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Chapter 2 -資本主義社会の構造とデジタル化- (全8章)

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それでは以下に2章を記します。



2-1 お金の流れ、税金・利子の流れ
Flow of money, taxes and interest

 さまざまな投資において、私たちが投資している元手は「お金」です。また、ビジネスや消費によってお金がやりとりされると、そこには多くの場合「税金」や「利子」が生じます。
 図のように、政府や企業が資金調達をする手段として債券(国債、社債)があります。債券を発行し誰かに買い取ってもらうことで資金を調達(借入れ)します。

 債券の発行体はその見返りとして、満期までの期間、決められた利子の支払いを行います。満期時には、発行体が破綻しない限り債券の額面金額が払い戻される仕組みです。債券投資家は最終的に、当初投資した債券の額面金額と利子の両方を得ることができます。


 債券投資業界は参加者の99%が機関投資家といわれており、中央銀行やグローバル巨大銀行が保有する債券はとてつもなく大きいです。

 国債を発行した政府・国および、社債を発行した企業は、債券投資家に利子を払っているのです。


 この「お金の流れ」と「税金、利子の流れ」を構造的にとらえ、広い視野で俯瞰することが、これからの投資に大きく役立ちます。会社組織のように「上が言うことに従って動く」という側面は、資本主義社会にも存在しています。

 投資というのは、貨幣経済・資本主義社会の一部分へお金を投じるということです。

株式投資で例えると、個別銘柄の分析に没頭する以前におさえておかなければいけない重要なポイントです。ひとつ一つを深堀りして理解するのは大変ですが、まずは「この世の仕組み」を俯瞰してイメージだけでも掴みましょう。



2-2 グローバル企業の株主

 株式投資においては、投資先の株式会社の業績、将来性、割安感などさまざまな要素を調査・検討する必要があります。また、株式会社は株主の意見を無視して事業遂行することは困難です。

 グローバルな社会経済において、世界中で事業を行うグローバル大企業も多く存在します。聞き馴染みのあるグローバル大企業のいくつかを例に、その株主構成をみると、ほぼすべてに、ブラックロック・ヴァンガード・ステートストリートの3社が君臨していることがわかります。

 株式投資においても、本書で紹介するトークン投資(セキュリティトークン、ネイティブトークン)においても、この3社の動向は要注目です。


 下図はグローバル大企業の株式の上位保有機関投資家 (2023年9月時点)の一例です。

 他の大企業(軍事企業や製薬企業、飲食企業など各種)の株主構成をみても、上位ランクには世界3大運用会社が君臨しています。



2-3 現金は悪、デジタルは善

2-3-1 現金は隠せる、奪える

貨幣として紙幣と硬貨が存在しており、社会には多くの決済手段があります;

・現金
・クレジットカード
・小切手
・民間企業のポイント、マイル、商品券
・銀行振込、個人間送金


 現金をはじめとした多様な決済手段を巧妙に利用し、マネーロンダリングや脱税、窃盗、振込め詐欺など、お金の不祥事は後をたたず、いつまでも蔓延しています。このような犯罪は起きてはならないものであり、税を徴収する側からみれば、一刻もはやく撲滅したいはずです。


2-3-2 デジタルなお金であれば追跡できる

 脱税やマネーロンダリングのような不祥事を防ぐには「所有者が誰なのか」「どのような経緯で所有しているのか」をデータで追いかける環境が必要となります。

 ここでキーワードとなるのが「デジタルID」と「デジタルウォレット」、それを実現するための分散型台帳技術」(ブロックチェーン等)、「トークン」です。ブロックチェーンをはじめとする分散型台帳技術を使えば、取引記録をネットワークに残すことができ、その記録は改ざんが困難、という環境が構築できます。

 デジタルなお金の「価値交換の新たな台帳」として世界中で開発・検討が進められています。


2-3-3 仮想通貨とは分けて捉える

 2008年頃からビットコインが注目され、大幅な価格変動も話題となりました。また多くの仮想通貨(xxxコイン等) も登場し、メディアで一部の側面が取り上げられたことで、多くの人々がネガティブなイメージを抱いています。これに関連して、「分散型台帳技術」や「ブロックチェーン」、「暗号資産」「トークン」といった言葉にも大きな壁を感じる人が大勢います。

 しかしながら、本書で紹介しているように、お金の歴史、お金の流れ、税金の流れ、デジタル化されていく社会の流れをおさえていけば、分散型台帳技術やトークンに対するイメージが大きく変わることと思います。



2-4 デジタル化されていく社会

 1章で紹介したCBDC(中央銀行デジタル通貨)を例にすると、以下のように俯瞰することができます;

・社会は通貨を価値交換手段として成り立っている
→その通貨発行権は中央銀行がもっている
→各国中央銀行を束ねる国際決済銀行もCBDCを検討、推進している
→国際決済銀行、中央銀行がCBDCを導入すれば、世界の人々はCBDCを使わざるを得ない
→CBDCの利用を徹底するには、一斉にまたは徐々に、現金の流通量を減らしていく必要がある
→CBDCのようなデジタルなお金が普及する将来に向け、各企業は決済ソリューションの準備事業の転換を進めなければならない


 昔のように物々交換で成り立つ社会であれば、一部および一地域の権力者がCBDCを発行すると言っても、それを無視して生活が回ります。

 しかし現代のグローバル化した消費社会、資本主義社会においては、価値交換手段であるお金がデジタル化されることとなれば、ほぼすべての人々が「デジタルなお金」「デジタルな価値交換手段」に順応しなければならなくなります。オンラインショッピングやリモートワークが普及したように、デジタルなお金やトークン化経済も普及していき、順応することになるでしょう。



2-5 デジタル化社会に備える

 さまざまな投資をする方、または投資しない方においても、近い将来、デジタルなお金、デジタル化社会とは無縁ではなくなるでしょう。

 本書をきっかけに興味をもっていただければ、ビジネスシーンやプライベートでの生活、投資の面で役に立つことが大いにあると思います。小難しいキーワードについては、わかりやすく図解しておりますので、引き続き読み進めてください。まずはイメージでとらえることが大切です。


以上
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3章へつづく

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