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クリエイターを、孤独にさせない。

最近エルでは、「デザインディスカッション」に力を入れています。
デザインの方向性について、ディレクター、デザイナー、ライターが集まって話し合う時間です。

今ほどメンバーが多くなかった時期は、ヒアリングのあと、デザイナーが一人で案を考えることがほとんどでした。しかし、メンバーが増えてチームで動くことが多くなったため、「まず全員で方向性を決める」ことに重点を置くようになりました。

大切なのは、
クリエイターを孤独にさせないこと。

私たちは、一人でつくっているわけではありません。それぞれの考えや知見を共有することで、一人では不可能だった表現にたどり着ける。それが、チームでものづくりをする意義の一つだと思います。

今回は、エルが大切にしている「デザインディスカッション」について紹介します。


エル流デザインディスカッション

①コンセプトを決める

ディスカッションに入る前に、まず「コンセプトワーク」を行います。ここでいうコンセプトとは、制作の軸となることばのこと。

制作をする過程では、表現に迷ったり、関わる人のなかで意見が分かれたりすることがよくあります。コンセプトはそんなとき、全員にとっての道標となってくれます。

方向性を左右する大切なことばなので、戦略調査や分析をしっかり行ったうえで、丁寧に作り込みます(必要に応じて、この時点でキャッチコピーまで作る場合もあります)。

クライアントらしさを言語化した状態からデザインに入ると、表現の過程で「らしさ」がぶれるのを防ぐことができます。柔軟な発想ができるのは、しっかりした土台があるからこそ

コンセプトが決まったら、デザインの検討に入っていきます。


②デザインイメージについて意見交換

コンセプトをもとに、デザインイメージについて話し合います。この話し合いには、デザイナーもディレクターもライターも参加します。

デザインについて意見交換をするときは、

・経験年数問わず、自由に発言していい
・間違いはないから、安心して意見していい

という前提をチームで共有することが大切だと思います。実際に言われたわけではありませんが、デザインディスカッションに参加すると、そんな空気を感じます。
「こんなこと言っていいのかな」「年下が意見していいのかな」、そんな思いは取っ払って、頭をやわらかく、自由な発想で、ざっくばらんに意見を出し合っていきます。

考えること
・コンセプトに合う表現はどんなものか?
・参考になりそうなサイトは何か?どの部分についてそう思ったか?
・その表現はどんな部分に取り入れられそうか?
・Webならではの「らしさ」の表現として、どんなことができるか?
・どんな印象を強く表現したいか?

この過程で迷ったら、コンセプトに立ち返ります。
すると、何を大切にすべきか、どんな価値がクライアントらしさだったかをあらためて意識することができます。それが、新たな着想につながっていきます。

デザインの方向性が見えてきたところで、一旦デザイナーが持ち帰り。メインビジュアルの作成に着手します。

このとき大切なのは、次のディスカッションの日程を決めておくことです。一人でボールを抱える時間をなるべく少なくすることで、思考が停滞するのを防ぎます。「悩んだら都度相談していい」という声がけも忘れません。


③デザイン案フィードバック

一週間弱ほど経ったのち、デザイナーが作ってきたメインビジュアルを、みんなで確認。いくつかの案を見比べながら、再び意見交換を行います。

考えること
・この表現は本当にクライアントらしいか?
コンセプトと合っているか?
直感的にどんな印象か?
遊びすぎていないか?遊ばなすぎていないか?
フォントの選定は適切か?
色遣い世界観と合っているか?

意見を出し合いながら、リアルタイムでデザインを編集します。実際の良し悪しは、視覚化してみないとわからないからです。

実際、こんな感じでやり取りが行われます。(会話はイメージです。温度感は再現度高めです)

「もっとコピーの位置をずらしてみようか」
「こんな感じでしょうか?」
「ああ、ずらしたほうがいいかもしれませんね」
「もう少しイラストに近づけてみる?」
「また印象が違って見えますね、どちらがクライアントらしいでしょうか」

「フォントはもう少し細めのほうがいいかなと思うんだけど、どうかな?」
「たしかに、その方がクライアントの印象と近いかも」
「ううん、もっとフィットするフォントがありそうな気もします」
「欧文フォントも、別のものを検討すべきかもしれないね」
「試してみます!」

「写真のレイアウトを変えたら、どんな印象かな」
「だいぶ印象違いますね!」
「見やすさでいったらこっちかなあ」
「ぱっと見、クライアントらしさとはちょっと離れているような気もします」
「コンセプトを、もう一度確認しよう」

こんなふうにディスカッションをしていると、ことばがデザインを後押しし、デザインがことばに立ち返らせる瞬間がたくさんあります。徐々にクライアントらしさがかたちになっていくのを感じると、いつもわくわくします。

こうしてたくさん出た意見を、最終的に一つの案に落とし込んでいきます。


④提案に向けたブラッシュアップ

「この案でいこう」と決まったら、デザイナーは提案に向けてブラッシュアップしていきます。

この段階では、細かなところまで丁寧に詰めます。感覚的な表現はもちろん、ユーザビリティや導線設計など、論理的な部分もしっかり追求。クライアントらしさと、それを見るユーザの心理状態まで考え、デザインを仕上げていきます。

提案の際に目指すのは、「あなたのこんな価値を、こんな方向性で、こんなふうに伝えます」というこちらの意向を伝え、クライアントと認識を合わせること。ここをしっかりしておくと、あとで制作の軸が大きくぶれることがなくなります。提案時は、ライターがつくった企画書と、デザイナーがつくったデザイン案を合わせて共有し、「ことば」と「デザイン」両方の面から、導き出した「らしさ」を丁寧に伝えます


デザインディスカッションのいいところ

デザインディスカッションを行うことで、「いいなあ」と感じることがたくさんあります。

一人で行き詰まる時間が減る

何かを生み出す際にはどうしても、「一人でじっくり思考を深める」時間が必要です。私は結構、「一人で持ち帰って考える(せっせと孤独になろうとする)」タイプ。その時間も大切なのですが、あまりに長すぎると、「ああでもないこうでもない」の迷宮に迷い込んでしまうことがあります。

でも、チームでディスカッションの時間を取ることで、一人で行き詰まる時間がだいぶ減りました。デザインもコピーもそうですが、正解のない問いを考えるときは、誰かと一緒に考えたほうが、より最適解に近づけることがあります。自分の視点のほかに、複数の視点が加わるからです。


リアルタイムでブラッシュアップできる

デザインディスカッションの際は、意見交換とデザインのブラッシュアップを同時に行うことができます。

一人で考えているときは、客観的な意見をすぐに取り入れることは難しいですが、リアルタイムでブラッシュアップすると、いろいろな視点からのアイデアを、その場で試して検討することができます。トライ&エラーの繰り返しが短時間でできるので、最適解にたどり着きやすくなります。

さらに、デザインの変化がリアルタイムでわかるので、周りの人にとっても、意見が出しやすいという利点があります。論理的な「いい」も大切ですが、感覚的な「いい」をジャッジするには、リアルタイムでのブラッシュアップがとても有効です。

この過程がうまくいくと、最終的なデザインのクオリティがぐっと上がります。


「◯人寄れば文殊の知恵」になる

このことわざ通り、チームで知見を共有することで、自分の引き出しになかった表現が生まれることがあります。「このことばを表現するためには、こんな手法が考えられるのか」「配色はこんなふうに考えているのか」「表現を少し変えるだけでこんなに印象が変わるのか」など、参加するだけですごく勉強になります。

とくに、コンセプトがビジュアル化されていく過程は、いつも感動します。かたちになっていなかった「らしさ」が、ことばを通してデザインになっていく。それはやりがいを感じる瞬間だし、クライアントにしっかり伝えたい、と身が引き締まる瞬間でもあります。

時代が変わっても、「みんなの知見を集めて何かを成す」ことの重要性は、ずっと変わらないのかもしれません。


クリエイターを、孤独にさせない

「じっくり考える」のと「孤独に考える」のは、似ているようで違います。

みんなで考える時間があるからこそ、
安心してじっくり考えることができる。
デザインディスカッションを通じて、そう思うようになりました。

デザインにもコピーにも、絶対的な正解はありません。悩めば悩んだ分、いいものが出来るとは限りません。だからこそ、クリエイターを一人で悩ませないような仕組みと空気をつくることが大切だと思います。

「一人で考えを深める」時間と、「みんなで考えを広げる」時間を繰り返すことで、「らしさ」を表現する最適解が見つかるのかもしれません。

エルはこの春からメンバーが増え、どの案件でも「コンセプトワーク〜デザインディスカッション」を手厚く行える仕組みが整いつつあります。

一人ではできないことが、チームではできる。そのことを胸に刻みながら、明日からも、制作に励もうと思います。


デザインスタジオ・エルは「超えるをつくる」を合言葉に「らしさ」をデザインするWeb制作会社です。
Webサイト制作やグラフィックデザインのご依頼やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。



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