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「何度災害にあっても」白石長利さん-福島県いわき市で自然農法#9

2011年に起こった東日本大震災、そして福島第一原発事故による風評被害。それだけでなく、2019年には台風によって畑の近くにある夏井川の氾濫による水害があった福島県いわき市。

一見そう聞くと「わ、大変・・・」と思われた方が多いのではないでしょうか。
でも、実は今いわき市小川町の農業がアツいんです!

いわき市小川町でお米と野菜を中心に多品目栽培をしている白石家。8代目の白石長利さんとご家族にこれまでの災害の経験とこれからについてお話をお聞きしました。

福島第一原発事故、そして水害。そのとき白石家でなにが起こっていたのか

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福島第一原発事故があったとき、白石家では何が起きていたのでしょうか?

(長利さんの母)東日本大震災の影響で、江戸時代に建築された家屋は少し傾いてしまって。その後、福島第一原発事故のニュースがあって、当時はちょうどブロッコリーの収穫時期でした。

「放射能汚染の危険性があるから、収穫しないでください」って担当者に言われて、本当だったら収穫できるはずのブロッコリーが収穫できなくて。目の前で収穫時期を過ぎたブロッコリーの黄色い花を見て、言葉にできないくらいの絶望を感じました。
だから、もうそんな状態の畑は見たくなくて。

辛かったですね。

(長利さんの母)でも、息子の長利は前を向いて「しょうがないっしょ」って言ってて。
それだけじゃなくて、いろんな繋がりで遠くから瓦礫の撤去に来てくれたり、本当にたくさんの人に助けてもらいました。

(長利さん)あの日を境に、目の前の食べ物が食べ物ではなくなったというのがショックでしたけど、福島県全域が同じ状況でした。
特に収穫時期だったブロッコリーは「食べさせてあげられずごめん」っていう気持ちになりました。

実際、汚染被害は大丈夫だったのでしょうか?

(長利さんの父)実は事故が起きた時、北の風向きだったので、小川町の畑は近距離の割に汚染されずに済んだんです。むしろ原発近くから避難する場所に指定されたくらいで、事故の後に人口が増えたんです。それでも、全国から「原発事故のあった福島」っていう括りで見られたことで、風評被害はありました。

そうでしたか。その後も台風19号による水害があったんですよね。

(長利さんの母)はい。なんとか農業ができるようになったとき、台風19号の影響で夏井川が氾濫。川のすぐそばにある畑に30センチ以上の土砂が溜まりました。
でも、このときも全国からいろんな人が来てくれて、畑違いの漁師が石巻の水タンクを車に乗せて持ってきてくれたこともありました。
本当に嬉しかったし、頑張ろうって思えました。
そこでできたご縁は今でも大切にしています。


(長利さん)この地域は災害の多い地域なので、水害はしょうがないと思っていて。逆に水害があったときに、どうするかが大切だと思っています。

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長利さんの目指している農業

どんな農業を目指しているのでしょうか?
一番の軸になるのは、作り手も買い手も関わる人みんなが幸せになる農業を目指しています。
儲かる農業だと、儲かっているけど幸せじゃないこともあると思っていて。いまの日本の資本主義経済は儲けばかりを追い求めてきた結果、幸福度も低いって統計データで出ていますよね。

➖いつから目指し始めたのでしょうか?
10年前の東日本大震災と一昨年の台風19号による水害で確信したことがあって、お金とか数字は自分次第でなんとかなる。ただ、人はすぐにどうこうなるものではないと確信しました。

今うちにいる3名の研修生に対して農業指導していますが、まずはここだと思っています。

➖こことは具体的にどういったことでしょうか?

農業とか野菜づくりの知識はとても重要ですが、根底にある人と人との繋がりがないと普通の農業をしても幸せにはならないと思っています。

なので、農作業よりも前にコミュニケーションの取り方を徹底的に教え込んでいます。自分は小さい頃から、親のつながりでいろんな人が家へ来ていました。そうやって育ってきたので、他人がいることが当たり前だったけど、普通の家庭だったらそれは特殊で恩恵だったって後から気付きました。

だから、「研修のこの2年間でどれだけ関係性がつくれるか」が重要だと思っています。例えば、弟子のともぞうとかは研修に来てから24時間ずっと一緒にいました。仕事もプライベートもご飯食べる時までずっと。だから、2年後に独立するタイミングで、オクラを栽培するときには自然とお客さんがいる状態でスタートできました。

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MOA自然農法で栽培

いまMOA自然農法を取り入れた栽培をしているかと思いますが、なぜその農法を選ばれたのでしょうか?

俺が小学生だった、ある日、学校から帰ってきたら、土を掘って、トマトの根っこを掘っているおっちゃんがいました。

「何やってるんだ?このおっちゃん?」て思ったのですが、実はそのおっちゃんがMOA自然農法を普及する人でした。当時いわき市の事業の一環で、土づくりの先生を迎え入れて講師としていたようで。
でも、その時は特に何もなかったんだけど、何度かその講師のおっちゃんが来てくれて、いわき市の事業が終わった後もずっとその先生との関係性が続いていました。

地元の農業高校を卒業するときに、「うちは農薬とか化学肥料を使っている量が圧倒的に少ない。だったら、流行ってきている自然農法を学びたい。おっちゃんに聞いてみよう!」と思って聞いたのが、MOA自然農法でした。

自然農法の専門学校があるってことをそこで知って、でも進路を東京の農業者大学校へ行くと決めていたけど、実はその学校は1年間農業の実務研修を受けないとその学校へ入れない条件がありました。じゃあ、自然農法の専門学校で1年間勉強しました。

専門学校と東京の大学校とどんな違いがあったのでしょうか?

全然違う内容で、専門学校は現場の実地研修が多く、東京の農業者大学校は経営とか座学が多かった。
今までなんとなくやってきたことがこの専門学校で情報から知識として言語化できるようになったのは大きかったです。

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なぜ実家の農業を継ぐことに?

そもそもなんで農業をやろうと思ったのでしょうか?

高校3年生の時に親父が心臓の病気で倒れて農業できる状態じゃなかったので、「進学している場合じゃねえ。今すぐ継ぐ」って言ったら、おかんが「しっかり外を見てきな」って言ってくれました。だから、東京の大学校に進学することができて。

お父様が農業できない間は家の畑で農業できなかったということでしょうか?

福島の仲間たちが来てくれて田んぼの農作業をしてくれました。だから、人付き合いというのがすごく重要だと感じてます。

➖実はFARO iwakiで白石さんのキャベツ菜を使ったパスタを食べたのですが、とてもおいしかったです。普通の野菜と何が違うのでしょうか?

やっぱり「」です。
俺ら人間がどうこうできることじゃなくて、自然がつくった土がすごいんです。
水害があって、土砂が入って、その後の工程管理は俺らがやりますが、元々の土が良い。

実はキャベ菜って、普通だったら食べないところなんですよね。でも、実際俺らで食べてみておいしかったから、それをFAROさんで調理してもらっていて。
そしたら、食べる側もおいしいし、つくる側もおいしいし、キャベツにとってもすべて食べてもらえて嬉しいし、それが幸せの形だと思うんです。

➖野菜づくりでも対自然でコミュニケーションを大切にされているんですね。

実は野菜づくりも人づくりも同じだと思っていて。
自分の心を開いていないのに、相手の心なんて開けないでしょって。
だから、まずは人とのコミュニケーションを取れる人が農業をやるべきだと思っています。対人物だと意外とできていない農家さんはいると思います。ただ単に物をつくれば売れるものではない。

だから俺のところに来てればコミュニケーション能力が上がる自信があります。
今後は、ここ小川町を拠点に農業トレーニングセンターを構想していて、若手農家だけでなくてシニア農家ももっと働きたい人はトレーニングセンターに入ってもらいたいと思っています。

でも、そのトレーニングセンターは長時間ではなくて土曜日だけでも良いと思っていて、空いた時間にBBQもしてコミュニティにしていきたいと思っています。

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購入できる場所

➖白石さんのお野菜はどこで買えるのでしょうか?
白石さんのスーパーマルトの地場野菜コーナー、FARO iwakiのお料理でも提供しています。それ以外の飲食店にも出荷しています。

あと、今後はイベントも開催していきたいと考えています。現場を知りたい人へ直接収穫体験も開催したり、その場で生絞りレモンサワーをしたり。
その根底では「人を喜ばせたい」と思っていて、数字は後からついてくると思っています。

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白石さんのお野菜レビュー

今回はFARO iwakiさんが提供している白石さんのキャベツ菜を使ったパスタをいただきました。

う・・・・うまい!!!

キャベツ菜のシャキシャキ感とお肉、パスタがすごく合っていて、そこににんにくの香りがアクセントになってすごくおいしかったです!それだけじゃなくて、見た目も色あざやかなキャベツ菜の緑がすごく食欲そそりますよね。

ちなみに、FARO iwakiを運営されている店主はイタリアンシェフ。
ここで提供している食材は地元の農家さんから直接仕入れてお料理していて、どの農家さんのお野菜を使っているのかメニューにも記載しています。
正直メニューの全種類を食べたかったです。

また、2階は「あなたのその次を照らす宿」をコンセプトにゲストハウスを運営しています。
ゆったりと過ごすひととき。
そこで出会う人たち。
そして、いわき市の職人がつくった「常磐白水焼」の洗面台や地元の食材を自分で調理できる環境。
ゆっくり休みながらも、いわきを堪能しました。

Guest House & Lounge FARO iwaki
住所:福島県いわき市平三町目8-2 やまとビル
HP:https://faro-iwaki.jp/

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気づき

福島といえば「復興」って言葉はよく聞く言葉ですが、今回いわきに行ってみて、正直「復興のその先」の活動をされていると感じました。
マイナスからのゼロではなく、もはや良い土づくりになっていて、かなり大きな勢いを感じました。
今年から、白石さんは大きなハウスを建て、トマトやピーマン等の栽培を開始します。パフォーマー白石さんの今後の活動に注目です!

今回、白石さんの弟子・助川さんにもお話を伺ったので、次回もぜひご期待ください。(記事作成中)



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