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eスポーツチーム運営会社って何しているの?③ 営業編「チームとスポンサーの在り方」

筆者はDetonatioN Gaming(以下、DNG)で営業を担当しています。
eスポーツ業界で働き始めて10年と、業界の中では長いほうではと自負しており、その経験から皆様に少しでもこの業界に興味を持ってもらえる内容をお伝えしたいと思います。

本稿のテーマ「チームとスポンサーの在り方」について

今回の記事は「eスポーツ」という新しい市場において、大会やイベントではなくチームにスポンサーする企業に関する内容です。その中でも営業方法やチーム価値の上げ方などの話ではなく、eスポーツチームはどのようにスポンサー企業の価値に貢献するのかという考え方の話になります。

本稿はあくまで一チームとしての考察になりますが、これからeスポーツチームとしての活動を考えている方やeスポーツチーム、広くはeスポーツ市場への投資に興味のある企業の方々の参考になればと思っています。

eスポーツの黎明期に大会やチームにスポンサーする企業の多くは、ゲームをプレイする環境に親和性の高いサービスやプロダクトをPRしたい企業でした。パソコン・ネット・周辺機器などの販売を手掛けている企業です。
ところが昨今では多くの方の努力の末、少しずつeスポーツの認知度や価値が上がり企業参入の間口が広がりました。結果、過去からは考えられない業界の企業がeスポーツ市場に何かしら興味を持ったり、アクションをすることが増えてきました。市場自体が拡大しているのを肌で感じことも多くあり、嬉しく感じます。

そうした現状だからこそ、各企業が「eスポーツ」という得体の知れない分野に何を求め期待し投資を始めるのかをよく考える必要があります。実は投資する企業自体でもよくわかっていないまま話が進んでしまうケースもあります。

尚、日本のeスポーツ市場については本稿のメインテーマではなく、既に多くの専門家の方々がネット上で情報を発信しているので触れていません。

DNGの売上構成

まず、なかなか表に出す資料ではありませんが、DNGの売上構成は以下の通りになっています。

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グラフの印象としてはいかがでしょうか?いろんな感想があると思います。

"賞金って意外と少ないね"
"賞金は選手との配分はどうなってるの?"
"コンサルティングは何してるの?"
"プロリーグ支援金ってなんぞや?"

上記以外にも様々な声が聞こえてくるとは思いますが、今回の記事で筆者がお伝えしたいことはeスポーツチーム活動においてスポンサー費は必要不可欠ということです。
ご覧いただいた通りチーム売り上げの約6割がスポンサー費用となっており、実質、チーム活動おいてスポンサー企業の支援がないと成り立たないというのが見てわかります。これはあくまでDNGとしての資料ですが、他チームも同じくスポンサー企業の支援ありきでの活動となるチームがほとんどです。

スポンサーの思惑

チームにとってスポンサーの重要性がわかったと思います。もちろん、経済的な面以外でもたくさんのご協力を得てますが、わかりやすい部分として引き合いに出しました。

では逆に、スポンサー企業側が「なぜeスポーツチームにスポンサーするのか?」ということをお話ししていきます。

「スポンサー」は企業の宣伝のための投資です。広告費を使います。
メディアから得られたeスポーツのイメージだけで、"若い人にたくさん露出したいのでとりあえずやってみたい!"という短期での結果を求めるのであればSNSや動画投稿・配信サイトへの広告出稿、YouTuber・VTuberなどのインフルエンサーを起用したほうがコストパフォーマンスはいいです。断言します。
私自身そのような相談を受けたらそちらをお奨めしています。
「それ、本当にeスポーツでやる必要ありますか?」と。
成果についてもWeb広告のほうが目に見えやすいですしね。

多くの企業が広告費をどのように使うのかを判断・検討するのは、マーケティング担当の方が多いです。
現にDNGとやり取りをするスポンサー企業の担当者はマーケティングチームがほとんどです。

eスポーツに限らず、企業のマーケティングチームが広告費という予算を捻出する意図としては「自社の製品やサービスを売る」という最終的なゴールを達成するために、製品のメディア露出やプロモーション活動、自社ブランドの認知拡大など様々手法を実現するためにお金を使います。

そして世の中にはたくさんの広告出稿先があります。

・テレビ
・ラジオ
・雑誌
・新聞
・ダイレクトメール
・催事イベント
・SNS
・動画サイト
・インフルエンサー
・Webリスティング
・メールマガジン
…etc

上記は一例で、たくさんある広告メディアはそれぞれ一長一短がもちろんあります。これら既存のメディアと比較した時にeスポーツチームに投資するメリットとは何か、ということをどれだけの方がご存知でしょうか?
企業のマーケティング担当の方だけでなく、eスポーツ業界で働いている方でもなかなかに知られていないことが多々あるように感じることもあります。

"若い世代に訴求できるよ!"という曖昧なワードだけで上記メディアに打ち勝つことはできません。
露出だけであれば先述した各メディアのほうが成熟したノウハウがある上に成果を計測しやすく、年代や性別、エリアなどもよりセグメントできるものも多くあり、効率的です。
「ユニフォームにロゴを出します!」と嬉々としてプレゼンしているチームをたまに見かけますが、グローバルで活躍し世界中に数百万人のファンがいるようなチームでない限り、価値としては極めて低いということですね。DNGも例外ではありません。

そこでeスポーツチームは露出だけではなく他の部分で勝負する必要があります。その露出以外の部分、すなわち「eスポーツチームならではの投資するメリット」についてDNGとしては一例ですが次のように考えています。

①忠誠心の高いファン層へのPR
②中長期に渡る露出とブランドの成長
③コミュニティと地域活性化への貢献

わかりやすい部分で上記三点を挙げました。
それぞれもう少し詳細に説明します。

①忠誠心の高いファン層へのPR

eスポーツチームに対し、応援してくれているファンの方々がいます。

ファンになる多くのきっかけは大会に参加している選手の活躍を見てゲームのプレイやインタビューの様子、SNSでの発言などで人となりを知り、興味を持たれます。そしてその選手を見続けることによりファンへ昇華します。
特定の選手を好きになることもあればチーム活動しているタイトルではチーム全体を好きになってくれることもあります。いわゆる「箱推し」と呼ばれる人たちです。
野球やサッカーにおいても同様に、阪神タイガースや浦和レッズなどのチームのファンが存在し、特定の選手が入団・脱退してもそのチームを応援し続ける貴重な存在です。

選手・チームのファンになってくれた方は大会はもちろん、その他の活動においても応援してくれます。
その選手の活動を観るために、SNSをフォローしてくれたり、参加する大会を視聴しながら応援コメントを投稿してくれたり、コアなファンになると大会やイベントの会場に足を運んでくれたりなど、我々としては本当にありがたい存在ですね。

そのようなファンに対し我々はダイレクトにスポンサー企業の製品やサービスのPRをすることがあります。テレビなどのマスマーケティングは母数が多いことが特長ですが、テレビ一人の視聴と、選手からダイレクトにPRした一人では大きく価値が違います。濃度の差は明白です。

我々は選手・チームのファンを本当に大事な存在としてとらえていると同時に、ファンの方々も選手の活動を支える意味合いを理解し、PRしている製品などを一緒に愛してくれる傾向があります。このような忠誠心(ロイヤリティ)が高いファンがいることが我々の強みと考えています。

②中長期に渡る露出と成長

テレビやWeb広告のように〇〇週間などの期間を定め、集中的に露出する販売促進活動があります。これは短期間に巨大な母数に対し一定の数値結果を出したいときに有効で、PRする製品・サービスが素晴らしいのであれば体験をさせるきっかけを創出しリピートさせるにも効果的かと思います。正直に書くと、eスポーツチームはこのような短期で結果を出すことは得意ではなく、適していません。

eスポーツチームへのスポンサーは中長期に渡ることが多いです。
短期で集中的にコストをかけて製品をPRするよりも、長く、そして深く浸透させることによってチームとともに成長していく関係性を築きます。

例えば、PCデバイス(ゲーム用のマウス・キーボード・ヘッドセット等)ブランド「Logicool G」のメーカーのロジクール様は7年間という長期に亘りサポート頂いております。

2014年。
一部のコアなゲームコミュニティがまさに”eスポーツ”に発展しようと変革している時期からDNGに多大なるサポートをして頂き、大きな活動力の源になっています。経済的な支援を始め、競技シーンで活躍するためにゲームのプレイに適した各デバイスをご提供いただき、それらは現在、選手としても必要不可欠な職業上のアイテムになるまでの存在となっています。
それらのアイテムをチームが愛用し、サポートされてきた姿を我々のファンは見ており、DNGの活躍を支えてきてくれた存在であることを認識されている方は多く、自分が好きな選手を支えているブランドを好んでくれるのです。

「DetonatioN Gaming」と「Logicool G」はこのようにチームとしても、ブランドとしても共に成長してきました。
この関係性を築けることがeスポーツチームとしてとても重要です。もちろん、その他にも多くの企業様に支えて頂いており、お互いが成長しあえる関係性を日々、深く築いています。
選手がより良い環境でプレイするため、そして世界へ挑戦するために"共に闘っている"ことが結果として両者のブランディングにも繋がっているのです。

③コミュニティと地域活性化への貢献

各ゲームタイトルにはコアなファンがそれぞれ存在し、その中でも行動力のある方が「ゲームタイトル好きが集まるゲーム好きのためのゲームイベント」を運営していました。今でも多くのゲームタイトルにおいて、コミュニティリーダーとなるような方が精力的に活動されています。
その動機は単純明快で、「熱意」です。

"このゲームが大好き!もっと盛り上げたい!"
"このゲームが好きな人と知り合いになりたい!!"
"うまい人の超人的なプレイを観て震えたい!!!"

ゲームタイトルを愛するが故に生まれ出る熱意からくる行動で、趣味の延長線上にある上に利益度外視な活動がほとんどです。
そのようなコミュニティ活動が発展し、タイトルのファンだけでなく企業やゲームメーカーなどを巻き込み、今あるeスポーツシーンの礎となっています。

eスポーツチームはそのコミュニティの派生形に位置しています。
大会やイベントなどで活躍し目立つプレイヤー達が、昔は「あの人うまいよね~」程度で終わっていた話が今ではプロゲーマーとして輝けるシーンとなりました。

そうした中、昨今では各eスポーツにおいても地域に根差したチームがいくつか活動を始めています。
それぞれの地域に同様のコミュニティを作るための活動をチームがコミュニティリーダーを担う形です。また、特定の地域出身者であるプロゲーマーは凱旋イベントなどにおいても地域の貢献に寄与する形も存在します。

今まで東京一極集中を辿っていた各地方においてeスポーツを使って活性化を目指していることがあり、そこはチーム単位で協力している動きが多々見られます。行政もeスポーツを活用しようと色々な手段を模索しています。

若い人材が活躍できるeスポーツの場を、eスポーツチームが企業・行政と協同し創出します。それは企業のマーケティング・ブランディングを始め、CSRの意味合いを兼ねた活動としても起用され始めています。

昨今は新型コロナウィルスの影響の為、なかなか活動の幅が制限されてしまっている施策も多くあると耳にしますが、DNGとしてもこのような地域活性化に寄与するための活動を予定しています。(発表をお楽しみに!)

まとめ

本稿で紹介させて頂いたeスポーツチームへのスポンサーに関する特徴をまとめます。

・eスポーツチームの活動においてスポンサー企業の支援は必要不可欠である
・質の高いPRをファン向けに直接行うことができる
・中長期をかけてチームと企業が共にブランドを成長させることができる
・ブランディングと対極する短期のセールスプロモーションには不向きである
・地方の企業や行政において課題となる地域活性化をeスポーツで活用して実行できる

いかがでしたでしょうか?
eスポーツチームの在り方として、「スポンサーのニーズに応えて数値目標を目指す」というよりは「既に各企業が抱えている他メディアではクリアできない課題をeスポーツを活用し解決する」という考え方が適していますね。
この優位性をしっかりと把握したうえで「eスポーツ」を効果的に利用できる方々が増えればいいなと期待しています。
今まで筆者自身、数々の企業がeスポーツ市場へのチャレンジを目の当たりにしてきました。

“なんかeスポーツって最近流行ってるから予算を使ってみたけどあまり効果なかったんだよね…”

上記のような声を多々聞くことがあり、残念に思うことがしばしばあります。
まだ比較的に新しいこの市場において、多くあるeスポーツ施策の正解が広まっていない事実もありますが、やり方次第で他メディアでは成しえない成果を出せる爆発力があるので、うまく活用してもらい共に成長していきたいと願うばかりです。

また、スポンサー企業との取り組みはほんの一部に触れただけだと思っていますので他については別の機会にご紹介できればと思います。
(いつになるのやら…)

最後に営業を差し込ませてください。
株式会社Sun-GenceではDNGというチーム活動だけではなくeスポーツ市場におけるコンサルティングからお手伝いしていますので、「うちの会社がどうやってeスポーツを活用できるのかな?」程度からでもご興味がある方はDNG公式サイトよりお問い合わせください。

また、選手の大会出演・結果情報や番組への出演情報は公式Twitterアカウント(@team_detonation)で毎日発信していますので、より興味をお持ちいただいた方はこちらもフォローしていただければと思います。

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