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連載小説「オールド・クロック・カフェ」

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京町屋を改装したカフェは、一歩入ると時計の森。そこでは、時のはざまに置いてきた忘れ物を教えてくれる「時のコーヒー」があるという。
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#小説

『オールド・クロック・カフェ』1杯め「ピンクの空」 <全文>

 その店は東大路から八坂の塔へと続く坂道の途中を右に折れた細い路地にある。町家を必要最低…

deko
3年前
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小説『オールド・クロック・カフェ』 2杯め 「瑠璃色の約束」(3)

(1)から読む。 (2)から読む。 <あらすじ> ガラス工芸作家の泰郎は、鳩時計の「時のコ…

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3年前
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『オールド・クロック・カフェ』2杯め「瑠璃色の約束」 <全文>

 その店は、東大路から八坂の塔へと続く坂道の途中を右に折れた細い路地にある。古い民家を必…

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3年前
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『オールド・クロック・カフェ』5杯め 「糺の天秤」(3)

第1話は、こちらから、どうぞ。 前話は、こちらから、どうぞ。 * * * Fifth Cup of …

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1年前
47

『オールド・クロック・カフェ』5杯め「糺の天秤」(6)

第1話は、こちらから、どうぞ。 前話(5)は、こちらから、どうぞ。 * * * Time Flie…

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1年前
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『オールド・クロック・カフェ』5杯め「糺の天秤」(7)最終話

第1話は、こちらから、どうぞ。 前話(6)は、こちらから、どうぞ。  聖アグネス教会のバ…

deko
1年前
47

『オールド・クロック・カフェ』5杯め「糺の天秤」<全文>

 その店は、東大路から八坂の塔へと続く坂道の途中を右に折れた細い路地にある。古い民家を必要最低限だけ改装したような店で、入り口の格子戸はいつも開いていた。両脇の板塀の足元は竹矢来で覆われていて、格子戸の向こうには猫の額ほどの前庭があり、つくばいの傍らで桔梗が揺れている。格子戸の前に木製の椅子が置かれ、メニューをいくつか書いた緑の黒板が立て掛けられていなければ、そこをカフェと気づく人はいないだろう。  そのメニューが変わっていて、黒板には、こんなふうに書かれている。  なぜメ

『オールド・クロック・カフェ』6杯め「はじまりの時計」(1)

 その店は、東大路から八坂の塔へと続く坂道の途中を右に折れた細い路地にある。古い民家を必…

deko
11か月前
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『オールド・クロック・カフェ』6杯め「はじまりの時計」(2)

第1話は、こちらから、どうぞ。 ✻ ✻ ✻ Suspicious Shadow ✻ ✻ ✻  ランチの客…

deko
11か月前
57

『オールド・クロック・カフェ』6杯め「はじまりの時計」(3)

第1話は、こちらから、どうぞ。 前話(第2話)は、こちらから、どうぞ。  桂子が盆にグラス…

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11か月前
57

『オールド・クロック・カフェ』6杯め「はじまりの時計」(4)

第1話は、こちらから、どうぞ。 前話(第3話)は、こちらから、どうぞ。 * * * Time Co…

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10か月前
49

『オールド・クロック・カフェ』6杯め「はじまりの時計」(5)

第1話は、こちらから、どうぞ。 前話(第4話)は、こちらから、どうぞ。 * * * Lost …

deko
10か月前
47

『オールド・クロック・カフェ』6杯め「はじまりの時計」(6)

第1話は、こちらから、どうぞ。 前話(第5話)は、こちらから、どうぞ。 * * * Bitte…

deko
10か月前
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『オールド・クロック・カフェ』6杯め「はじまりの時計」(7)

第1話は、こちらから、どうぞ。 前話は、こちらから、どうぞ。 * * * Confession * * *  なにかを言いかけて口を閉ざした母に桂子は、 「別のことって何?」と問いかけた。  顔見世観劇の同じ記憶を思い出したけれど。あたしがお母さんを避けてきたのは、いじめの告白とは異なる、まったく別のことが原因やと思っていたのだろうか。あのシーンのどこに、そんな場面が。 「たいしたことやないから忘れて」  母が大げさにふる手を父がつかみとる。 「万季さん、逃げたらあかん