夢を叶えた五人のサムライ成功小説【川端雄平編】7

この作品は過去に書き上げた長編自己啓発成功ギャグ小説です。

センチュリー吉田の歌が終わるまで柴田は、マシンガントークを浴びせる雄平の気持ちを強く受け止めていた。


由里の叫び声が聞こえる。
舞台でセンチュリー吉田と何か言い争っている。


雄平は急いで舞台まで走りだし、由里のシャツの袖口をつまんで引き寄せた。


『こんな奴にかまうなよ。どうしたんだよ、いったい』
『身体を武器にして音楽と男心を弄ぶなんて許せない』
『由里・・・』
雄平はそっと彼女を抱き締めた。

席に戻り、三人は出来たて熱々のピザを頬張った。
『めちゃ、うまいやないかい』


やはり、柴田は二重人格者のようだ。
先ほどまでのクールさはいったい、どこに消えてしまったのだろうか・・・。


『かぁ~、うますぎるで~。口の中が思わずパラダイスや』

由里もどうかしたのか。
柴田に感化されてしまったのだろうか。


同じようにテンションがあがりまくり、ピザの美味さを独特な表現で吠えた。


『きゃ~、ほんとウマウマ。顔面蕩けてピザ女になりそう』
『由里、マジでうまいやろ。うまいやろ。がはは』
『うん、柴ちゃん。たまらんよ、これ』


もはや、二人の思考はぶっ飛んでいた。
雄平は一気に疲れはてた心境でイライラ度数はエンゲージメーターをぶっ壊していた。

舞台では三人目のミュージシャン、ナンセンス南がド派手に歌を披露していた。


サラリーマンらしいがその強烈なキャラぶりは眼を見張る異常さがあり、見るものの心に嫌悪感と吐き気を与えた。

バー内はブーイングの嵐。

雄平は溜め息の連続で怒りを通り越していた。
こんな奴らばかりかよ。
真面目にプロを目指している俺が馬鹿じゃないかよ。

ナンセンス南が白装束の着物を突然脱ぎ捨てると、褌姿に早変わりし、胸にはマジックで【歌LOVE】と書かれていた。


今度は雄平が我慢の緒が切れて舞台に上がりだした。
ナンセンス南の胸ぐらならぬ凄まじい量の胸毛を掴んで怒鳴る。


『おまえら、音楽を馬鹿にするんじゃねぇ』
バー内に笑いが巻き起こった。
雄平に疑問が生じた。
『何故だ?ここは客も馬鹿なのか。ここは馬鹿の集まりなのか』

呆然と立ち尽くす雄平にナンセンス南は一言だけ答えた。


『俺たちは音楽に命を賭けてるんだよ』
雄平はもうどうでもよくなった。


意気消沈した雄平の存在など存在しないように、ナンセンス南は歌い続けた。


柴田は落胆した表情を隠せぬまま戻ってきた雄平に一言だけ、そっと呟いた。
『とにかく最後までおとなしく見ていることだ』


外では夜空が無数の星たちの点在を美しく街行く人たちに見せつけていた。
優雅にそれぞれの星が自分自身を誇示するかのように。

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