チャイナイノベーション_メモ01

中国のビジネスの強さはデジタルとUX:チャイナ・イノベーション

中国がすごい。という話をこの2~3年でよく聞くようになりました。

ニュースで個々の話題を知る機会は増えました。QR決済、オンラインモールの爆発的な売上、シェア自転車の普及、監視カメラやレーティング。モノづくりに関わっていた僕は、たまに手にする中国製品のクオリティに感心させられます。

といっても僕は中国にいったことはなく(香港には8年くらい前に)、特に接点もなかったので実感なかったのですが、最近取組んだプロジェクトでのリサーチ、セミナー、そしてこの本を読んで、やっと脅威を実感できるようになりました。

チャイナ・イノベーション データを制する者は世界を制する
李 智慧
日経BP 2018年10月

著者は中国出身のコンサルタント。この本のおおまかな構成は以下のようになっていて、マクロな社会的視点から捉えて企業の取組みを紹介するながれです。なので、ただ面白い事象を知るだけではなく、その背景や文脈を捉えて理解することができます。

1. 国の施策
2. 経済の転換点
3. 成長する企業

日本人の僕にとって意外だったのは、製造業に関することがほとんど触れられていないことです。XiaomiやHuaweiやLenovoなどの企業は紹介されていません。このことが意味するのは、中国の急成長は製造業よりもデジタルサービスに目を向ける必要があることを表していると思います。

ではそれぞれの項目について概要を見ていきたいと思います。

1. 国の施策

近年の中国で掲げられている4つ政策の中に「インターネットプラス」というものがあります。他の政策は製造や流通などのものに対して、インターネットプラスはデジタル制作に特化したものとなります。そしてその中は11の重点分野が示されています。

このように政府が開いた(例えば新しいITサービスに対して日本のように細かく規制しない)のと合わせて、海外で学び実践してきたたくさんの優秀な中国人が自国に戻ってきています。環境と人材がそろえば、デジタル産業が進むのは自然のながれともいえます。

2. 経済の転換点

そして同じ時期に、経済で大きな転換点が起こります。それはモバイル決済です。

いま中国ではほとんどがモバイル決済で、現金を使うことはほとんどないそうです。屋台などでもQR決済は普通に行えて、現金を受け付けないお店も多いようです。この流れは都市部だけでなく農村でも急速に増えているということです。

これはセミナーで聞いた話ですが、QRがここまで普及した背景は、導入コストが限りなく安いからだということです。10年前と違って最近ではみんなスマホを持っている、持っていればアプリをインストールするだけで売り手側も買い手側も利用できる、資本力はあまり影響されないので、既存業界を壊すことなくスムーズにデジタルに移行できる。

これはアメリカには見られない独特な流れで、リバースイノベーションであるといえるかと思います。(リバースイノベーションの読書感想文についてはこちら)そして、お金がデジタル上にまわってくるようになって、ビジネスのあり方も変化していきます。

3. 成長する企業

中国のデジタル企業を語るので欠かせないのが、この2社です。

・アリババ(阿里巴巴集団)
・テンセント(腾讯)

共に中国の時価総額1位と2位です。ちなみにその下に平安(ピンアン)保険という保険会社が追従していますが、この会社はフィンテックによってデジタル発展を遂げています。この本では触れられていませんが、別の本のときに紹介したいと思います。

アリババ

アリババは分かりやすく言うと中国のAmazonのようなイメージでしょうか。主なサービスはeBayスタイルのタオバオ(淘宝)、楽天スタイルのTモール(天猫)、B2Bのネットサービスがあります。そしてそれに伴うクラウドや金融などのサービスも展開しています。このあたりもAmazonと比較すると分かりやすいかと思います。

ですが1つ大きな違いがアリペイ(支付宝)です。QR決済を進めた立役者といっていいでしょう。支払いの流れを変えたことによってアリババは自身のビジネスを大きく成長させていくことになります。

創業者のジャック・マー(馬雲)はよく知られていますが、彼が持っている先見性の1つは顧客体験を重視していることです。アリペイでもスムーズな支払を実現するために、UIの改善や銀行側とのシステムの交渉に注力したそうです。

ここがすごく重要です。上であげた例は、つまりUXのことですが、21世紀のビジネスでUXが欠かせないことを表していると思います。中国の上級役員にデザイナーが多くいるということは、ジョン前田のDesign in Tech report 2017の時点でも既に注目されていましたが、UXがビジネスに有効であることを中国の起業家たちは理解していることの表れです。間違いなく日本よりも進んでいると思います。ここを理解しておかないと、中国のビジネスの強さを見誤ってしまうことになります。本当に大事な視点なので強調しておきたいと思います。

テンセント

テンセントはLineに近いようなイメージでしょうか。かつてはQQという中国のFacebookのようなSNSからはじまり、いまは良く知られているWeChatが起点となり、そこから様々な業種サービスにつながりをもっています。

そのうちの1つがWeChatPayです。日本でもLine、Yahoo、メルカリなど、異なる業種から決済につながっていくように、中国ではアリペイとWeChatPayが2強となっています。

新興企業

アリババやテンセントに続くカタチで、中国では新しいテクノロジー企業が成長してきています。シェアリングサービスを広げるDiDi(中国のUber)やMobike(自転車)、フィンテックの衆安保険やWeBank、AIを企業に展開する商湯科技や科大訊飛など。

1の政治のところでもあげましたが、国が開いた政策を打ち出しているので優秀な起業家や技術者たちが、新しいビジネスを次々に切り開いていきます。なんというか、日本とは大きく環境が違うので、こういった方針の違いが年々、経済や技術の差として開いていくことにつながりそうです。

・・・・

以上がこの本から学んだことです。ここではデジタルと特に支払の変化に注目した内容が中心でしたが、生活者の視点から見たサービスや経済の変化を見ていくと、まだまだ多くの発見があるのではないかと思うと気になります。

これは一度中国に行ってみないと、かな。

また、最近出た『アフターデジタル』という本でも中国のことが多く紹介されて話題になってるので、これも読まないとと思っています。


この記事が参加している募集

推薦図書

デザインとビジネスをつなぐストラテジーをお絵描きしながら楽しく勉強していきたいと思っています。興味もっていただいてとても嬉しく思っています。