできない
たわいもない話でゲラゲラ笑った。

その時間は誰がどう見てもうつ病には
見えなかったと思う。


入院中はできるだけいろんなことに
挑戦しようと思って盆踊り練習にも参加した。


盆踊り練習なんていかにも
みんなが行かなさそうなものにチャレンジしたのは
人の目を気にしない自分になりたかったから。

まさかそんな壮大なテーマがあったなんて
誰も思ってないだろう。


最初は3人。

途中から私しか踊っていないという期間すら
あったけど自分のために楽しんでると思えば
もうそれで満足だった。


グループセラピーでは
できるだけ一回で一度は発言するように心がけた。

時には言うことを入念に考えていくこともあったし
しんどい時はまとまりがない気持ちを
そのまま打ち明けたこともあった。


患者さんとの出会いも貴重だった。


同年代で同じ病気の患者さんと出会い
仲良くなって散歩したり
テラスで話したりしながら
ゆっくりと将来のことをぼんやり考えて
お互いを励まし合った。


夫との関係に悩む人生の先輩の話を
聞いたこともあった。


大学受験を控える男の子に
偉そうにアドバイスをしたこともあった。


患者さんと話すことで問題意識も芽生えた。


自分よりその子たちの心配をしてしまって
眠れなかったり体調が少し崩れることもあった。


でもちゃんと自分で考えて距離を取ったり
自分の意思を優先することも大事にして
接することができるようになった。


そして入院して一番よかったことは
自分としっかり向き合うことができたこと。


この期間noteをはじめ
とにかく細かく自分の感情と向き合い続けた。


自分がモヤッとしたこと、不快に思ったこと、
しんどいこと、苦しいこと、素直でいられること。


それらが自分のどんな動作とつながっているのか
環境はどうだったのかを分析した。


それによって28年間気づかなかった
いろんなことに気付くことができた。


きっとあのままずっと家にいたら
辿り着けなかった答えもあったと思う。


先生も診察のたびに励ましてくれた。


『よく頑張ってます』


自分と向き合うことがしんどいなんて
思ったこともなかったし知らなかった。


頑張った。この一言に尽きる。



今こうして退院のことをいい思い出として
振り返ることが出来ているのは
ちゃんと頑張ったからだ。


せのび山どんぐり、よく頑張りました。


入院編はこれにて終了。


次は復職編だな。

もう少しゆっくりするけどね。


読者の皆さん、
いつもせのび山の自己満足日誌を読んでいただき
ありがとうございます。
今後も引き続きよろしくお付き合いください。

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