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『虎に翼』第1部☆伊藤沙莉さんのコロコロ表情が変わる演技法。

朝ドラ『虎に翼』見てますか?
信じられないような神回が続いた第9週に唸らされまくり、泣かされまくり。そして月曜から第2部「裁判官篇」が・・・楽しみ過ぎます。
最近周囲の俳優達にも「すごい芝居が毎朝15分見れるよ」と勧めまくってる私ですw。

主演の伊藤沙莉さんのコロコロ変わる表情がメチャ魅力的ですよね~。 秒単位でどんどん表情が変化してゆく・・・現実の人間でそういう人は見かけますが、俳優が芝居でそれを演じるのは至難の業です。

それはもし俳優自身が意図的に表情をコントロールしてどんどん変えてゆこうとすると、まず、あのスピード感で表情をコロコロ変えることは不可能で、もっと大きなわざとらしい表情になってしまうんですよね。

ではなぜ伊藤沙莉さんは、あんなにも魅力的に、表情をコロコロ変えながら演じることが出来るのでしょうか?
ボクなりに観察していろいろ考えてみました。

寅子の表情は、外界に対する「反応」で生まれる。

まず寅子の演技って、ほとんど内向的に演じられていないんですよね。
たとえば寅子が嬉しそうにしているシーンで、寅子はよくある「嬉しいなあ」みたいに自分の内面の感情を噛み締めるような芝居をしていません。

そうではなく、「いい天気だなあ」とか「おいしいお饅頭だなあ」とか「この人好きだなあ」とか、かならずそこには具体的な対象があって、その対象によって寅子の心が動かされて、寅子の表情は生まれている。受動なんですよね。

受動だからこそ、外界の様子がどんどん変化すると、それに反応して寅子も表情がコロコロ変化するんです。

しかも伊藤沙莉さんは寅子をかなり早合点しがちな人物として演じていて、「こうかと思ったらああだった」「まてよ、アレを忘れてた」みたいなことが細かく次々と起こりますw。コレがまた表情の変化の回数をどんどん増やして芝居をめっちゃ楽しくしてゆくのですw。

寅子の表情の豊かさは、相手によって変わる。

そんな風に「外界からの影響」によって寅子の表情は作られているので、相手役が「感じるべきフックのたくさんある芝居をする」俳優さんと一緒のシーンだと、寅子はめちゃくちゃ表情が豊かで魅力的になるんですよねー。

とくにお父さん(岡部たかし)とか、桂場(松山ケンイチ)相手のシーンは、寅子の心は動かされっぱなしですよねー。

お父さんを演じる岡部たかしさんの芝居はこだわりのディテールが満載で、ツッコミどころというか「どうしても気になるフック」が沢山あるみたいな芝居なんですよねーw。
で、それをまた寅子がひとつひとつ拾いながら演じているので、あの2人のシーンはいつもアドリブ満載でw、寅子の超イキイキとした表情が爆発してます。

そして、裁判官の桂場を演じる 松山ケンイチさんの芝居は基本「無表情キャラ」というか、一見フックが少なそうに見えるんですがじつは違うんですよ。無表情のように見えてじつは目線の移動とか、ちょっとした言いよどみとか、小さな動作がめちゃくちゃ大きな意味を持っていて、しかもそのタイミングが絶妙に面白くて雄弁にいろんなことを語っているので、実はディテール満載&フック満載なんです。

お団子を食べようとする口の開け方とか、その形といいスピードといい、最高ですよね。 あと寅子と話すときのちょっとした首の傾げ方とか、ほんのちょっとだけ眉間にしわを寄せることとか、あれは寅子からしたらメチャクチャ心を動かされるディテールだと思います。

お母さん(石田ゆり子)とか、花江(森田望智)は、楽しいシーンでも深刻なシーンでも「彼女から見た世界の在り方」が2人ともしっかりと演じられていて、それをセリフと共に寅子にガーン!とぶつけてくるので、寅子の心はいつも大きく揺れ動かざるを得ない。結果いつも寅子はイキイキした「反応」を演じることが出来ています。

自分発信の心の動きは、コロコロ変化しない。

逆にあまり「フックの少ない芝居」をするタイプの演技をする俳優さんが相手の時は、寅子の心は動かされないので、自分で自分の心を動かす形で寅子の表情が形成されてゆきます。
この場合、想定外の刺激が入ってこないのでコロコロ表情が変わることはなく、演技プラン通りの表情でシーンが演じられることになります。これじつはこっちの方が一般的な演じかたなので全く問題ないのですが・・・普段の表情がコロコロ秒単位で変わる超魅力的な寅子と比べるとギャップを感じてしまう感はあります。

たとえば「雲野法律事務所」の雲野六郎(塚地武雅)も、塚地さんがわりと内向的なスタンスで自分のペースで芝居をなさるので、いいキャラだったしけっこう出番は多かったのですが、あの事務所で働いてる時の寅子は演技プラン通りというか、他のシーンに比べて表情のディテールが乏しくて精彩を欠いているように見えてしまうのですよねー。

そして優三さん(仲野太賀)なんですが・・・彼と2人きりで芝居してる時の寅子ってあまり表情がコロコロ変わらないんですよねー、意外にも。
太賀さんってオモシロいんですがじつは内向スタンスで芝居を演じがちな俳優さんで、寅子の演技のディテールもあまり拾わないで自分の芝居に淡々と集中していることが多いので。わりとすれ違いというか、芝居があっさりしてしまうんですよね。

そんな寅子と優三さんなんですが、彼が戦争に行くときの別れのシーン・・・あれは凄かったですね。 走って追いかけていって、変顔したり色々するんですが、分かりあった感じにならないんですよね。コミュニケーションが成立せずに、すれ違い続けるんです。でも個々がお互いを大切に大切に思っている気持ちだけはお互いにグッサリと刺さって、2人とも泣き出すという。

肝心なところがすれ違い続けた2人だからこその大感動のシーン・・・このシーンは寅子も優三さんも表情が豊かなディテールであふれていて、泣けました。

そんな優三さんもお父さんも、いなくなってしまいました。
そして今週から第2部、『虎に翼~裁判官編~』がスタートします。

予告編を見ると新キャラが目白押しでバンバン出てくるみたいですが、彼らにかかってるところあると思うんですよねー。だって寅子の魅力は相手役によって引き出されるわけですから。

さっそく月曜日。松ケンの芝居がガッツリ前半を占めていて見応えありましたね。
採用を断る芝居とかって停滞しがちだと思うのですが、松ケンの芝居は素晴らしいディテールに溢れていて全く停滞しませんでしたね。
彼は採用しないとは決めているものの、寅子の決意を見て心が揺れ動いているので、ディテールとフックがいっぱいありました。(鼻に焼き芋の皮もついてましたw)
そのフックを寅子がしっかり拾って活き活きとしたやり取りが展開していましたよね。 さすが! そのあとのライアンや元同級生との芝居もそうなってたら最高だったんですが・・・まあそれは贅沢な願いというものでしょうw。

第2部も期待できそうですね☆
まだ見てない人は今週から見始めるのが狙い目ですよ~!

小林でび <でびノート☆彡>


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