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「想早知遅」「想兎知亀」〔コイネージ【新造語の試み】6-1 Ver.2〕

「先走った"想い"に対して、"知性"が追いついていない状態」。


 このような意味をもつ、「想早知遅(そうそうちち)」「想兎知亀(そうとちき)」という言葉を独自に考案したので、提案してみます。

 「想兎知亀」は、カメとウサギの寓話に着想を得た言葉で、「想早知遅」と同じ意味です

1 「想早知遅」「想兎知亀」の趣旨・一例

 僕の考える「想早知遅」「想兎知亀」のイメージとしては、「何かをしたいという"想い"」のみがウサギのごとく突っ走り、「具体的な考えや行動、すなわち"知"」がカメのごとく出遅れてるといったものです。

 その一例が「コミュニケーションにおける言葉足らず」

 相手に対して「何か言いたい、伝えたい」という気持ちはあるものの、「考え」や「言葉」がまとまらなくて巧く言えず、やきもきする感じを誰しも一度は経験したのではないかと思います。

 このときこの人は、「何か言いたい」という想いに対して、「何を言うか」が追いついていない、ということができます。

2:具体例①


 例えば、論戦おいて、相手に完璧に論破されたとします。

 相手の論破行動の是非はさておき、された側としては当然、

「悔しい、一矢報いりたい」

といった"想い"が募る。

 しかし、調査や考察が不足しているうえに、相手に論破されたことで精神がかき乱され、冷静な判断がしにくくなっている。

 結果、有効な反論が浮かばず、不快感とともに押し黙るしかない心境は推して知るべしでしょう。

 このとき、論破された人は、「言い返したい」という"想い"のみが先走り、「有効な反論」という"知"が追いついていない、といえるでしょう。 

3:具体例②

 例えば、久々に会った友人が「新規事業を立ち上げ、こう展開したい」と言い、自分の理解の及ばぬ構想を説明したとします。

「腑に落ちない、物申したい」

 自分の理解の範疇を大きく超える話をされて、複雑な想いを抱えながら「よくわからないけど、うまくいかないんじゃない?」と意見したい。

 しかし、理解不足で話を踏まえておらず、稚拙なことしか言えません。「うーん…」と頭を抱えるしかないでしょう。

 これこそ、「相手に対して意見したいが、言葉が巧く出てこない」。「想早知遅」「想兎知亀」の典型例だと思います。

4:具体例③

 例えば、自分の同僚が、同じ作業を自分と違うやり方でこなしていたとします。

「なんか気に食わない」

 自分のと違うやり方をされることに拒否反応があるというか、なんか面白くない。「そのやり方はここが良くないよ。このやり方の方がいいよ」と言ってみた。

 しかしその同僚も"考えながらやっています"。「知ってるよ。そのやり方はメリットを上回る、こういうデメリットがあるから採りたくないんだよ」と思われて、無視されるか面従腹背かでしょう。

 仕事の細かいやり方など最終的には「好み」です。そこを大きく超える合理性・客観性を説明できなければ、その同僚は結局自分のやり方を変えないでしょう。

 これも、「自分の"正しい"やり方へと是正させたい」が、説得に失敗している。言いかえれば、「自分のやり方の方が"正しい"ことを伝えたい」という"想い"に対し、「合理的、客観的な理由説明」という"知"が追いついていないといえるでしょう。

5:具体例の帰結 


 いずれの事例も「『自分の主張を通したい』『正しさで勝ちたい』という"想い"のみが先走り、それを裏づける"言葉(=知)"が追いついていない」点で、共通します。

 例えば、このような状態に対して、「想早知遅」「想兎知亀」という言葉を思いつき、命名してみました。

6: 「想早知遅」「想兎知亀」の問題点


 ところで、古来他人の説得には「ロゴス(論理)」「パトス(情熱)」「エートス(信用)」が必要とされてきました。

 「相手に伝えたいという"想い"に"、知"が追いついていない」ということは、そのうちの「ロゴス」を欠くということです。 

 残念ながら、そのような"想早知遅状態の想い"というのは、まず相手には伝わりません

(2022/2/20に投稿した記事をリメイク)

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