会社への道
少し前から復職に向けたリハビリで朝の出勤練習をしている。
毎朝会社まで行って、人事にタッチして帰るという簡単なお仕事だ。平常時は当たり前のことだが、休職者にはこれが意外と難しい。
電車に乗って最寄り駅まで行くのは問題なし。
休職中も割と規則正しい生活を送ってきた私にとって、早朝に起きて出勤すること自体は苦ではない。
問題は人との遭遇だ。
ゴールである会社休憩スペースへの道のりで私を知る誰かに会ってしまう恐れがある。運悪く遭遇してしまっても、できれば目を合わせたくはない。
目を合わせようものなら脂汗をかきながら「ゴ、ゴブサタシテオリマス…フヒヒ…」などと不審者のような挨拶をしてしまうことは目に見えている。緊張のあまりいらんことを言ってしまう可能性もある。
そんな事態を避けるために出勤中は一点を見つめたり目を瞑ったりして沈思黙考中、話しかけるなオーラを出すようにしている。
ところが、会社への道を歩いていると前にいた女性がアラ?と振り向いた。
話しかけるなオーラが足りなかったか。
声をかけてきたのは別部署だが、とあるプロジェクトで一緒だったBさんだ。
額から脂汗が吹き出しかけたが、彼女は慎重に私の様子を伺いながら話してくれたので、脂汗も引っ込み、近況など報告しながら何とか会社まで辿り着けた。
聞けば彼女も休職経験者らしい。当事者の心理をよく理解した気遣いだったので、なるほどと腑に落ちた。
正直に言うと、長い間休職していた私にわざわざ声をかけてくれたのはありがたかった。どう振る舞えば良いか分からないだけで話したくないわけではないのだ。
さらにありがたいことに、会社に着くと別部署の部長であるYさんからも声をかけられた。私に対しては厳しい物言いながらも最後まで付き合ってくれるナイスなお方だ。
前日、私を見かけていたようで、今日は声をかけようと私のいる休憩スペースまで来てくれたらしい。
休職中に社内で変わったことなどを教えてもらった。私自身は大して変わっていないのたが、組織や人員構成はだいぶ変わっていた。役員の顔ぶれまで変わっている。
私がいない間も会社は成長を続けているし、収益や事業など生み出すものが変化していれば組織も変化するのは当然か、などと考えながら相槌をうつ。
会社側の人事以外の人間と話したことにより少しだけ心が軽くなったのだが、声をかけてくれた2人は私に対しては好意的に(と勝手に思っている)接してくれていた面々であり、私も好意的に接していた。
しかし、社内には私を好まない者、皮肉めいたことを言ってくる者もいる。さすがに休職中、復職直後の私にそういったことはやらないと思うが、世の中には理解できないことが沢山ある。
私は休職前も後も弱者なのだ。油断は全くできない。
本日も出勤だ。
週の終わりは平穏に過ごしたいものである。
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