「想早知遅」「想兎知亀」〔コイネージ【新造語の試み】6-3〕
「先走る"想い"に対し、"知性"が追いついていない言動」。
これを意味する
「想早知遅」「想兎知亀」
という言葉を新たに造り、そう呼んでみる。
「想」早きこと兎の如く、「知」遅きこと亀の如し。
「こうしたい」「こうありたい」という"想い"はあるものの、その想いを実質的なものにする"知"が伴っていない発言や行動をさす。
例えば、「失敗名言」。
カッコつけて名言っぽいこと言ってみたが、イマイチな反応だったというケース。
本人としては「いいこと言って賢いとこ見せたい!」という想いがあるのだろうが、ピントがずれていたり、思慮が不十分だったりで知が伴っていないことがある。
例えば、以下のセリフ。
・「イチローになりたいと思っても、イチローにはなれない」
(↑別にイチローに憧れないしな。そこで出すならせめて「プロ野球選手」か「メジャーリーガー」ですよ。だとしても、"普通"だけど)。
・「本気で努力すれば、スティーブ・ジョブズにも勝てる」
(↑勝てません。月並みだが、あんたやってみろ。そもそも努力好きほど「人を動かす努力」を怠るから、よきリーダーにすらなれないんだがな。よきリーダーにもなれないのに、ジョブズに勝てるわけないんだが)。
・「やりたいようにやりたいなら、ラーメン屋開け」
(↑ラーメン屋なんか開かず、割とやりたいようにやってるけど、今のところ不都合ないな。わざわざラーメン屋開かんでも、あなたと金輪際関わらなければいいだけの話。そもそも、「やりたいようにやれば、ラーメン屋くらいは開ける」と思ってるとしたら、飲食業舐めてるよね)。
これらは、僕自身が(パワハラ気味の上司、鼻持ちならない先輩に)実際に言われたことがあるセリフ。
覚えてはいるが、まったく核心を突いておらず、「申し訳ないがマインドセットとしては少々用い難い」と判断させてもらっている。
このような、「いいこと言いたいかもしれないが、イマイチしっくりこないセリフ」「名言っぽく言いたい雰囲気醸し出しているが、『なるほど』とは思えない言葉」というのは、
「敷衍ができない」。
つまり「どういうこと?」と、意味や趣旨を押し広げた説明を求めても、セリフを繰り返すこと以上のことができないという特徴がある(実際にそうだった)。
これは「思慮の礎」が無いことの証左だ。
他人が気づかない物事の本質を見抜く「洞察の力」や、
因果関係の説明をロジックをもって紡ぐ「考察の力」、
その言葉を相手は必要としているかを見極める「状況判断の力」。
そして、より良い答えを求めるために自分の正しさを相対化する「精神の力」
が決定的に不足している。
ゆえに、思いつきかクリシェ由来の不完全な文言しか出てこない。
しかし、「カッコつけたい」「賢い自分をアピールしたい」"想い"のみが先行しており、さらに相手が自分より目下・年下・格下であれば、"調子にのって"口に出してしまうかもしれない。
もちろん、相手の"心"にとってそんなものは関係ない。「思慮の礎」がないことは相手には容易に伝わるし、そもそも求めてないのに琴線に触れることもない。
ゆえに、袂を分った後、容易に無視・反逆されてしまう(カッコ書で示したように)。
まさに、「自分をよく見せたい」"想い"に、「思慮」すなわち"知性"が追いついていない、「想早知遅」「想兎知亀」である。
名言・格言というのは、価値創出に向けた真摯な試行錯誤と行動の末に出る、「副産物」のようなもの。
「自分をよく見せたい」という「邪な想い」の下で生まれるものではない。
(過去に投稿した記事の続編)
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