「言絶えた実在の知覚」を「思い出す」
現代の文学は、沈黙を恐れている、その饒舌さは、この恐れを真の動機としている。俳句ぐらい寡黙な詩形はない。芭蕉は、詩人にとって表現するとは黙することだという逆説を体現している。言葉にならない知覚、すなわち「言絶えた実在の知覚」がなければ、文学ではないと小林秀雄はいう。
初対面の数学者・岡潔と意気投合し、半日かけて語り合った『対談/人間の建設 岡潔・小林秀雄』(「小林秀雄全作品」第25集。新潮文庫版もあり)にも、小林秀雄の俳句「観」が述べられている。
30年来の付き合いがあっ