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Chapter 1 -お金の歴史- (全8章)

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それでは以下に1章を記します。



1-1 「価値交換手段」の変遷

 お金(貨幣)がなかった時代に、人々は自分がもっている物と、相手がもっている物を交換して生活していました。
 例えば生ものの肉と魚を物々交換して食べたい物を手にしていました。「食べたいもの」そのものが価値交換手段でした。

 しかし生ものは長い期間保存ができません。

 そこで次に価値交換手段として登場したのがお米(稲)です。お米と肉を交換したり、お米と魚を交換するようになりました。
 これによりお米を生産する農家は「安定した価値交換手段」=「お米」を生産および保有できました。農家は田植えをがんばり、天候に恵まれれば、価値交換手段としてのお米を自分自身で作り出すことができたのです。

しかしお米を使った物々交換においても次の問題が生じます;
・お米は水に弱い
・お米は持ち運ぶのに不便


 そして次に価値交換手段として登場するのが金や銀、銅などの鉱物です。鉱物は採掘の手間はかかるものの、希少性があり、水にも強く、同じ大きさでも鉱物の種類や重さで「価値の大小」をあらわすことができます。

 この鉱物は各地域で力のある採掘者や支配者(そして政府)が採掘管理し、そして交換しやすいように形や重さを整えることで、その地域の価値交換手段として多くの人々も利用するようになりました。
 価値交換手段としての金や銀がたくさん採掘されると、多く保有する者、少ししか保有できない者という富の偏りが生じます。その富の偏りにより金や銀を奪われる事件にもつながります。

 そこで「金庫番」という役割が登場します。金や銀をたくさん保有している人や狩りや漁で遠くに一時的に離れる人は、保有する金や銀を金庫番へ預けるようになります。自分の金を預けた「しるし」として「金の預かり証」を金庫番が発行します。そして金を引き出したいときには、その預かり証をもっていき金庫番に「出金」してもらう流れが誕生しました。


 このような流れで現代にも通じる「価値交換手段(金)の保管業」が確立しました。金庫番はたくさんの金を保管しているため周囲から信頼されるようになりました。

次第に「Gold」を出金してから欲しいものと交換するのではなく、「信頼できる金庫番が発行した預かり証」そのものが価値交換手段となっていきます。この預かり証が「紙幣」の役割をもち各地で誕生しました。



1-2 貨幣経済の誕生

1-2-1 金融業の誕生

 金庫番は金を保管し、預かり証を発行する金保管業の中で手数料を取り、徐々に資産が増えていきました。金庫番はさらなる事業収益拡大をするべく、金の預かり業だけでなく、「利子付きで紙幣を貸出す」という事業を始めました。

これにより、金保管業よりも利益率の高い金融業が誕生しました。そして各地の権力争いや資産力の差によって金庫番の統合や吸収も進み金庫番の数も限定的となっていきました。


1-2-2 銀行が発行する紙幣の誕生

 ヨーロッパでは1661年にストックホルム銀行によって「銀行が印刷した最初の紙幣」が誕生しました。ストックホルム銀行は資産の裏付け無しに多くの紙幣を発行して金融業を拡大していきます。

 結果的には市民の多くが取付けにきた際、十分な資産を市民に返すことができなくなり、1664年には業務停止してしまいました。このストックホルム銀行は紆余曲折を経て、1668年にスウェーデン国立銀行(世界最古の中央銀行)となりました。


1-2-3 金本位制の誕生

 1816年にイギリスで「金本位制」が誕生しました。各国の中央銀行が発行した紙幣と同額の金を保有し裏付けとすることで、いつでも相互に交換することを保証するものです。中央銀行券=「発行上限のある価値交換手段」となりました。


1-2-4 管理通貨制度への移行

 1929年に世界大恐慌(The Great Depression)が起こり、経済立直しのために多くの紙幣が必要となりました。しかし金本位制のもとでは紙幣発行上限が決まっているため経済立直しが思うように進みませんでした。

 そこで1931年に「管理通貨制度」に移行しました。管理通貨制度のもと、金の保有量とは関係なく、中央銀行の管理により、各国の経済を考慮しながら貨幣を発行することができるようになりました。

・このような流れでお金の在り方を変えることに成功したのです。これが偶然か? 計画的か? 考えてみてください。

・ものごとはさまざまな見方をすることが大切です。
・金本位制から管理通貨制に移行するための第二次世界大戦だったのか。

・そして現在、第三次世界大戦につながるような社会情勢、できごとが頻発しています。
・デジタル化社会、デジタルなお金に関する情報を追えば、「お金の在り方」を変えたいという流れが見えます。それは「世界共通の規格」からも、「グローバル企業の動向」からも伺うことができます。

・「お金の在り方(現金→デジタルなお金)」を変える為に必要なできごとが多方面で起こっているように見えてなりません。




1-3 貨幣の3つの機能

「貨幣」は広い意味でとらえると「通貨」「お金」とも呼ばれています。貨幣は商品やサービスの円滑な交換や流通のための媒介物という意味合いがあります。

貨幣には3つの機能があります。
・価値の尺度
・交換、流通の手段
・価値の貯蔵手段



1-4 現金通貨は2種類、CBDCの計画

 現在、多くの国でそれぞれの現金通貨が流通しています。現金通貨は以下の2種類に大別されます;

中央銀行発行の紙幣=銀行券
・政府発行の貨幣=硬貨

授業やメディアでは見聞きしないと思いますが、中央銀行は民間の組織です。(別途記事にもしますが、調べてみてください)


 中央銀行がもつ通貨発行権のもと、紙幣(紙の通貨)が発行されていますが、近年各国で中央銀行デジタル通貨が計画され実証試験も進められています。(略称CBDC; Central Bank Digital Currency)




1-5 国際決済銀行と中央銀行

 国際決済銀行(略称BIS; Bank for International Settlements)は、1930年に設立された、各中央銀行の相互決済を行う組織です。「中央銀行の中央銀行」とも呼ばれています。

 2022年には国際決済銀行の主導のもと、イスラエル、ノルウェー、スウェーデンの各中央銀行が合同でCBDCの実証試験を開始しています。国際決済銀行のレポートによると、2021年時点では世界の中央銀行のうち約90%がCBDCの検討・計画をしていると発表されました。
(Ref. Project Icebreaker -BIS)
(Ref. BIS paper No.125 -BIS)


以上

2章へつづく

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