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【取材】全員活動で地域、社会、環境の向上に貢献 バローのサステナビリティ(中編)

こんにちは。中編では株式会社バローホールディングスの、リサイクルや地域社会、買い物課題への対応等について、前半に引き続き冨永さんにうかがったお話を紹介します。

公益財団法人流通経済研究所
上席研究員 石川 友博
研究員 寺田 奈津美

※前編はこちら👇


テーマ3 リサイクル:店舗が資源回収ステーションとなり、リサイクルが当たり前の状態を作る

――リサイクルのテーマについて、どのような状態が理想で、理想を10点満点とすると、現在の達成状況は何点と評価されますか?

冨永さん:理想としては、店舗が資源回収のステーションとして機能し、また、リサイクルされた商品を販売することなど、普段の営業の中にリサイクルを組み入れることがあげられます。地域の方々の日常生活の中でリサイクルや資源回収がより一般的になり、それが生活の一部として当たり前になることも理想です。 

 現在、2022年4月からサントリーさんと共同で、ペットボトルを原料として再びペットボトルにする「ボトルtoボトル」の取り組みや、発泡スチロールや紙パックなどの資源回収を実施しており、基本的なことはできていると考えています。
 「ボトルtoボトル」の取り組みは、従来のリサイクルと異なり、ペットボトルが繊維などの別の製品に生まれ変わるのではなく、ペットボトルの水平リサイクルが可能になることで、資源の無限循環を促進します。このアプローチにより、よりサステナブルな資源利用が実現するという点を評価すべきだと考えています。
 
 また、今後、家庭で使用された廃油の回収・再利用の実施も検討しており、ワンランク上の活動に進化しつつあるという点で、6点と評価しました。

可児市での「ボトルtoボトル」の取り組みイメージ図

――リサイクルの取り組みでうまくいかなかったことや、やり残したことはありますか?

冨永さん:弊社の研修センターの敷地内に「大森の径」という自然豊かな散歩道があり、そこを歩くイベントなども開催しています。そのようなイベントに集まっていただける方の多くは自然が好きだったり、普段から環境に配慮する意識を持った方々です。

 そのようなせっかくのイベントの機会に、リサイクル品を使ってみる体験を通じてリサイクルの良さや、リサイクルすることの大切さを伝えるといった対話の機会を持つことができなかったことです。イベントを楽しんでいただくのが一番ではありますが、座って話を聞く時間もあったので、ちょっとそのようなトピックを織り交ぜてもよかったのかなと思います。

研修センター内で開催されている「大森の径探検」イベント

テーマ4 地域社会:地域イベントで子どもたちに楽しい文化的体験を提供

――地域社会というテーマでバローさんが目指していらっしゃる理想はどのような状態なのでしょうか?また、今年度の取り組みで実施してよかったことはなんでしょうか?

冨永さん:誰ひとり取り残される人がいないこと、また精神的に健康的に安心して暮らして楽しく生きていけるような、そんな社会が理想です。

 よかったことは、行政との連携や、地域の子ども食堂や社会福祉協議会などの地域の団体との関わりを深めることができたことです。そういった関わりを通じて、地域の子ども食堂さんに出向いてイベントを開催したり、地域のイベントに参加させていただいたりと、地域の方々や子どもたちに楽しい体験を提供できたのではないかと思います。さらには、これらを通じて、フードドライブからの食品提供につながるような関係を築けたと思います。

――イベントへの参加などを通して地域の団体との連携を深められた一年だったということですが、イベントでの楽しい体験の提供とは具体的にはどのような内容なのでしょうか?

冨永さん:子ども食堂さんのところに私たちサステナビリティ推進室のメンバーが赴いて、そこで開催される夏祭りのイベントにブース出展をさせていただいたり、クリスマスの時期には、子ども食堂さんで私たち主催のクリスマス会を開催し、そこでビンゴ大会やワークショップなど、皆さんに楽しんでいただけるような取り組みをやってきました。

イベント出展の例

冨永さん:2024年度の取り組みとして、先月(2024年2月)、地域の子ども食堂に通うお子さんや保護者の方、ご家族を対象に節分イベントを開催しました。
 このイベントでは、農林中金さんとタマノイ酢さんというお酢の会社さんとコラボをさせていただいて、お箸で豆をつかんで食べさせる豆掴みゲームや、タマノイ酢さんの「すしのこ」という商品を使った酢飯で恵方巻きを作るクッキング体験を行いました。
 
 ほかにも、このイベントでは豆まきも行いました。近年、近隣との交流が薄れている中、子どもたちの中には庭で豆まきをする経験が少ない子も多くいます。そのような状況の中で、伝統的な行事を地域で体験してもらうことができたことはよかったと思います。

節分イベントでの豆まきの様子

冨永さん:それとは別のイベントで、地域の障害者施設の方向けに、弊社の研修施設を利用してバレンタインのチョコ作り体験を開催しました。研修施設の食堂のシェフに講師となってもらい、工程を紹介しながら、一緒にチョコを作ったり、試食したりと、楽しんでいただけたのではないかと思います。

――豆まきやお菓子作り体験など、最近では子どもたちが経験する機会が減っているような楽しい伝統行事の体験や、家庭的な体験をもう一回楽しんでもらえるきっかけを、子どもたちや地域の方々に提供することで、地域の結びつきに貢献できたということなのですね。

バレンタインのチョコ作り体験の様子

――バローさんは名古屋市や岐阜市といった自治体と包括連携協定を結び、地域社会の課題解決に取り組まれていますが、自治体さんとうまく連携する方法や成功している取り組みはありますか?

冨永さん:私たちは小売業ですので、一番は売り上げを優先せざるを得ない面はありますが、自治体との連携は最初から売上のために連携しようとしてもなかなかつながっていただけるわけではありません。
 名古屋市との連携協定は、地域社会の課題解決のためにやりたいという共通の思いが合致し、締結につながりました。一方で、地元の課題解決に向けて活動している姿を地域の方に見ていただき、食品を購入してくださった事例もありました。ですので、まずは売上ではなく、地域のためにどのような活動を一緒に進めていきたいのかという意識で取り組みを始めることが、結果、連携を成功させ、売上にもつながってくる重要なポイントだと思います。

 成功した取り組みとして、例えば、岐阜市との取り組みのきっかけはフードドライブでしたが、包括連携協定を結ぶことによって、集めた食品の円滑な提供につなげることが可能になったほか、岐阜県の窓口を通じて出張授業の依頼を受け付ける仕組みができるなど、活動の範囲がフードドライブに限らず、より広がりを持つようになったと思います。

テーマ5 買物課題:買物困難の解決に向けたネットスーパーの範囲拡大

――買い物課題のテーマについて、理想はどのような状態でしょうか?また、現状は10点満点でどのくらいまで来ていると思われますか?

冨永さん:地域の皆様が買い物を楽しんでいただけることが理想です。高齢の方や外出が難しい方々にも、お買い物を楽しんでいただける環境を提供したいと考えています。現状としては6点くらいだと思います。

――この一年でやってよかった取り組みはなんでしょうか?

冨永さん:私たちは「ainoma」というネットスーパー事業を行っていますが、その対象地域を拡大することができたことです。食品をお届けするところまで担っていますので、買い物難民と言われる方や、お体の不自由な方にもご利用いただけるという点で、対象範囲が拡大し、使っていただける方も増えたため、よかったと思います。

 また、ネットスーパーは数年前から始まったシステムで、最初は本社事務所近隣からテスト的に開始したのですが、そのシステムが形になってきたことで、他の地域でも展開できるようになりました。まず形ができたということがよかったと思います。
 理想としては、地域の皆様にこのネットスーパーのシステムを知っていただき、実際にご利用いただけることですが、現在、お客様にスムーズに商品をお届けする運営側のオペレーション体制が整いつつあり、理想に向けて順調に進んでいると思います。

ネットスーパー「ainoma」

冨永さん:一方で、地域の社協さんなどとお話しする際に最近よく耳にするのが、特に高齢者の方が多い地域での買い物難民の問題です。そのような問題を背景に、「バローさんで移動販売ってやってないんですか?」とか、「していただけたらありがたいです」というふうにお話をいただくこともあります。地域の皆さんにお買い物を楽しんでいただくことが理想ですので、将来的に買い物にお困りの方がいらっしゃる地域での移動販売にも対応していきたいと考えています。

※後編では、人材活躍や、サステナビリティ推進の理解浸透や情報発信についてうかがったお話を紹介します。

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