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父と母の学級裁判 〜怒りのヒノノニトン編

皆さん、はじめまして。
私の実家は玄関から入ると
「リビング → ダイニング → キッチン → 洗面所」
といった間取りになっている(突然だが)。

外から帰ってきた者は手を洗うために
いくつかの部屋を通ることになるのだ。

同時に、ダイニングルームやキッチンでは
高確率で母が作業をしている。

うちの父はこの
「帰宅一番、
 洗面所へ向かうルートで母と遭遇する」

というタイミングで、
母にちょっかいを出すことが多い。

「ただいま」と言うついでに
母のおしりをポンポン叩いてみたり、
晩御飯のおかずをつまみ食いしてみたり、
“小3レベル” のちょっかいだ。

その度に、母から
「許可なくアタシの尻を触るんじゃない」
などと怒られている。

ツンデレ気質な母にちょっかいをかけ、
無事で済むのはイチかバチか。

そんなやり取りを25年ほど続けながら、
子供っぽい父は、その日も母に
ちょっかいを出していた。


帰ってきた父

ブロロロロ……グォーン……

車の音がすると、
父が仕事から帰ってきたことが分かる。

「ただいま」と部屋に入ってくる父。
「おかえり」と迎えてくれる母。

洗面所につながるキッチンで、
母は今晩のおかずの下ごしらえをしていた。

「おっ、今日の晩飯もうまそうだなぁ」

手洗いついでにそんな言葉をかけながら、
父は母のおしりを
ポンポン叩いた(性懲りも無く)。

母の反撃が始まるか……!?

と思いきや、
「今日のおかずは○○と△△だよ」
などとニコニコしている母。

その日の母は、機嫌が良かったのだ。

味をしめた父はさらにリズミカルに、
母の背中やおしりを
「ポンポンポポポンポン♬」
といった調子で小突いていく。
それでも、今日の母は怒らない。

しまいには母を小突きながら、
「ポンポーン♪」
「へいへい!」
「ポンポンわーるど」
などと意味不明な掛け声をあげはじめた。
アホである。

――その時、キッチンで事件は起こった。


リズムと調子に乗った父が、ぼそっと一言

「……ヒノノニトン」

と言った。
ご存じ、某CMのフレーズである。

瞬間、背後にいた父の方をくるっと振り返る母。

「アタシは2トンもない!!」

怒声が響いた。

……
突如として静まり返る、
3秒前までは穏やかだったキッチン。
父よ、またやってしまったか。
母の表情から笑顔は消えていた。


そして「学級裁判」へ

いや、そりゃあ、
あなた2トンもないだろう。笑

「あのね、今のは
 リズムに乗って出てきたフレーズというか、
 ママのことを『2トン』って言ったわけでは
 ないっていうか……」

そりゃそうだ、
といった感じの父の言い訳もむなしく、
母の怒りはおさまらない。

「パパはいつもアタシの体形をネタにして!」
「この年齢になると
 食べてなくても太るんだよ!」

母をなだめる父だが、
気がついたら2人共ヒートアップし、
「自分は悪くない」
「いつだってお前が悪い」
「そもそもお前はいつもこう」
「ムキーーー!!」
のエンドレス口論になってしまった。

まあまあ。
うちではよくある光景なのだが、
この日はなんと「学級裁判(※)」まで
コトがもつれこんでしまった。

(※)「学級裁判」とは……
   家族間で度々行われる
   “決着をつける場” である。
   父と母と、私を含めた子供たち。
   この誰かと誰かが争った際、
   両者はそれぞれ
   「無実の主張」をオーディエンスに訴え、
   オーディエンスは
   「○○の方が悪いんじゃないの?」などと
   テキトーに白黒つけることになる。

その日のオーディエンスは、私。

(残念なことに)実はその日、
その場にいなかった私は、
突然父からかかってきた電話で
一連のエピソードと共に
「どっちが悪いと思うよ?」
と聞かれたのであった。


仕事終わりの私、正直なところ
ゲラゲラ笑ってしまった。

父から尻をポンポン叩かれたら、
なんだかイラっとするかも。
でも、長年連れ添った
家族のコミュニケーションってそんなもの。

そもそも「ヒノノニトン」というフレーズが、
母の体重を指したものでは
なかったことも分かる。笑

結局今回の「学級裁判」は、
誰も悪くないんじゃないの?
というか、ママのお尻叩くのいい加減やめたら?
などと曖昧な方向で幕を閉じた。

父よ。
「どっちが悪いと思う?」って……
思い出すと今でもふふっとニヤついてしまう。

うちの「ヒノノニトン事件」。


強いて言うなら、
間が悪かったってことなのだろう。

そろそろ夕飯時。今日も父は
「帰宅一番、
 洗面所へ向かうルートで母と遭遇する」
タイミングで、
母のお尻にリズムを刻んでいるかもしれない。

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