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子どもとおとなへ向けた、オンラインワークショップを解剖!「デザインのとびら」

こんにちは!子どもたちの未来のための、デザイン思考を活用したワークショップ「デザインのとびら」です。

COVID-19の状況下で、なんとかみんなの力になれないか、というモチベーションで始めたオンラインのワークショップ「観察 to 想像」について前回記事を書きました。

前回の記事を書いたあとに、私たちのワークショップのおもしろさがより分かりやすく伝わるように、「観察 to 想像」のワークショップに新しいサブタイトルを付けました。それが「想像植物ハンティング!」というものです。

今回は、このサブタイトルの「ハンティング」という言葉を紐解く形で、設計側の目線からワークショップの解剖をすることで、もう少し詳しく何を狙ったワークショップなのか、どんな価値を生み出したいと思っているのかについて、解き明かしていきたいと思います。


4種のハンティングのワークショップ

観察to想像の4段階4

前回の紹介で、ワークショップのプロセスを4つのアクティビティに分けて説明しました。
その内容を掘り下げると、このワークショプでやってもらっているのは、4種類のハンティングということができます。

1. 採集 = 「WOW」のハンティング
2. 観察 = 「見えていなかった気づき」のハンティング
3. 想像 = 「自分だけの想像世界の植物」のハンティング
4. 発表 = 「創造性への自信」のハンティング

では、それぞれのフェーズについて詳細を見てみましょう。


1. 採集 = 「WOW」のハンティング

河合家3トリミング

最初に行うのは、まさに「ハンティング」つまり「採集」の時間です。
参加者の皆さんには、「外に出て、植物を採集してくる」というアクティビティをやってもらいます。ただし、ここでやるべきことは、ただの「植物採集」ではなく、「WOW」つまり「驚きや感動の採集」です。

「1 → 0(イチゼロ)」

1-0のコピーのコピー

私たちが「普段見えている世界」と、「ちゃんと見ることで発見できる世界」との間には、実は大きな開きがあります。私たちにとって普段身の回りの世界は「見えている」だけで「見ている = 知っている」つもりになっていますが、実のところ全然「見えていない = 知らない」ことがとても多いのです。

これは別に悪いことではありません。普段の生活に、全く関係のない余計な情報がたくさん入ってくると、生活していく上では邪魔になってたまりません。おそらく人間は成長するにつれ、余計なことにいちいち反応せず大事なことに集中できるよう、情報を無意識に削ぎ落とし調整するのでしょう。でもこの視点だけだと、世界はすごく狭くなってしまい、息苦しくつまらないものになりがちです。

私たちのワークショップの、最初の「採集」のフェーズでは、採集の準備として世界を改めてじっくりと見直してもらいます。分かっていると思っていた世界を「いったん脇に置いておく」というか、「まっさらな頭で捉え直す」作業です。

そうすると、どうでしょう。身の回りのよく知った景色であっても、これまで見えていなかった新しい発見がたくさん溢れ出します。

例えば、誰もが知っている「たんぽぽ」。たんぽぽとして「知っているつもり」で見ると面白くも何ともないし、それ以上のものにはなりえません。でも、円形に無数の花びらが並んでできる黄色い花や、中心から放射状に並んで球体のように成長する綿毛、やたら長く地面に深く食いつく根、独特の形状の葉、などよくよく見てみれば個性の塊のような植物ですよね。

もっと言えば、たんぽぽなんて名前でさえも、「どこかの誰かがかつて付けたもの」でしかない。そう考えるとたんぽぽだって、新鮮な驚きを与えてくれるような気がしてきませんか?だから私たちは改めて誰かが作り上げてきた世の中の構造をいったんフラットにした上で、自由な想像を始めるのです。

1つの固まり切った世界観をいったんまっさらな目で捉え直す。そして「0(ゼロ)」になった世界に改めて驚き、楽しんでもらう。そういう意味で、この段階は「1 → 0(イチゼロ)」と呼ぶことができます。

たんぽぽのコピー


イノベーション理論にも通ずる!?

ちょっと話が飛びますが、イノベーションの分野に『両利きの経営』(チャールズ・A・オライリー、マイケル・L・タッシュマン著 東洋経済出版社)という書籍があります。その中で、イノベーションの創出には「知の探察」と「知の深化」のバランスが大事だと述べられています。

「探索」とは、自社の既存のビジネスエリアを超えて遠くに認知を広げていくこと。「深化」とは、成功体験を元にそれを研ぎ澄ませていくイメージ。特に「探索」が日本企業の弱いところだと言われています。

「探索」としてやるべきなのは、これまでのビジネスとはかけ離れた全く知らない領域に出かけていろいろな見識を仕入れることです。その時に大事なのは、「わかったつもり」で探索に出かけてしまわないことです。でないとなかなか新しい発見はできないし、そもそも知らないことを得るために出かけるのに、知ったつもりでいること自体おかしいですね。

私たちのワークショップの「1 → 0」のフェーズもそれに近いイメージをしています。異なる領域に出かけるように普段訪れない身の回りの小さな自然と向かい合い、既成概念に囚われないまっさらな目で世界を見渡してみます。新しい想像の世界を見つけるための心構えのようなものです。
子供たちのためには、これからの時代に求められる頭の使い方の教育として良いかもしれませんし、ビジネスパーソンにとっても柔軟な頭の使い方のトレーニングになるのではないでしょうか。

さらっと書いてしまいましたが、「ものの見方」を変えることは、人によっては最初は難しいかもしれません。普段多くの人は「左脳モード」で生きているので、知識が感性よりも優先してしまいがちです。そして感動よりも先に知識が現れると、それ以上の考察を阻んでしまうというか、思考停止に陥ってしまいます。知識はすごく重要なのですが、時にこのような弊害もあるんですね。このワークショップでは、感性を磨くために、まずは知識をいったん脇に置いておくようにします。
むしろ肩の力を抜き、深呼吸して、頭を空っぽにして、全くの初めての世界に降り立ったように景色を見てみる方が良いでしょう。まさに「右脳モード」であるがままに世界を感じてみることをします。

この段階はそんな形で、「ゼロ化」させた世界にとにかく驚き、感動してもらう、「インプット」の作業です。右脳を中心にしたインプットをフル稼働してもらいます。

2. 観察 = 「見えていなかった気づき」のハンティング

観察している小

「採集」ができたら、部屋に持ち帰り、その中から一つお気に入りの植物にフォーカスを定め、よりじっくりと観察をしてもらいます。

事前に配布している観察シートというシートを参考にしながら選んだ植物についての新しい発見をハンティングしてもらいます。

この段階でも、これまでのものの見方に囚われない、より深い気付きを得ようとする必要があります。この時、先程の「0(ゼロ)」の感覚のままでいることが役に立ちます。

でもどちらかといえば、この段階は「驚く」段階ではなく「理解」の段階です。感覚的なものというよりも、観察を通してその植物に関する「情報をハンティングしにいく」というイメージでしょうか。
そういう意味では、この段階もインプットではあるものの、「左脳的」なインプットの時間と言えるでしょう。

3. 想像 = 「自分だけの想像世界の植物」ハンティング

想像シート

観察が終わったら、いよいよ「想像シート」を用いた、「想像植物ハンティング」の時間です。これまで観察した情報を頼りに、その植物って実はこんな生態があるんじゃないかな?ということを自分の想像力をめいいっぱい働かせ、膨らませていきます。そして、自分だけの世界にしかない特別な植物としての生態を想像し、シートに落とし込んでいきます。
これまで全く存在しなかった想像上の植物をハンティングするような行為と考え、「想像植物ハンティング」と呼んでいます。


「0 → 100(ゼロヒャク)」

0-100のコピー

私たちは、私たちの住んでいるこの世界は、既に何もかもが発見され尽くした画一的なつまらないものではなく、まだまだ知らない驚きで満ち溢れたおもしろい世界だと考えています。そしてその世界の可能性は、一人ひとりの考え方次第で大きくもなり、小さくもなる

想像植物ハンティングの段階では、仮に参加者が同じ種類の植物をハンティングしてきたとしても、最後に想像して出来上がるものは全く異なる新しい生態の想像植物になります。つまりは参加者の想像力次第で、無限の可能性のある世界が広がるということです。

ゼロに戻した世界から、無限の可能性を見つけ出す、という意味で、このフェーズは「0 → 100(ゼロヒャク)」と呼ぶことができます。

アクションとしては、非常に右脳的な頭の使い方をしながら行うアウトプットです。右脳をフル稼働しさせて、自由なアウトプットをしてもらいます。


4. 発表 = 「創造性への自信」のハンティング

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最後に他の参加者に向けて、自分が考えた想像植物について発表をしてもらいます。

普通、こんなに自由に好き勝手想像した自分だけの世界を人に話すというのはかなり勇気のいる行為です。自分の中のピュアなものの表出でもあるからでしょうか。それを否定されるとすごく傷ついてしまうからなのか、誰にも言わずにこっそり隠しておきたいものですよね。

でも、私たちのワークショップでは、必ず最後に発表をしてもらいます。その理由は、自分の創造性に対する自信を深めて欲しいからです。

大きくなるにつれて、多くの人は自分が創造的であることを忘れていってしまいます。でも、本当は年齢や職業に関係なく誰もが創造的であっていいし、むしろ創造的であるべきだと思います。特に今後はAIが発達し、人間にしかできない価値というものの重要性が高まってくると言われています。効率性や正確性というかつての時代に求められた能力はAIの方がよっぽどうまくやってくれるので、AIにはできない能力をこれからの人材は伸ばしていかなければいけない
そうしたときに、「創造性への自信」は非常に大事なことだと考えられます。

このワークショップで発表をすると、ほぼ参加者みんなが共感し、拍手を送ってくれます。それは本当に発表者それぞれの創造力の豊さに驚かされ、喝采を送りたくなるものを皆が作り上げるからです。創造性というのは、まさに個性そのものだと思います。「1 → 0 → 100」と、ワークを進めていくことで、個性豊かな想像が集まり、それが発表の面白さに繋がっていきます。

そして自分とは全く違う想像に対し、誰もが素敵な想像だね!と拍手を送りたくて仕方なくなります。またその拍手が、送られた側の創造性に対する自信を高めるのに役立つのです。

20200404_観察to想像_集合写真

この「創造性への自信」は、「クリエイティブ・コンフィデンス」と呼ばれています。
発表を通して、創造性への自信を獲得する。まさにハンティングですね。
以前「クリエイティブ・コンフィデンス」をテーマに記事も書いているのでぜひそちらも参考ください。

この段階もアウトプットですが、わかりやすく人に伝える行為という意味で、左脳的なアウトプットといえます。


改めて、「世界を、過大評価する」

このように、4つのフェーズ全てで異なる「インプット × アウトプット × 右脳 × 左脳」の組み合わせでワークショップは進んでいきます。

同時にこのプロセスを通して、既成概念に囚われていた世界(1)を、いったん何のバイアスも無いまっさらな見方で見る(0)。そして、そこから無限の可能性に溢れた想像を爆発してもらう(100)という、アクティビティを行っています。

前回の記事にも書きましたが、この行為を私たちは、「世界を、過大評価する」と呼んでいます。「1」だと思い込んでいた世界の可能性を「100(無限)」に広げる。それを「過大評価」という言葉で表現しています。

一見ただの植物採集のようではありますが、実は結構いろんな気付きが得られるワークショップの設計になっています。そしてこんな風に文章に起こしてみるとなんだか大それた感じがしますが、気楽に参加できる、楽しい内容ですので、ぜひゆるい感じで楽しんでもらえたら嬉しいです!


緊急事態宣言の延期とそれに伴う休校の延期に合わせ、今回紹介した「想像植物ハンティング!『観察 to 想像』ワークショップ」も開催日数を増やします!オンラインですので、日本はもとより世界中から参加できます。ぜひ一度遊びに来てください。

想像植物ハンティング!「観察 to 想像」
5/24(日)  AM 10:00-13:00 

▽ お申し込みはこちらから
Peatix申込みページへ

それではみなさま、何かと辛い時期ではありますが、気をゆるめず、クリエイティブにこの危機を乗り越えましょう!

\ ワークショップの様子を発信しています /
https://www.instagram.com/design_tobira/
Text by 儘田大地  Edit by 東郷りん
デザインのとびら

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