夢を叶えた五人のサムライ成功小説【高木京子編】4

この作品は過去に書き上げた長編自己啓発成功ギャグ小説です。

翌日、出版社に原稿脱稿の連絡を入れた。


妻でもあり、秘書でもある彼女の役割で、少しでも夫の力になりたいと協力を申し出たことを、啓太が承諾したのだった。


最初は随分と戸惑ったものの、京子の執拗な気持ちに負けて、加筆修正や誤字脱字チェックまで今では一緒にやってくれるまでになっていた。

現在の京子は三役を買ってでていた。
妻であり秘書であり、衣料販売員でもあった。


京子は長い年月を費やして自分自身を磨いていった。
それを支えたのは当時、フィットネスだけだった。

やがて唯一、啓太だけが妻に対して理解を示した。


幸せとは疎遠だった京子は、辛い学生時代と社会人時代を過ごしていた。


いつしか積み重なった心の負担が自分自身の幸せさえも捨てるようになっていたものの、かすかな悔しさがバネとなってフィットネスジムの門を叩くことに繋がった。

啓太との暮らしが京子を変えていく。
失望のなか、幸せへの期待が膨らむ。


それから数年を経た現在、京子は当初とは比較にならない気遣いの出来る女性に成長を遂げていた。
少なからず啓太は京子の秘めた可能性を信じていた。

そして温泉旅行に行く前夜を迎えていた。
『あなた、この旅行を終えたら仕事は辞めるわ』
『私は構わないがようやく人から認められたと、あんなに喜んでいたじゃないか』


『そうだけど何か楽しさを感じなくなったの。あなたの仕事を手伝っているうちに、もっともっと協力をしたくなったの』


啓太は嬉しさのあまり、胸が詰まった。
目頭が熱くなったのを覚えずにはいられない。

『書いてみたいな・・・』
『えっ?』
『ううん、なんでもないの』
『そうかな』
『独り言よ』


静寂な夜、赤一色に身を染めた目覚まし時計の時刻は午前零時を告げていた。
二人はやがて深い眠りの世界に陥った。

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