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分かりあえなくても

同じ場所、同じ時間にそこに在ろうとも全く違った世界に時々見えることがある。
漂う空気の匂いと肌寒さが知らない土地に来たような感覚を感じる。
夏を惜しむ間もなく、秋が色濃い季節になった。
「金木犀の匂いがするね」
言葉とは裏腹にまだ夏を忘れられていない格好のあなたは将来の不安を微塵も思わせないような無邪気さで私に語りかけた。
その時、私は金木犀の匂いがあまり好きではないことを初めて知った。

私たちは生まれも齢も育ってきた環境も受けてきた教育もまるで違う。
だからこそ違いがあるのは当たり前で、でも、なんとなく居心地の悪さを覚えることもある。
そんな時は一人でいたくなることもある。
どうしても、私は私のために。あなたはあなたのために。また一方が一方のためにと考えてしまう。

でも、こうも思う。
私はあなたのおかげで私の知らない私を見つけることができる。私もあなたの知らないあなたを見つけることができる。
私たちは二人でいるようで私たちという一つなんだと。
似たもの同士は友達になれる。
けれど、似てないもの同士はそれ以上になれると信じている。

鈴虫の鳴き声が響く夜
一人でいたいのに一人だと寂しいと思うぐらい私たちはまだ未熟だ。


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