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グループVTuberのトラブルはなぜダメージが大きいのか

 キズナアイの登場を機に、数多のバーチャルYouTuberがデビューと引退を繰り返している昨今。このVTuber界隈では、重大なトラブルや事件がいくつも発生してきた。
 中でも衝撃が大きかったのは『ゲーム部プロジェクト』や『アイドル部(.LIVE)』といった、グループ型の活動を主とするVTuberのトラブルだ。前者は演者の総入れ替え、後者は内部のトラブルから一部キャラクターの脱退に至るといったことが発生し、それぞれのファンを大きく落胆させる結果となった。しかも、犯罪関与などといった明確な契約違反ではなく、内部の都合で起きた事態であったために、VTuber界隈の健全性や業務体制を疑う声も上がっている。

 確かに、現在VTuberを取り巻いている環境は良好と言い難い。まず収入の面では、YouTubeをはじめとする動画配信サービスの収益化機能に大きく依存している。企業からのプロモーション依頼やCM出演依頼、リアルイベントの開催も行ってはいるものの、その頻度は配信活動に比べればはるかに低い。
 この状況は、事務運営側から演者側に活動報酬を支払う形式でも同じである。しかしながら、自身の活動量や人気の獲得状況に左右される個人VTuberと違い、事務所がプロデュースするVTuberはブランド力や広報、活動支援の伝手探しの面で有利な立場にある。
 また、配信外の事務手続きから解放されることは、継続的かつ頻繁な配信作業が必須とされる界隈において、大きなアドバンテージとなる。

 個人VTuberでは難しいグループ型の活動が行いやすいのも、事務所プロデュースの魅力のひとつとなっている。スタジオの確保や交渉、スケジュール管理、機材の調整といった分野を運営スタッフが対応することで、アイドルグループのように足並みの揃った活動を行える。
 一時の交流であるコラボ配信とは違う、テーマの定まった継続的なVTuber活動が行える。そうした方面で事務所所属に魅力を覚えた演者もいたのではないかと思う。

 企業や事務所がプロデュースするVTuberは、一昨年から大きく数を増しつつあった。
「宣伝や親しみやすさの向上にVTuberの活用を」
そんな気運もあった中で起きたのが、演者の入れ替えやキャラクターの引退といったトラブルである。
 表層的には『担当声優の交代』『物語からのキャラクター退場』と大差ない事案であり、興味のない人達にとってはどうでもよいことだろう。しかし、巻き込まれたファンにとって、これらのトラブルは価値観を崩されるほどに重大な事件であり、『愛する者の死』と同等に捉える筋すらあった。
 なぜ、それほどに深刻なものとしてファンに受け取られたのだろうか。そのヒントとなるのは『VTuberの身近さ』である。

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