成績が伸びる生徒に共通する、ある特徴とは
――ある日の授業にて。
私 「先週の課題はできましたか?」
生徒「課題って、ノートにやるんでしたっけ?」
これまで多くの生徒さんに接してきましたが、成績が良い生徒さんや成績が伸びていく生徒さんには、一つの特徴があります。それは、問いかけに対する受け答えが的確であるということです。「的確である」とは、こちらが求めている情報をきちんと返してくれるということです。
受け答えが的確であると成績が伸びやすい理由
問いかけに対し、成績が伸び悩む生徒さんからは、ずれた(的確でない)答えが返ってくることが少なくありません。冒頭のやり取りがその例です。
生徒の発言は、問いかけに対して無関係ではありませんが、「できましたか?」に対する直接的な答えにはなっていません。ずれています。
なぜ、問いかけに対する受け答えが的確であると、成績が良い、あるいは成績が伸びやすい傾向があるのか。それには、主に三つの理由があると考えられます。
理由① 理解力がある
受け答えが的確であるということは、話し手の意図を的確に理解(把握)できているわけです。これはそのまま、授業において私たち講師が伝える知識や考え方を的確に理解できるということにつながります。だから、成績が伸びるのは当然です。
理由② 題意把握の力がある
問題を解くことは、問題との対話です。問題文から出題(者)の意図を的確に把握して、それまでに蓄えた「知識」や「思考の型」を利用して、題意(問題の意図)に妥当する解を出題者に返さなくてはなりません。したがって、題意を的確に把握することは、問題を的確に解くための前提であると言えます。受け答えがしっかりしていて理解力があるということは、題意把握の力がある、ないしは、題意把握の準備ができていると言えます。
理由③ 言語化(=論理的な思考)の力がある
的確な受け答えのためには、問いかけを理解するだけでなく、その問いかけに対して、適切な日本語の文章で回答しなければなりません。そのためには、答える内容を頭の中で組み立て、文法的に整合させて言語化(文章化)することが必要です。このプロセスは意外と頭を使う作業です。したがって、言語化をスムーズに行えるならば、論理的な思考を素早くできる力があると言えるでしょう。この力は、問題を解く際に効果を発揮します。
的確な受け答えができない原因とその対策
問いかけに対する受け答えに「ずれ」がある生徒さんは、私たちの説明をずれて理解したり、問題の意図をずれて解釈したりしてしまいがちなため、良い成績には結び付きにくくなってしまいます。
厳密に調査したわけではありませんが、この「ずれ」には二つの原因がありそうです。
「ずれ」が生じる原因➀ 背景知識が足りず、問いかけを理解できない
授業で問いかけを発したとき、答えに詰まる生徒さんに「いま、何が問われているか分かりますか?」と尋ねると、実はそれが分かっていないというケースがあります。
例えば、難しい本を読むとき、日本語は追っているけれども何を言っているのかイマイチわからない、ということを経験したことはないでしょうか。「聞いているけれど分からない」というのは、このような状況です。
これは、問いかけを理解するための背景知識が足りないことが原因であることが多く、問題を解いたり解説を聞いたりするような、問いかけを理解するためにある程度の知識が必要な場面でよく見られます。
授業においては、問いかけの内容をもっと簡単にしたり、問いかけを受ける側の勉強が進めば、多くの場合は解決します。
「ずれ」が生じる原因② 的確に返答しようと思っていない
もう一つは、問いかけの意味を捉えられているものの、的確な返答を行おうという意識が欠けていて、問いかけに含まれる特定のワードにだけ反応してしまっている場合です。相手の問いかけの内容を無視し、自分が言いたいことを言っているだけですので、「正しく聞く」ことができていません。ずれが生じてしまうのも当然と言えるでしょう。
本人の自覚がないだけに、このケースは、上記原因➀よりも深刻だと思われます。プロローグでご紹介したやり取りも、まさにこのパターンです。
これは、訓練の問題です。的確な受け答えを行うための第一歩は、「的確な受け答えをしよう」と意識することです。逆に、そう意識することによって、問題の半分は解決できると思います。これは、私の実体験でもありますし、また、そのように意識してみるように促すことで、次第に受け答えの的確さが向上していった生徒さんも、実際にいらっしゃいます。
「いま返そうとしている答えは、問いかけに対する直接的な回答になっているのだろうか?」と自己チェックする訓練により、受け答えの的確さは向上するはずです。
対話型の指導は、的確な受け答えができるようになるためにも効果的
翻って、私たちが行っている対話型の指導は、的確な受け答えを行う力を育むためにも有効だと考えています。
ずれた回答をしがちな生徒さんに対しては、直接的に問われていることがきちんと理解できているか、また、回答がずれていることを自覚してもらいながら、授業を進めていくことがあります。(もちろん、常にこれをやってしまうと、スムーズな対話がかえって阻害されることがあるため、ほどほどにしています…。)
「正しく聞く」ことは、的確な受け答えの第一歩です。正しく聞ければ、問題文を「正しく読む」こともできるようになり、「正しく話す」、「正しく書く(解答する)」こともできるようになるでしょう。
社会に出てからは複数のメンバーと協働して仕事を遂行する場面が多くあります。その際、「話が通じない」と、他のメンバーと円滑にコミュニケーションをとることができず、仕事を滞らせてしまう場合がありえます。
そうならないためにも、今のうちから、的確な返答を行おうと意識することが大切だと思います。
問いかけに対して的確な受け答えができているかどうかは、日常会話でチェックや訓練ができると思います。可能な範囲で、ご家庭でも取り組んでいただければ、きっと成績向上に貢献すると思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
このnoteでは、教育家夫婦が開いた大学受験の小さな塾「Dear Hope」のスタッフが、大切にしていることや、日々考えていることなどを書き記していきたいと思います。
今後とも、よろしくお願いいたします。
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