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にじさんじには『人狼』がよく馴染む

 『汝は人狼なりや?』というテーブルトークゲームをご存じだろうか。簡単に説明すると、人狼と呼ばれる鬼役を推理し、全員が倒されるよりも先に鬼を見つけ出す遊びである。
 このゲームでは鬼以外にも役割が宛がわれており、それぞれできる行動が決まっている。相手が鬼かどうかを知ったり、鬼の行動を阻害することができるため、駆け引きにおいては重要となる要素である。しかし、自身以外の役割はわからないため、必ずしも出てきた情報を信用できない。そのため、誰の言葉が正しいのかという点から疑いをかけていくことになる。これが、『汝は人狼なりや?』というゲームを実に面白いコンテンツへと仕立て上げているのである。

 このゲームから派生した『人狼コンテンツ』とでも言うべき遊びは、アナログ・デジタルを問わずいくつも存在している。割り当てを簡易にし鬼とその他という2役に絞ったルール、アクション要素の追加、ワードウルフのような特殊な推理要素など、その変化はバラエティに富んでいる。
 また、初心者でも参加しやすく場を盛り上げやすいことから、最近では実況配信者を中心に遊びの輪が広がっている。バーチャルYouTuberもご多分に漏れず、箱の内外で人狼コンテンツを遊ぶ企画が行われている。僕はにじさんじを中心に視聴しているので、その分視点もそちらに偏るのだが、こうした人狼コンテンツの面白さは格別なものだと感じている。
 ただ、それは単なる流行りであるが故の面白さではなく、にじさんじという箱が持つ個性と人狼コンテンツとの親和性から来る面白さである。駆け引きの要素も、それ以外の要素においても、彼ららしさがゲームの中で強く引き出される。それが実に楽しく素晴らしいのである。
 今回は、にじさんじの人狼コンテンツを数点紹介するとともに、その面白さについて語っていこう。

1.ハプニングこそが本番の『Project Winter』

 アクション要素を取り入れた人狼コンテンツとして代表格の一つとなっているのが、『Project Winter』である。このゲームは、人里離れた雪山を舞台に、人殺しの『トレイター』と遭難者である『サバイバー』に分かれて生存を争う内容となっている。
 推理だけではなく、脱出のためにアイテム収集や仕掛けの突破が必要となることから、ゲームとしての難易度は高い。自然の厳しさに曝されるのはトレイターも同様であり、山中に潜んでサバイバーを狩ろうとするだけでは、寒さや野生動物の襲撃で簡単に命を落としてしまう。いかにサバイバーらしく振舞い、陰で上手く消していくかが鬼にとって重要となる。

 にじさんじのライバー達でこのゲームを遊ぶ場合、大抵は予想を裏切るようなアクシデントに見舞われる。トレイターが山中で迷子になる、狼や熊に襲われて全滅するなど、戦いが成り立っているのかわからないような展開に陥ることも少なくない。
 しかし、このゲームは鬼がいなくなっても終了しない。そのため、既に勝利が確定したにもかかわらず、疑心暗鬼に陥ったサバイバーが不思議な駆け引きを繰り広げたりするのである。サバイバー達が自然環境に翻弄され、なすすべもなく全滅する様は何とも言えない趣がある。
 シュールなゲーム展開と、普段の言動に絡めたメタ読み交じりの掛け合いや問答は、見ていてちっとも飽きないし腹を抱えるほど面白い。「まさかそんなことにはならないだろう」と思いながらも、目の前の珍事や惨事に爆笑すること請け合いである。

2.普段からマイクラを遊んでいるからこそ面白い『ワイテルズ マイクラ人狼RPG』

 ワイテルズが企画・運営している『マイクラ人狼RPG』は、サンドボックスゲームの『Minecraft』をベースにした人狼コンテンツである。
 村人・人狼・狂人・吸血鬼という簡易化された役割構成となっており、比較的ルールは理解しやすい。また、鬼役である人狼や狂人、吸血鬼も含めた参加者全員が相手の役職を明らかにできる『占い』を行える点が大きな特徴と言える。
 一般的な人狼において『占い』を使えるのは特定の役職だけであり、なりすまされることはあっても状況や立場が限定できる。しかし、この人狼RPGにおいては鬼役の黒い側からも堂々と占うことができるため、占い対象を重複させることでしか信憑性を得ることができない。誰を占うのかは勿論のこと、占った人物が黒同士結び付いているのか、それとも潔白な上での占いなのか見極めることも重要になってくるのである。
 さらに、Minecraftにおける地形移動、アイテム購入のためのザコ敵狩りといった要素でアクションの要素が入っている。『マイクラ慣れ』している人が物資調達や終盤の戦闘を制することから、にじ鯖という専用マルチサーバーを持つにじさんじのライバーには格好のコンテンツと言えるだろう。

 先日大会イベントが行われた際には、練度の高いワイテルズの面々が最大の脅威となりながらも、要所要所でライバーの立ち回りの巧みさや戦術思考が発揮されており、実に面白いゲームとなっていた。Minecraft用のスキンを使えるという点でもキャラクターの外見を反映させやすく、誰がどこで行動しているのかがすぐわかるため、初心者でも視聴しやすい。
 人狼コンテンツとしてだけでなく、アクションゲームの企画としてもとても親しみやすいと感じる内容である。

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