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遠田潤子は、現代の魔女だ。

たまにはハマりにハマっている作家さんの話でも。

僕が彼女の作品に出会ったのは2年前、「冬雷」が文庫化されたタイミングだった。
相変わらずおもしろい本を探しに足繁く本屋に通う毎日で、その日もいつも通りなんとなく表紙が気になって手に取った、ただそれだけのことだった。

これは読書家あるあるで、おもしろそうだなと思って買った本でも実際におもしろい場合は非常に少なく、ほとんど"ハズレ"であることが多い。
体感で10冊に1冊当たればいい、といったところだろう。

その日も特になにも期待することなく、いつも通り本屋で購入し、家に帰って読み始めた…のが今思えば運の尽き。
普通に止まらなくなってしまった。

ありきたりの謳い文句で、「んなアホな」と思っていた俗に言う「ページをめくる手が止まらない!」はまさにこのことかと痛感したのを強烈に覚えている。

その衝撃の要因をざっくり説明すると、

  • 一般人は馴染みのない希少な職業。

  • どこかの家庭などの人間関係でありそうな厄介な問題。

この「意外な目の付け所」で一気にのめり込み

  • まさかの展開と、暴かれる新事実。

  • なんとも言えない余韻を残す読了感。

このワンツーフィニッシュでKOされる。

そのどれをとっても一つの作品として究極に洗練されていて、純粋に「物語」のクオリティに圧倒されたのだ。

鷹匠と巫女をメインにした人間ドラマとミステリー。1番のお気に入り。

それからというもの、僕は完全に彼女の紡ぐ物語の虜になってしまい、本屋で彼女の作品を買い漁ることになる。

これも読書家あるあるなのだが、おもしろい作品を連続で世に出し続ける作家さんに出会うことも滅多にない。
この作品はおもしろかったんだけどな~、ということが常である。

しかし彼女のえげつないところはまさにここ。
出版されている作品のすべてにおいて、そのクオリティを保っているのだ。

余命わずかの日本画家と父親が誘拐した少女の物語。生きることの執念に飲み込まれていくような読書体験が出来る。

全作品を読んでみて、なにがこんなにおもしろいのかと考えてみれば、まさに上記で紹介した通りだろう。

無駄のない洗練された文章力で、
あまり知られてない世界の話で知的好奇心を煽り、
切なくなる複雑な人間関係で一気にのめり込ませ、
まさかの新事実で脳天を貫き、
心地良い脱力感をともなうラストでクセにさせる。
まったく、いちいちどこをとっても目の付け所に驚愕してしまう。

そして僕はもちろん、最新刊の「イオカステの揺籃」を読んだばかりだが、もうすでに次回作を待ち望んでいる。
僕くらいの遠田潤子ドランカーになると、最初の一行目からすでに魔法にかかったような錯覚を起こす。
また、あの衝撃を期待して。

僕自身、アフィリエイトが貼ってない記事の方が気になるタイプなので、貼らないでおこうと思う。←
あの世界観はぜひ、みんなに味わってほしい。

遠田潤子という作家は魔女なんだと、確信することができるから。

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