ウツになったので、TMS (磁気刺激治療)を受けてみた

しょせん人間の感情なんて脳内の磁気信号のかたまり。
そう思っていた私は、TMSという頭に電気を流す事によるうつ病の治療に非常に興味を持っていた。幸いな事に、その治療の存在を知った時は、特にうつという訳でもなく、ただちょっとの潔癖症をこじらせていただけだから、
「ほほーう」だけで終わっていたのである。

きっかけは、PIPからである。
PIPとは、Performance improvement planの略であり、パフォーマンスの悪い社員に対して、一定の期間内で業務パフォーマンスを向上させる事が出来ない場合、クビにするというアレである。殆どの外資では、いわゆる「追い出し」に使われるものである。

話は1年とちょっと前にさかのぼる。
当時の私は、人事管理システムで、同僚のから「Tama-chanは天才だ」とコメントしてもらう程度には優秀な社員として働き、海外にいる上司との折り合いも良く、そこそこ充実した社会人生活を送っていたのである。

……上司ではないカントリーマネージャーとの週一回の1対1ミーティングが組まれるまでは。

今までも、本社が私に求める事と、このカントリーマネージャーが私に求める事とに大きなギャップがあり、私は度々この阿呆のカントリーマネージャー(以後、阿保カン)の要求が自分の職務を違う事を理由に(本当の理由はあまりにナンセンスな命令が多かったからであるが)きちんと説明をして断っていたのであった。
しかし、この阿保カンは人の言葉を全く聞かない事では業界内で有名であった。
話の通じない馬鹿に時間を割くのは私の無駄遣いだとさっさと割り切った私は色々な理由をつけて話を切り上げていたが、これが1対1ミーティングだとそうも行かない。
毎週1時間、自分の業務と関係ないタスクをやっていない事を叱責され続け、私は一気に病んだのである。
突然プツリと切れたように仕事への気力がなくなり、会社に行けなくなってしまった私は、度々、自宅勤務を始めるようになった。ただ、糸の切れた人間というのは、自分がどういう状態にあったのかをきちんと理解出来ていない所がある。私は人間が弱いという事も、自分が弱いという事もよく分かっているつもりだったし、当時は何かにつけて「死にたい」と頭の中で言葉にする事も多かったのだが、それでも自分がうつ状態にあるとは思っていなかったのである。通販サイトから、抗うつ薬を個人輸入して飲んでいたにも関わらずである。

しかし皮肉なことに、このPIPの対象に選ばれた瞬間、突然雲から光が指したかのように、私は鬱っぽい症状が突然改善したのである。

私は「死にたい」から「阿保カンと人事は●(ンコ)ね」にシフトした。
ああ、会社を辞めても良いんだ、と思った瞬間に私は急に楽になったのだ。それまでは何度かベッドに横になって休みながら仕事をしていたのが、休まなくても息が切れなくなった。
しかし、時代はコロナなので、次の職探しは芳しくない。私は表面上は大人しくPIPを受けるフリをしながら、速攻で競合会社に履歴書を送ったのであった。

さて、少し元気になると、処方もなく飲んでいた抗うつ薬を手放す事も出来た(一か月の断薬は本当にきつかったので、医師の指導を受けない服用はお勧めしない)

ここいらできちんと鬱の治療を受けてみるか。私は以前から気になっていたTMSを受けようと決めたのであった。


さて、これからはTMS治療の経過を紹介していけたらと思います。


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