Un métro de minuit
モントリオールはマイナス五度。
時刻は夜十時を回ったところ。
家路へ急ぐ人々の群れに、ひらひらと雪が舞いおちる。
自分の不甲斐なさと疲れで、もやもやしながら眺める何もない車窓。
あなたの最寄駅まであと少しのところで、急にメトロが止まった。
別の列車でドアのトラブルがあった、とフランス語のアナウンス。
車両に閉じ込められた人々の、疲れ切ったため息と重い空気。
あとどのくらいこの状態が続けば、
あなたの家に立ち寄る口実になるのかな。
うつむいたまま、またあなたの寝顔を思い出した。
そうだ、あと一時間で、あなたは眠りについてしまう。
迷惑なのはわかってる、でも、あなたに会いたい。
二十分閉じ込められれば、あなたは同情してくれる?
三十分続けば、暖かいブランケットで私を包んでくれる?
五十分も経てば、あなたはすでに夢の中。私の訪問には気づかない?
あと一分一秒でも長くこの状態が続けば、あなたに会う言い訳になる。
お願い、このままでいさせて・・・
三分後、運転再開のアナウンスもなく
何事もなかったかのようにメトロは動き出す。
涙ぐんだ目で遠くを見つめながら
私はあなたの街を通過した。
おいしい味噌汁を飲みにいきます。