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【取材】ロッテのサステナビリティ推進(後編)質の良い雑談が生むもの

こんにちは。後編では株式会社ロッテの、ダイバーシティ推進への取り組みや多様性について、前半・中編に引き続き菅井さんと飯田さんにうかがったお話を紹介します。

公益財団法人流通経済研究所
上席研究員 石川 友博
研究員 寺田 奈津美

※前編・中編はこちら👇


ダイバーシティ推進で大事なのは、「多様な人がいること」じゃなくて、自由にものが言えること

――ダイバーシティについて、多様な人材のそれぞれの良さを生かすためのポイントは何でしょうか?

飯田さん:大事なのは、「多様な人がいること」じゃなくて、それぞれがちゃんと意見を出して、それがイノベーションに繋がることです。多様な人がいるだけではなく、好きにものを言えて、ちゃんと議論ができなくてはいけません。会社の上下関係を気にして、言うべきことを言えない会社の風土ではいけませんので、ロッテでは服装を自由にしたり、オフィスをフリーアドレス化したり、上司や社長も「さん」付けで呼ぶ「さん付け」運動などの取り組みを行っています。
 日本人の特性として、かつては「控えめ」、「横並び」ということが重要視されてきた中で、方向転換の特効薬はなく、あの手この手でやり続けることが1番重要ではないかと思います。

ロッテカラフルプロジェクト
DEI推進のために、2023年度に立ち上げたプロジェクトで、誰もがいきいきと活躍できる組織を目指し、セミナー、イベント、社内報企画等を実行している。その一つとして、グループ3社の女性部長によるパネルディスカッションを実施し、女性のキャリア意識向上につながるようロールモデルの提示を行った。

マネージャー層と若手のギャップをいかに埋めるかが企業の進化の鍵

――マネージャー層への取り組みとして、マネジメント研修などでダイバーシティについてお話されるときに抑えるポイントや苦戦されることはありますか?

菅井さん:とても難しいと感じています。多様性とか言われる時代じゃなかったですから、昔は。右向けって言われたら右を向く人たちが重宝される時代でしたし。今は「自由に自分の思ったことを言いましょう」という時代になってきているので、昔の感覚を持ち続けていると違和感を覚えることが多いと思います。どのように若い世代と接し、育成していくのか、今の世代への理解を深めて自らの意識を変えていくことが必要になってきています。

雑談をきっかけに自由に話ができる場を作る

――ダイバーシティを推進する上で、菅井さんが意識されていることは何ですか?

菅井さん:そうですね、自分の価値観だけで判断しない、自分の枠を作らない、ということでしょうか。
 自分の価値観だけで見ちゃうと、「あ、私はこの人と合わない」と、自分の基準で判断して「合う、合わない」と勝手に決めて、それで壁を作ってしまう、ということがありがちだと思います。私は「この人はなんでこういうことを言うのかな。」と、自分と違う考えを持っていることに興味を持ってしまい、「なんでそういう風に考えたんですか?」って質問しちゃうんですよ。
 自分の価値観だけで合う合わない、好き嫌いを決めちゃうと、拡がりがなくなってしまいますが、純粋に違いを楽しむというか、「この人とこんなに違うんだけど!」というのを面白がると、話も色々な方向に広がって、思いもしなかった考えが出てきたりします。

 自分と違う人の考えを面白がって、「あ、こんなに面白い人がいる。あ、ここにも面白い人がいる!」みたいになってくると、輪ができて、そこからいろんな雑談が生まれて、いつの間にか面白いアイデアが出てきて。
 そういう雑談の多さが大事だと思います。それがどんどん質の良い雑談になってきて、そこから仕事の話に自然と流れていくと、「それ面白いじゃん」みたいなことがヒントになって、今までも新しいアイデアに繋がっていることが多いなと思います。自分の価値観だけで決めないで、自分と違う価値観を面白がってみると、明らかに世界は変わると思います。

――雑談の多さって大事ですよね。雑談が多いほど仕事のクリエイティビティにつながっている気がします。

菅井さん:やっぱり普段から雑談で気軽に話せるような関係性を築くことが大切だと思うんですよね。だから、服装やオフィスの雰囲気を変えて、かつ、そこで質の良い雑談がいかにできるか。ここまでがセットにならないと次に繋がっていかないので、「今日天気悪いよね」とか「花粉症じゃない?」とか、なんでも気軽なことでいいので、会話の最初のきっかけをつくるように心がけています。
 そこからいろんな人と雑談を繰り返していくと、周りの人も話の輪に入ってきたりして、自然と「あの仕事よかったよね」「そうなんですよ」みたいな話になって。それで、私も情報を聞けるし、私もそれに対して意見を言って、「あ、そのアイデアいいですね!」となったりします。これを色々なところで繰り返していくと、職場の雰囲気はすごく変わると思います。

 自分の価値観が正しいわけじゃない、それが全てじゃないっていうことを自覚することから、相手の価値観が面白く見えてきます。それって、自分にとって得なんじゃないのかなっていう気がします。人の価値観を聞けるなんて、自分じゃ思いつかなかったことを教えてくれてありがとう、という感じですね。
 「イノベーション」「ダイバーシティ」というとすごく難しいものに感じますけど、本質は、「いかにみんなと喋るか」、ということだと思います。みんなアイデアを頭の中に持ったままにしているので、それをいかに自由に、活発に話をさせられる場を作るかがダイバーシティの推進につながっていくと思います。

それぞれの強みを伸ばす、それが結局多様性になる

――もともと菅井さんはそういうお考えをお持ちだったのですか?

菅井さん:私も昔は雑談する時間がもったいないぐらいに思って仕事をしていた時期もありましたが、結局それは自分が苦しむっていうのがよくわかったんです。
 それまで所属していた部門から異動して仕事の内容が大きく変わったことがきっかけだったのですが、自分よりチームのメンバーのほうが知識や経験が豊富で、何から何まで聞いて教えてもらいながら進めていく、ということがありました。その時に、「あ、こういう仕事のやり方があるんだな」と、チームワークを身に染みて感じました。「私ができないことはこの人ができる、ここは私が得意だけどこの人は苦手だから私がやるほうがいいかな」とか、自分で全部やらなくても、できる人がいるなら補完してみんなでやればいいじゃん、というシンプルな結論に至ったんです。

 それがわかってからは、それぞれの仕事を得意な人に積極的にお願いするようになりました。仕事をお願いした人も、自分の得意分野なので高いモチベーションで進めてくれて、どんどん活躍してくれました。やはり、「強みをいかに伸ばすか」というのは重要なことですね。それぞれの強みを伸ばすと個性が際立ってきて、それがある意味多様性になってくるんですよね。

 私のイメージではまさに「戦隊ヒーロー」みたいな感じです。赤は赤の良さがあるし、青は青の良さがあるし、赤がリーダー的な役割だけど、別にトップに来るわけじゃない。とにかく「みんなで力を合わせて頑張ろうよ」みたいな。
 それぞれが自分の個性を活かせるような雰囲気を作っていくと、チームとしての力も更に高まっていく。それが一番いいやり方なんじゃないかなと思っています。

戦隊ヒーローのようにメンバーそれぞれの個性・強みを生かすことが、
菅井さんがダイバーシティの推進において目指している姿。

まとめ

 今回はロッテのサステナビリティの取り組みについて、サステナビリティと事業業績の両立のポイントや、気候変動対策、人権対応、ダイバーシティ推進などの取り組みをご紹介しました。
 サステナビリティの取り組みを推進するうえで、特に重要なポイントとして、以下の3点が示唆されました。

① 「時間軸」の視点を持つことで成長とサステナビリティのコンフリクトは起きない
② 「噛むこと」の取り組みは消費者の健康面での利益だけでなく、売上も向上させるキーポイント
③ ダイバーシティは「多様な人がいること」ではなく、誰もが自由に発言し、議論できること

 ロッテの事例をきっかけに、サステナビリティ推進にチャレンジする企業が増えることを期待しています。
 特に、中小企業のサステナビリティの取り組みは現在求められており、光が当たりやすい状況です。まずは、自社のマテリアリティを整理して、1つの取り組みから始めることを検討してはいかがでしょうか。

菅井さん、飯田さん、ありがとうございました!

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