失敗の本質_本01

日本に合ったストラテジーを歴史から学ぶ:失敗の本質

僕がテーマにしているデザイン・ストラテジーに関する情報ソースは、主に欧米の考え方から来ているものが多く、日本は相対的に見てストラテジーが弱いという印象があります。マーケティングやコンサルの分野ではいくつか日本発祥の戦略もありますが、やはりアメリカが強いでしょう。

その背景を教えてくれる名著『失敗の本質』は、日本人の戦略性の弱さの特性を知ることができるので、紹介してみたいと思います。この本は35年前のものですが、7年前に分かりやすく解説された本も出ているので、合わせて紹介します。

まずは原著の『失敗の本質』から

失敗の本質
戸部 良一、寺本 義也、鎌田 伸一、杉之尾 孝生、村井 友秀、野中 郁次郎
ダイヤモンド社 1984.05

この本は第二次世界大戦(大東亜戦争)で、日本が敗戦に至った原因を、戦略的な視点から考察したものです。前半では6つの戦地で行われたことを分析し、後半は共通する日本の組織の問題点と失敗要因を見つけています。

ここから分かることは、日本人の個人の気質からくるものと、組織的な構造からくるもの両方が、戦略的な視点ではマイナスにはたらく要因となることをあげています。

かつて日本が得意としたのは奇襲戦(日露戦争など)だったそうですが、近代戦は以前よりも複雑で計画的なものになったということです。そのとき特にアメリカと比較すると日本には戦略的要素では負けていたということです。例えば

・戦略目的があいまい(意思と実行がかみ合っていない)
・短期的志向が強く視野が狭い
・結果よりもプロセスや動機を重視しがち

こう書いてみると、いまのデジタル化に対する日米の状況と、かなり一致するものがあると思いませんか?もし、戦前も今も日本の思考があまり違いないのであれば、海外のストラテジーの考えをそのまま取り入れても、日本企業では受け入れにくいのではないかと思います。日本の特徴を捉えたうえで適したストラテジーを考えていく必要があると思います。

では次に、現代のビジネスにこれをどう活かしていくかという視点で、もう一冊の本を紹介します。

「超」入門 失敗の本質
鈴木 博毅
ダイヤモンド社 2012.04

この本は「失敗の本質」をもとに、敗戦の理由を現代のビジネスにも通じる視点で7つの理由と23の問題点を指摘しています。

たまに欧米圏の人と仕事をすることがありますが、そのときのことを思い浮かべると、自分自身のことやプロジェクトの計画で、そうだなと思ってしまうものばかりで、耳が痛い内容ばかりです。

特に今のビジネスで当てはめてみると、変化に対応できないことや、指標を自分たちで設定できない、ということに注目したいと思います。新しい市場機会を見逃したり奪われたりすることや、スペックとは違う価値観をつくったりプラットフォームをつくるのが弱いのは、こういったことに起因するのではないかと思いました。

個人的に一番この本で学びになったのは、この言葉です。

戦略は追いかける指標のことである

これが意味するところは、次のようなことだと思います。

・指標を自分たちで定める必要がある=仮説構築力
・指標は常に変わり続ける=市場分析力
・状況に合わせて常に指標を見直し追い続ける=アジャイル力

僕なりの結論です。上にあげた仮説構築力・市場分析力・アジャイル力の3つが、日本のビジネスを考えていくなかで特に強く意識すべきことではと考えます。時代の状況を見据えてユニークな切り口をつくることに加えて、動的な対応が行えるようにすること。カッチリ決めすぎないことの大切さに気づくことができました。

2冊の本を通じて、日本人と戦略の関係を客観的に見る視点が持てたのではないかと思います。これからも海外の取組みは常に見ていきますが、同時に自分たちの足元もしっかり見据えて、実践的で生きたストラテジーをつくっていくことに役立てていきたいと思います。

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デザインとビジネスをつなぐストラテジーをお絵描きしながら楽しく勉強していきたいと思っています。興味もっていただいてとても嬉しく思っています。