note_26_NZできづいたたまごのこと

スギアカツキ【たまごのはなし】第26回 ニュージーランドで気づいた、美味しい卵料理のための3つのポイント

「たまご」から、国を知る

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先日(4月上旬~中旬)、初秋のニュージーランドに行ってきました。私にとっては2回目の渡新(ニュージーランドを漢字で表すと「新西蘭」)でしたが、その国の“食文化探求”を旅の目的にしながらも、ゆるゆると「たまご」との出合いを楽しみました。

ニュージーランドの食文化。皆さんはどのようなイメージを持っていますか? 歴史的背景や国民性(寛容でおおらか、環境への意識が高いなど)がベースになっていると考えられますが、イギリス領であったことからイギリススタイル(イングリッシュブレックファーストやフィッシュアンドチップス)がありながらも、海外の食文化を柔軟に取り入れた「多様性・変容性」こそが魅力とのこと。また、ヘルシー志向や環境への配慮の視点も重視されているそうです。

でも今回は、もっと気軽に。旅の途中に、私がふと気になった「たまごにまつわるエピソード・気づき」を3点、お話したいと思います。

1. たまごのスタンダードが「フリーレンジ」に

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ニュージーランドのスーパーに行くと、日本ではまだまだ少数派の「フリーレンジエッグ(放し飼い卵)」が確実に主流になっています。パッケージもさまざまなものが並んでいて、たまごを買う時の選ぶ楽しみも与えてくれるでしょう。ニュージーランドのたまごは、日本における「良いたまご」の概念とは、別次元。たまごの“おいしさ”とは一体何なのか?を深く考えさせられるとともに、おいしいという味覚以外の重要な視点についてもヒントを与えてくれています。

2. おいしいスクランブルエッグは、愛情を込めて「低温」で作る

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滞在中、朝食で食べた「スクランブルエッグ」が思いのほかおいしくて、ホテルの厨房に質問をしてしまった私。「どうやったらこんなにフワフワでおいしいのが作れるのですか? なにかコツはありますか?」と聞いたところ、「ゆっくり低温で、丁寧に作るんだ。それと、ご機嫌であること、愛情を込めることを忘れないでね。」との返答が。これ、ありきたりな回答のように感じるかもしれませんが、私にとっては、日常の自分を振り返る良い気づきになりました。知らず知らず、「とにかく手早く! ちゃちゃっと作ろう!」という意識が染みついていた私。忙しい朝にこそ、“食べる人(自分も含む)を想う気持ち”が持てたら、自分の人生はもっと豊かになるのかも……と、明るい未来を感じることができたように思います。本当においしい食事は、健やかな生き方をも導いてくれます。

3. 煮込み料理には、「ポーチドエッグ」を乗せて

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オークランドの人気レストランで出てきたのが、「ミートボールの煮込み」。上に乗っている“白くぽってりとした食べ物”が、何なのか? 最初はモッツァレラチーズ? と思ったのですが、食べてみたら「ポーチドエッグ」であることが判明。このマリアージュが素晴らしくて、「自宅でも作ろう!」と決心したのでした。そして、作ってみると、コツさえつかめば意外と簡単。「ポーチドエッグは外食のエッグベネディクトでしか食べたことがない」……という方に、ぜひチャレンジしてもらいたいなと思います。

【ポーチドエッグの作り方】
ポイント:新鮮な卵を使うこと。
1. 卵を割ってザルに落とし、水っぽい部分(水様卵白)を除いて、皿に入れておく。
2. 鍋に水1l、塩大さじ1、酢大さじ1/2を加えて火にかける。沸騰したらいったん火を止める。
3. 大きめのスプーンで鍋の湯をかき混ぜ、中心に渦ができるように流れを作る。そこにそっと卵を落とし、3~4分そのまま加熱する。卵に火が通ると、水面に浮かんでくるので、それをアク取りなどですくい、ペーパータオルを敷いた器に取り出し水気を切る。


文・写真:スギアカツキ/食文化研究家。長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)、女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)が好評発売中。
「みなさん、一番大好きな食べ物ってなんですか? 考えるだけで楽しくなりますが、私は『たまご』という食材に行きつきます。世界中どこでも食べることができ、その国・エリア独特の料理法で調理され、広く愛されている。そしてなにより、たまごのことを考えるだけで、ワクワクうれしい気分になってしまうんです。そこで、連載名を『たまごのはなし』と題し、たまごにまつわる“おいしい・たのしい・うれしい”エピソードを綴っていきたいなと思います」
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