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にじさんじ2020年組レビュー

 8月に世怜音女学院の5人がデビューを果たし、はや1ヶ月が経過した。彼女達を含め、2020年に活動を開始したにじさんじライバーは13人となり、各々が得意とする方面での配信や動画公開、企画への参加などを行っている状況である。
 9月に入りイベント等が一段落したということで、今回は2020年デビューのライバー達について簡単にレビューしていこう。

メイフ(2020年1月期デビュー)

ジャンル・性格ともに個性的でバランスの取れた3人組

 バーチャルクリエイターを目指しているメリッサ・キンレンカ、元石油王の青年イブラヒム、帝国の女騎士フレン・E・ルスタリオという3人からなる『メイフ』。デビュー当初から仲の良さを感じさせる同期と、それぞれに路線が明確な活動は、2020年組でトップの躍進ぶりを見せる要因となっている。
 彼らの一番の特長は、やりたいことや交友関係が異なることで生まれるジャンルの豊かさだ。メリッサは音楽を中心にアーティストとしてのセンスをいかんなく発揮し、フレンは持ち前の明るさや感情の豊かさを前面に出したタレント路線、イブラヒムはゲーマーとしての駆け引きや運勝負の熱気を重んじるストリーマー路線で配信を行っている。また、その活動のジャンルを通して、他のにじさんじライバー達との交友を広げているのも特徴的と言えるだろう。
 3人とも性格は独特で、個別の配信を追っていると「本当に同期で上手く噛み合うんだろうか」と思ってしまうほど差異がある。それでいながら、一堂に会すると遠慮なく物を言い、お互いに楽しくつつき合うような関係性を見せてくる。距離感をわかっているからこその付き合いであり、安心して配信を見ていられる一団である。

『にじさんじARK』で大躍進したグループ

 彼らがデビューした2020年の初頭は、武漢での新型コロナウイルスの流行が取り沙汰され始めた時期である。現在ほどに外出やイベントを警戒視する風潮もなく、にじさんじもライブイベントの『にじさんじ JAPAN TOUR 2020 Shout in the Rainbow!』を大都市で開催するなど、リアル方面での盛り上がりを高めていた。
 そうした中で始まった配信活動は軒並み落ち着いた状況にあったし、急激な伸びを見せる兆候もなかった。徐々にコンテンツとファンを増やし、支持を固めていく流れが来るのだろうという雰囲気。それを打ち破ったのは、何気なく始まったARKでの同期コラボ配信だった。
 特に意識もせず初期リスポーン地点付近を根城にしたことで、先輩達との水資源を巡った緊張関係が幕を開け、サーバーに参加したライバー達を多く巻き込んだ大戦争へと発展していく。そんなダイナミックな出来事に当事者として深く関わったことで、のめり込んでいたイブラヒムだけでなく、ゲームに慣れないながらも自分なりの楽しみ方をするメリッサやフレンも内外から多くの注目を浴びることとなった。
 このARK配信では、先輩達を相手にした関係の開拓、配信者としての自分らしさの発見といったものが大きく進んでいる。特に、SEEDs出身のアラサー達が多くいたJaCK陣営と関わってからは、それまでより自身の趣味に対して積極的な触れ方をするようになったのではないかと思う。好きなものを臆面なく語り楽しむ先輩との交友が以降の活動の広がりを作ったとするなら、ARKでの経験は大きな転換点だったと言えるだろう。

VΔLZ(2020年4月期デビュー)

キャラ設定が強いがゆえの苦悩

 『神』や『妖』といった超常のものが跋扈する異世界の国『桜魔皇国』からやってきた3人組という設定のもと、音楽に造詣のあるメンバーを揃えたのが4月にデビューした『VΔLZ(ヴァルツ)』だ。『神』に仕える官吏の弦月藤士郎と、『魔』を討伐する祓魔師の長尾景、そして『魔』の生態を研究している甲斐田晴。にじさんじを介して異世界から配信しているという位置付けで、活動を行っているのが彼らである。
 デビュー当初から世界観が大きく定まっていること、公式に同郷の出身者という設定が与えられたことは、それまでのにじさんじと比較してかなり特徴的と言える。一方で、この背景設定は扱いづらさを孕んだものとして立ちふさがりがちなため、当事者達も扱いに苦慮している節がある。
 特に、ビジュアルや台詞から想起される印象と、実際の演者達の印象に乖離がある点は、VΔLZのコンテンツとしてのやりにくさを象徴しているように思う。普段のとぼけたり少年心を全力で発揮したりしている彼らと、格好良くキザに立ち回る設定上の彼らとのギャップは実に著しいものである。勿論そのギャップが良いという層もいるだろうが、本来意図していた形からは大きく外れてしまっている。
 最近では、ロールを捨てて自分らしさを取る方に傾いてきているので、公式の設定もどこかで曖昧なものに変わっていく可能性がある。ただ、そうした変遷を辿りながら人気や実績を積み上げていくケースは珍しくないので、悪いものではないだろう。彼ららしいVΔLZを描いていく過程を楽しむという意味で、これから期待の持てるグループと言える。

先輩ライバーとのシナジーが高い

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